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ペットボトルのキャップ、異世界で神の石と呼ばれる  作者: 龍龍龍(ろうたつりゅう)
第ニ章
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第19話

朝食を食べ終えて、俺たちはそれぞれに船を歩き回っていた。

アザハとクロナはキャプテンに海図と大陸の地図を見せてもらい、今後の予定を決めていた。トオガは海藻を調べるということで部屋から出てこない。

俺とシヴァドはというと、スキラーに呼び出されて昨日の動力球を見ていた。

「うん、やっぱりガタが来てるね…」

動力球と支柱の接続部が噛み合っていないらしく、修理に手を貸してほしいとのことだ。動力球を取り外すと、支柱と接する面に魔法陣が見えた。

「これを描きなおせばもうしばらくはもつと思う。でも、応急処置だと思ってほしい」

「分かった」

シヴァドは借りたペンの先を滑らせ始めて複雑な幾何模様を丁寧に描きこんでいく。

「長い間、魔法陣の効果は経験的にしか分からなかった。主流な理論では、環境に存在する魔力を吸い取って効果に変えるのが魔法陣だと言われてきた。でも、魔法を遮断した箱の中においても絶大な効果を発揮する魔法陣があって、それを説明できなかったんだ」

「ということは、その問題は未だ未解決のままか」

「仮説はいくつかあるけど、確かめてみなきゃ分からない。古代からある魔法陣の効果を再現出来たら、歴史や神話に迫れるかもしれないから、少なくとも僕にとって大きな意味を持つ課題ではあるんだ」

スキラーは横で手帳に書いてある整備項目のメモを眺めている。この次は船底の様子を見に行くらしい。

「俺たちがお前を降ろすのは共和大陸の北側、レフタ王国の北の港だ。神話の研究をするなら、まずは教会に話を通しておくといい」

「教会って?」

シヴァドが問い返すと、スキラーは手帳を閉じてシヴァドの方を向いた。

「神話の断片を保持し、神話に類する遺物を保管する組織…というのが、公への説明だ。実際は政治にも食い込んでいるほどの影響力を持つ機関で、大陸にある三つの国の中枢には教会関係者が関わっている。俺たちも何度か取引したが…あまり何から何まで信用しないことだ」

表情は無機質なままだったが、口調には微かに不信感が漂っていた。

「教会内部には過激派も存在する。大規模な勢力ではないが、影響を無視はできない。…あのクロナという娘、魔族だったな?あまり存在を大っぴらにはできないかもしれない。過激派は未だに魔族の存在を恐れる連中の集まりだ。残された魔族の居住地を破壊するようにという働きかけをする者もいる。魔族というのは今日の世ではほとんど忘れられているようなものにたいして声高に危険性を叫ぶというのは現実的な働きかけとは言えないだろう」

シヴァドは魔法陣を描き終えてペンをスキラーに渡した。

「大体の人は魔族に対して友好的でも敵対的でもないってこと?」

「過激派を甘く見ないほうがいいぞ、少年。この世には他人の話も聞かずに自分が正しいと信じて疑わない連中もいる」

スキラーの忠告を聞いた途端、こっちの世界に来る前の電話口の会話を思い出して嫌な気分になった。

「それでもだよ。信じなければ歩けない道もあるって、僕は思ってるんだ」

シヴァドは真っ直ぐにスキラーを見て答えた。スキラーは納得したように頷く。

「俺は満足している。キャプテンの見る目が今回も正しかったということにな」

手渡された動力球を二人で再び支柱に戻し、動きに問題がないことを確認して甲板に戻る。日差しは高くから降り注ぎ、ほとんど影は伸びていない。船長室からアザハとクロナが丸めた大きな紙を持って出てきた。

「それは?」

「地図だよ!」

クロナが元気に答える。

「部屋に戻って、大陸のどこに行くか相談しよう」

シヴァドの部屋で、全員が広げた地図をのぞき込む。時折甲板の上からはしゃぐ声が聞こえる。こっちの世界に来てから、こんな平穏な環境に置かれるのは久しぶりだ。ずっとこれくらい平穏であればと思うが、多分シヴァドの望む先にしばらく平穏はないだろう。

それでも、行き先を話し合う仲間を見ていると、知らない世界にいるのになぜか大丈夫だろうと思えた。

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