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13.首都侵攻 4、

 英吉利イギリス軍の精鋭部隊は、日本國の中枢である国会議事堂や首相官邸などが建ち並ぶ複合施設内へと侵攻していった。先んじて突入した部隊は、敵兵を追い詰め、銃撃を浴びせた。しかし、その銃弾は、堅牢な鉄扉によって阻まれた。業を煮やした魔導士が、強力な雷属性魔法の雷撃を放つ。轟音と共に放たれた電撃は、鉄扉で防御している敵兵を感電させ、意識を刈り取った。電撃の余韻が残る中、彼らは鉄扉へと突撃した。


 部隊の兵士たちは、鉄扉を引いて開けようと試みるが、びくともしない。押してもだめだ。上下左右に揺さぶっても、全く動かない。何らかの物理的な手段で、堅固にロックされているようだった。もしかしたら、人間が鉄扉を直接、あるいは器具を使って動かないようにしている可能性もある。そう考えた雷属性魔法が使える魔導士が、再び雷撃を放った。


 一瞬、耳をつんざくような大音量の雷鳴が響き渡り、重い鉄扉がガタッと震える。しかし、それきり、静寂が訪れた。鉄扉の向こう側からは、一切の物音も聞こえない。雷撃の効果があったのか、それとも無効だったのか。兵士たちは鉄扉をもう一度、押したり引いたり、上下左右に動かしたりしたが、やはり開かない。


「それでは……」 部隊を率いる指揮官の指示で、今度は火属性魔法の使い手が前に出た。高温の火属性魔法を操る魔導士が、鉄扉を溶かして突破する構えを取る。その時だった。まさに火属性魔法を放とうとしていた魔導士の目の前で、これまで頑として開かなかった鉄扉が、まるで魔法にかかったように、取っ手を回して引くと、あっけなく開いたのだ。


 鉄扉は手前に大きく開いた。不意の展開に、部隊は一旦後退して警戒態勢を取る。鉄扉の向こうには薄暗い通路が続いており、その先には地下へと続く階段が見えた。


 通路を警戒しながら、兵士たちはゆっくりと足を踏み入れた。通路の先は急な下り階段で、階段の下は視界が利かず、暗闇に包まれている。今度は、光属性魔法が使える魔導士が前に出た。彼は神聖な輝きを放つ魔法を唱え、下り階段の天井に一定の間隔で光源を発生させ、足元から奥まで、暗がりから解放していった。


 階段を下るには、三千名もの兵士全員で行くわけにはいかない。階段は横幅が二メートル弱ほどで、せいぜい二人が横に並んで降りていける程度しかない。もし、この狭い空間で奇襲を受ければ、大損害は必至だ。


(日本國の中枢機関が入る建物に侵入したが、あまり大きな抵抗を受けていない……。もしかしたら、この階段に部隊を誘い込み、後方から猛攻撃を仕掛けるつもりかもしれない。)英吉利軍の指揮官は、警戒を怠らなかった。そう考えた彼らは、闇雲に突入せず、まずは階段を降りる部隊を二十名選抜し、偵察させることにした。二十名の偵察部隊を率いるのは、デービス少尉だ。彼は入隊後、情報部門に在籍した経験もあり、優れた観察眼を持つ。戦闘においては防御力が高く、常に沈着冷静で、無駄な戦闘は極力避ける戦術家だった。


 デービス少尉率いる偵察部隊が、慎重に階段を下りていく。十一段降りたところで踊り場があり、そこを曲がるとさらに階段が続いていた。二十名の中にいる光属性魔法が使える魔導士が、再び光源を発生させ、階段の先の方も明るく照らされた。


 踊り場からさらに十段降りると、その先に堅牢な扉があった。デービス少尉は取っ手を回し、扉をゆっくりと押す。警戒しながら、わずかに隙間を開けるように押すと、重い音を立てて扉が開いた。


 扉を開いた先は、想像以上に広い大広間だった。光属性魔法の光源が灯ると、何百人もの人間を収容できそうだということが分かったが、広々とした空間に、誰一人としていない。ここに逃げ込んだ日本人は、一体どこに消えたのか? デービス少尉は、部下とともに大広間の壁や床を徹底的に調べ、隠し扉や隠し通路がないかを確認した。しかし、何も見つからない。異常なし。デービス少尉は、その結果を報告するため、降りてきた階段を静かに上っていった。


 


 



 

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