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ペットボトルのキャップ、異世界で神の石と呼ばれる  作者: 龍龍龍(ろうたつりゅう)
第ニ章
32/34

第32話

教会の建物に入り、広い議場に招き入れられる。高い丸天井からぶら下がる豪奢なシャンデリアが、成り行きを監視しているようにも見えた。床は椀状であり、中央の宣教台を八列の椅子が円形に囲んでいる。

ガイノスは俺たちに最前列の席を勧めてから、目の前のシヴァドに言った。

「成果を詳しく聞かせてくれ」

「はい。神話の新しい節は見つかりませんでしたが、魔法陣に関する研究は進展するかもしれません」

言葉を区切ろうとしたシヴァドに、ガイノスは話を続けるよう促した。

「魔法陣それ自体は様々な素材で描かれますが、素材や魔法陣の形状によって効果は異なります。しかし、どういう理由で効果が発動するかは分かってきませんでした。経験則から、魔法陣の効果を決めるのは素材と大きさと形状であるというのは分かっていました。『この世のものは魔法粒子で出来ており、魔法粒子は形によって貯えられる魔力の容量が変わる』という前提に基づくと、素材で魔力量が変わることには納得ができます。おまけに大きければ、場の状態を調節できる要素をより多く魔法陣に詰め込むことができます」

「形状で場の状態が決まるのはどのような仕組みによるものだ?」

「例えば真円の魔法陣の魔力は中心に均等に集まりますが、正方形の魔法陣の魔力は均等には集まりません。魔法陣の内側にどのように魔力が集まるかということと結果は関係している、という先行研究もあります。魔力の集まり方が場の状態を決め、それが効果に繋がっていると思われます」

厳格な若い司祭は一通り聞き終わり、口を開いた。

「あの巨大魔法陣が具体的にどのような効果をもたらすかも分かるかもしれないということか」

「はい。まとめるのはこの後になりそうですが、魔族を封印した洞窟が近いことと無関係ではないと思います」

「よく分かった」

ステンドグラスを通る鮮やかな光がゆっくりと弱くなってゆく。ガイノスはトオガの方を向いた。

「お前、ゲルヒトの弟子か?」

「ああ」

意外そうな面持ちで、トオガは気の抜けた返事をした。

「私は今、優秀な研究者を一人でも多く味方に加えたい。ゲルヒトの弟子であればつてもあるだろうと期待して聞くが、他に誰か優秀な研究者を知らないか」

椅子にもたれかかっていた上体を起こして、トオガは真っ直ぐにガイノスを見た。

「なぜ研究者を増やしたいと思ってるんだ?」

「現在の教育の質に問題があり、その改善には専門的な知識を持った人間が必要だからだ」

「俺はお前の個人的な理由について質問したつもりだったんだがな」

そう言って不敵な質問者はにいっと笑みを浮かべた。トオガの目はまったく笑っていない。ガイノスは内心の不快感が僅かに滲み出たように目を細めた。

「結論から言えば、そんなものはない。他派の信徒たちと同じように、俺にも宗教への強い帰属意識がある。無理やり個人的な理由を捻りだすとしたら、俺のためにヨース派が必要であり、ヨース派が生き続けるには具体的な信頼と将来への投資が必要になるから、というのが適切だろう。お前が納得するかしないかはともかくとして、俺は公のために何をするのが最適かを考えて動いている」

「いや、納得したよ。うっすらとだがお前の背景が見えてきた気持ちになれた」

「ならいい」

部屋の入り口から足音が聞こえて、シスターがケラーとセモンを連れてきた。

「皆さん、迎えの馬車が来ました」

俺たちは俺たちが思っていたよりも長く話していたらしい。というか、俺たちは馬車を頼んだ覚えがない。シスターたちの後ろで、俺たちを送ってきた御者がぺこりと一礼する。

「急で申し訳ありません。皆さんをザーヒル様がお呼びです」

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