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14.首都侵攻 5、

 英吉利イギリス軍の精鋭部隊は、日本國の首都に侵攻し、国家中枢機関を掌握しようと試みたが、当初の計画通りにはうまくいかなかった。主上が住まうという社や皇居には火球を落としたものの、強固な結界に阻まれ、一切の損害を与えることができなかった。商店街への攻撃はあくまで陽動作戦であり、そちらにはあまり重きを置いていなかった。


 彼らの真の狙いは、議事堂や首相官邸、その他の国家機関が入る建物を攻撃し、中にいた要人たちを捕らえて人質とすることで、今後の交渉を優位に進めることだった。しかし、予想外のわずかな抵抗に遭い、侵攻はわずかに遅れが生じた。その後、建物内に敵を追い詰めたものの、地下に広がる大広間で、彼らは忽然と姿を消してしまったのだ。


 精鋭部隊を率いるトーマス少将は、その地下の大広間へと降りてきていた。隣に控える風属性魔法の使い手である魔導士に、苛立ちを隠せない声で指示を出したところだった。

「確認してくれ。」


 魔導士は、少将の意図を正確に汲み取り、答えた。

「承知いたしました。地下ゆえに窓もなく気密性が高い。もし風の通り道があれば、それは通気口か、あるいは隠された抜け道である可能性が高いでしょう。風に色をつけ、視覚的にわかりやすくいたします。」

 そう言うと、彼は両手で長い杖を構え、ゆっくりと回し始めた。


 魔導士を中心に、淡い緑色の風が静かに、しかし確実に四方八方へと吹き始め、広大な大広間全体に行き渡っていく。その風がわずかな隙間を探して流れ出ていくのを、兵士たちが目を凝らして調べると、確認できたのは、通常の通気口のみだった。隠された抜け道は、どこにも見当たらない。


 その間にも、部下からの報告がトーマス少将に次々と入っていた。内容は、この建物内には、今いる場所と同じような地下大広間が他にも複数存在し、この場所と合わせると計八箇所にも及ぶというものだった。


 トーマス少将は、残りの七箇所の地下大広間も、同じように抜け道がないか隈なく調べさせた。しかし、結果は同じだった。どこからも外へ抜け出せるような隠し通路は、一切見つからなかった。


 日本國侵攻前の情報では、主上が住まう社や皇居には結界が張ってあるとされていたが、議事堂や首相官邸、国家機関の建物には神秘的な波動は感知されておらず、侵攻は大きな抵抗もなく進められるはずだった。


 侵攻のその日、国会はまさに開催されており、首相も出席する重要な日だった。国家機関も休日ではないため、多くの職員が勤務しているはずだった。ところが、建物内に侵攻してみると、予想していたほど多くの人間がいなかった。残っていた僅かな要人たちと、警備兵、そして消防隊を地下へと追い詰めた。しかし、地下の大広間に逃げ込まれたかと思えば、そこで彼らは消失していたのだ。


 トーマス少将は、この国にも転移魔法を使える者がいるのか、と疑念を抱いた。しかし、侵攻前の情報部からの徹底したレクチャーでは、この国には「魔法」という概念は存在しない、と明確に伝えられていた。だが、神術という魔法に似た特殊な能力があるとも聞いている。情報部が掴んでいないだけで、もしかしたら神術にも空間を転移させるような能力があるのではないか……。そんな思いを巡らせていると、スミス少佐が少将に近づいてきて、きびきびと敬礼した。


「報告します。地下大広間すべてを調べたところ、抜け道は発見されませんでした。しかし、いずれの大広間も四隅に何か物を置いていた形跡がありました。」


 トーマス少将は、スミス少佐に案内され、その形跡を見た。床には、確かに何かが置かれていたようなわずかな窪みや、埃の跡のようなものがあった。だが、それが一体何を意味するのか、何が置いてあったのか、彼の頭では全く見当がつかず、謎は深まるばかりだった。






 

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