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ペットボトルのキャップ、異世界で神の石と呼ばれる  作者: 龍龍龍(ろうたつりゅう)
第ニ章
23/34

第23話

夜になって、俺たちはコテージに入った。みんなが再び安住の地を得て安心している中、クロナは膝を抱えてぼうっと遠くを見ていた。

「クロナ?」

アザハに呼びかけられてはっと現実に引き戻される。

「元気がないみたいだけど、どうしたの?」

「あ…」

頭に浮かんだ言葉を口にしようとして口ごもって飲み込んだ。ゆっくりでいいよ、と言いながら、アザハはクロナの隣に座る。

「あの男の人が、わたしのお父さんとお母さんの話をしたとき、本気で許せないって思った。けど、けど…あの人にとって当たり前のことだったんだって、シヴァドが止めてくれて気づいた。止めてくれなかったら、なんにも知らないであの人のことを傷つけたかもって」

クロナは顔を自分の膝に埋めた。

「みんなに迷惑かけちゃダメなのに、決めつけちゃダメだって分かってたはずなのに、わたし…」

声はくぐもって沈みはじめた。アザハは小さな背中をさすってクロナを見つめている。

「大丈夫だよ、クロナ」

名前を呼ばれて、クロナは顔をあげた。アザハと視線が合う。

「気持ちが抑えられなくなることは私にだってあるよ。それで周りが見えなくなることももちろんある。だけどね、そんなときは私たちが止めるから。頼ってくれていいんだよ」

「いいの?」

アザハは頷いた。

「いいんだよ。でも私たちも、時々自分が見えなくなるかもしれないから、その時はクロナにも助けてほしい」

頼まれてようやく、クロナは柔らかく微笑んで頷いた。

「もう寝てしまおうか。明日はきっと早いだろうからね」

寝る準備を終えたシヴァドが二人に歩み寄る。トオガはもう既に自分のベッドの中でいびきをかいていた。

「キュプロもおやすみ」

「おう」

俺はシヴァドの枕の中に突っ込まれた。重さを感じてすぐ、シヴァドの安らかな寝息が聞こえる。

俺はこの夜に試してみたいことがあった。

船の中でダイオウイカに襲われる直前、俺は遥か遠方にいるはずのマルべと帝国の軍人エンタルの会話を聞いたことがある。あの時俺は、エンタルが持っていた神の石を通じて会話を聞いていた。帝国との距離がどれくらいのものなのかは分からないが、相応に遠い距離だったはずだ。そして恐らくこっちの大陸にも、神の石は存在する。つまり神の石さえあればその周りの様子を理解できるかもしれない。意識を確かめる。集中するよりもむしろ、ぼうっとしたほうが…。

「前々から、疑問に思っていたのですが」

シスタールイズの声だ。ろうそくが数本灯っているだけの暗い部屋で、椅子に座っている。向かい合っているのはザーヒルだった。

「何かね」

「なぜこのような貴重な書物を私に?」

俺はどうやらザーヒルのシャツの胸ポケットに入っているらしかった。ザーヒルは少し言葉を選んでから口を開く。

「君も知っていると思うが、教会は内外に問題を抱えている。特に君にとって重要なのは、教会内部だ。知っての通り、教会には主に三つの宗派が存在する。全体の半分は伝統的なヨース派、三分の一がケルニエ派、その他はヤルト派だ。中でもケルニエ派はいささか手段が過激なことで知られ、錬金術師とも協力している。これらの書物と私の過去を通して、君には教会で生き延びる術を身につけてほしいんだ」

ザーヒルを見て、ルイスの唇には力が入った。

「大司教様」

ザーヒルは自然と俯いていた顔をあげ、自分をまっすぐに見つめる若いシスターを見た。

「あなたは私に多くのことを教えてくださいました。覚悟もなく神を信じたりなどしません。それぞれの宗派は、私がつなぎ止めてみせます」

声は良く通り、厳粛さを帯びていた。ザーヒルは微笑んだ。

「神託の時は近い。きっと君の力は必要になってくるだろう」

それから少し会話した後、ザーヒルは席を立って部屋を出た。どうやら先ほど訪れたルイズの教会にいたらしく、通路には見覚えがあった。

「済まない、ルイス。私は君を守るには余りにも無力だ」

彼の表情は見えなかったが、声は沈んでいた。

「済まない」

その言葉を最後に、俺の意識はシヴァドの枕の中に戻ってきた。

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