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23. 北の大地 2、

 林田未結は、神山一輝から聞いた**「戦わずして勝つ方法」**に関する策を、庄山大尉と林中尉に伝えた。二人はその発想に「なるほど」と頷きながらも、即座に進言すべきだと判断。庄山大尉は直属の上官である渡辺中佐に、渡辺中佐はさらに国家情報局のトップである野村中将に進言した。


 この策は最終的に、国家安全保障会議で北部方面隊本田大将が提案した露西亜ロシア軍の補給線寸断策と組み合わせた複合的な作戦として採用された。


 そして今、林田、中村、木下、井上の強化人間四名は、転送装置を使って北海道の北部方面隊へと向かった。彼らの背中には、黒い金属製の箱がそれぞれ背負われている。縦横それぞれ四十センチ、高さ七十センチの長方形で、これが大人数を転送できる装置だ。一台あたりの重さは七十キログラム。常人であれば、これを背負っての作戦行動は極めて困難だが、彼らは強化人間だからこそ実行可能な作戦なのであった。


 予定通りの地点に転送装置で移動した四人は、日本軍の野営地近くに現れた。空には細い三日月が浮かび、わずかな光が大地に注がれている。林田たち四人は、出迎えるために待機していた日本軍の五人を認め、そちらへ向かって歩み寄った。


「私は、今回の作戦を指揮する、北部方面隊第一師団月光軍出身の吉川中尉だ。」

  吉川中尉が簡潔に自己紹介すると、林田たち四名は、すぐさま一糸乱れぬ動きで敬礼した。吉川中尉が答礼を返すと、林田は凛とした声で続けた。

「林田伍長以下四名、国家安全保障会議の決定により特別任務で着任しました。」 (林田は北海道の北部方面隊に来る直前に、伍長の階級を拝命したばかりだった。)


「詳しい話は野営地で話す。ついてきなさい。」

 吉川中尉を先頭に、一行は歩き始めた。


 出迎えた吉川中尉以下五名は、全員が月光軍出身だった。月光族は夜目が利くため、三日月でわずかな光しか差していない暗闇の中でも、何の問題もない。昼間のごとく歩みを進めることができる。その後を、林田たち強化人間が続く。もちろん林田たち強化人間も夜目が利くため、遅れることもなく、彼らの後に続いた。


 野営地の周囲は、月光軍出身の者たちが厳重に巡回していた。露西亜軍はこれまで、夜間の戦闘を仕掛けてきたことは一度もない。夜間は敵と味方の判別がし辛く、無用な危険を冒さないのだろう。であれば、まさにこちらから夜襲を仕掛ける絶好の機会となる。


 作戦は、月光軍出身者十八名と林田たち強化人間四名の総員二十二名で行われる。吉川中尉がこの二十二名の指揮を執ることになっていた。作戦決行は、明後日の新月に行う予定だ。それまで、昼間の戦闘は、出来る限り膠着状態で乗り切るべく、日本軍の上層部は指揮を執っていた。


 林田たちが北部方面隊に合流した翌日、吉川中尉は翌々日に迫った作戦を前に、二十二名全員を集めて作戦の重要性を改めて伝え、その後、下士官のみを残して具体的な打ち合わせを行った。


 打ち合わせでは、月光軍出身者たちが露西亜軍の補給線の分断を担当するため、実行部隊は五名ずつ三班に分かれることになった。残りの三名は敵兵の動きを把握する斥候役を務める。そして、強化人間である林田たち四名が、大人数用転送装置を予定の位置に設置後、林田が作動指示を出すことが確認された。それは、かつてアークの司令官だった林田が作動タイミングについて良く分かっているからであった。


 





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