飛翔
素人がはじめて執筆した作品です。至らない点が多くございますが、ご了承くださいませ。では、物語の世界へどうぞ。
ラジオ:
「おはようございます。○月×日土曜日。朝6時です。昨日に続き本日も比較的暖かい日となるでしょう。お出かけの際は」、、、ピッ。
翠:
「んーーー、ねむた、はぁ、暑い。」
気分は憂鬱だ。しかし、容赦なくカーテンの隙間から差し込む朝日が僕を起こしつける。昨日は寝付けが悪く、夜更かしをした。いつもならお昼過ぎまでは余裕で寝過ごす僕だが、今日はそういう訳にはいかない。仲が良かった友人の葬式だ。友人とは血の繋がった関係ではないが、家族だった。
友人は昨年から原因不明の病気にかかっていた。いつ亡くなってもおかしくない状況を彼女は幾数回乗り越えてきたが一昨日、そうはいかなかった。わかっていた。永く続かないことくらい。
彼女の名前は秋。僕が幼い頃から同じ時を過ごした友人だ。彼女は少し変わっていて、何故かいつも僕を1と呼ぶ。
秋:
「1!少し歩こうよ!」
翠:
「そうだね。今日はどこに行こうか。」
彼女は散歩が好きだった。僕達は学校帰りによく寄り道をした。校舎の隙間から差し込む夕日が彼女の癖っ毛で橙色の髪の毛を照らす。僕達は散歩中にたわいのない会話をし、少しの沈黙を挟みながらまた会話をする。彼女は少し早歩きになりながら、嬉しそうに僕についてくる。
秋:
「1!お腹減ったーーー、」
翠:
「そうだね。そろそろ帰ろうか。」
僕達は同じ家に帰り、ご飯を食べる。彼女は苦手な食べ物が多く、いつも同じご飯を食べていた。しかし彼女は美味しそうにご飯を食べ、よく寝た。こんな日が永く続けばいいと思っていた。いや、続くと思っていた。
数年が経ち、彼女が体調を崩した。丸みを帯びていた体はだんだん痩せこけていき、骨張った体つきに変わってしまった。
先生:
「秋さんの体に悪性の腫瘍が見つかりました。しかし、原因が分からないため処置を施すことが出来ません。申し訳ございません。」
深々と先生が頭を下げる。先生はなにも悪くない。仕方がない。先生でも分からないならもう仕方がないんだ。医療知識が皆無の僕が彼女に出来ることは限られていた。僕は彼女に付きっきりになった。食事を口元まで運び、体を拭き、骨張った体を撫で続けた。
少し肌寒さが残った春終。
秋:
「、、、。」
彼女は僕を呼ばなくなった。いや、呼べなくなった。もう僕を呼ぶ体力がないのだ。彼女は僕の目をじっと見つめた。僕は目頭を熱くしながら彼女の頭をそっと撫でた。彼女は少し微笑みながらそっと目を瞑った。
女性:
「この度は、ご愁傷さまでございます。」
スタッフの方が優しい言葉をかけてくださりながら、僕は葬式の手続きを行った。彼女は、何を思い目を瞑っているのだろうか。幸せだったのだろうか。解答の無い問題が頭を過ぎる。僕は彼女と最後の対面を済まし、火葬を待った。
女性:
「お待たせ致しました。これより納骨の方、ご案内させていただきます。」
翠:
「さぁ、帰ろうか。」
僕は心の中で彼女に語りかけた。
家に着き、ソファーに重い腰を下ろした。ふと、天井を見上げる。今頃彼女は走り回っているのだろうか。右手で握りしめた赤いリードに重い瞼を移しながら僕は少し目を瞑った。
「わん!」
あぁ、どこかで秋が僕を呼んでいる。
はじめまして!翠と申します!この度はお読みいただきありがとうございます。
愛犬と私をテーマにした物語を書かせていただきました。今日あるものが明日あるとは限らない。だから、今日を大切に過ごそう。と見つめ直すことができました。どこか少しでも共感して頂き、日々の大切さを思い出していただけると幸いです。
「飛翔」
羽ばたいてそれを飛んでいくこと。
小説家として第一歩。彼女が空を飛んだように。
二つの意味を表したタイトルとなっています。
追伸
はじめて小説を書いたのですが、私自身の記憶を基に書いた部分が多く、小説とは言い難い作品となっておりますがご了承ください。
アドバイスなどをいただけると助かります!!