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22.英吉利軍と日本國の戦略

 英吉利イギリス軍は、未だに日本國の中枢機関にいた人々がどうやって忽然と消失したのか、その真相を掴めずにいた。日本國には魔法使いが存在しないものの、神術という、魔法に酷似した特別な力があるとの情報は既に得ていた。その神術の中に、彼らが用いる転移魔法に匹敵するような能力があったのだろうか?しかし、今までそういった能力に関する具体的な情報は一切入っていない。


 四方八方に散って情報収集を行っている諜報員たちからは、断片的ではあるが、日本國中枢機関の所在について少しずつ情報が入り始めていた。それらの内容は、首都移転計画があったとか、首都機能のバックアップ計画があるとか、まだ計画初期の段階の不確定なものばかりだった。しかし、そういった計画が本当に存在したのなら、どこかに国家中枢機関のバックアップ地が存在していてもおかしくはない。


 北の北海道では、露西亜ロシア軍が最近は進軍が鈍くなっているものの、着々と占領地を広げているという報告が入っていた。さらに、露西亜軍の増援部隊もまもなく出発するとの情報もあり、英吉利軍としても、このままぐずぐずしてはいられない状況だった。しかし、ここで強引に東京への上陸作戦を行うには、リスクが大き過ぎる。自軍の死傷者が多数出ることは避けられないだろう。それに見合った戦果が期待できないと判断された。


「我が国の諜報活動は世界一だと常々思っている。既に情報は入り始めている。もう少しここで待機すべきだ。」

 ジョーンズ大将は、幹部との緊密な会議でそう結論付け、現在の海上に待機する戦略を維持することを決定した。


 場所は変わり、長野県山中地下にある日本國国家安全保障会議では、久保首相以下、主要な閣僚や軍のトップメンバーが連日のように会議を開いていた。二正面からの侵攻を受けている現状を鑑みれば、当然のことであった。


 会議に先立ち、まずは最新の状況報告がなされた。


 最初の報告は、大人数を転送可能な装置に関する進捗だ。かつて林田たちが使用していた次元転送装置が、一度に四キロメートル四方という広大な範囲を次元転送できる能力を持っていたため、それを元に新たな転送装置の作成が試みられたという。試作段階でまず一台あたり重量が七十キログラムとなってしまい、これでは持ち運びが困難なため、これから更なる軽量化を施す必要があるとのことだった。しかし、とりあえず一台七十キログラムの装置を四台組み合わせることで、四キロメートル四方を転送できる装置が、既に一組完成したという報告だった。


 会議には、北海道の最前線から、北部方面隊トップの本田大将が転送装置を使って移動し、特別に出席していた。彼は、先日の方面隊会議で鈴木中将が提案した、露西亜ロシア軍の補給線の寸断についてを、重要な議題として提起した。


 また、別の議題として、情報局から、今回完成したばかりの四キロメートル四方を転送できる装置を使った、大胆な作戦が提案された。


 長時間にわたる討議の結果、本田大将が持ち込んだ補給線寸断の策と、情報局が提案した新たな転送装置を活用した作戦を組み合わせた、複合的な作戦を実施することとした。この作戦がうまくいけば、最小限の人員で敵兵を大幅に減らすことができ、状況を大きく覆す大逆転も期待できると、彼らは確信した。





 

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