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ペットボトルのキャップ、異世界で神の石と呼ばれる  作者: 龍龍龍(ろうたつりゅう)
第一章
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第10話

兵士数名とマルべ…ではなく、アザハがすぐに駆け付けた。マルべは帝国に使者として向かうことになったらしい。

俺たちを襲ってきた男には、街の中心部から離れた尋問所で問い詰めることになった。尋問所の内側の大ホールは、平坦な四角い石でできた中心の床を傍聴席が取り囲むようにできている。縄で体を縛られたまま、襲撃者は中心で諦めたように跪いて真正面に立つカナグラを見ていた。

「お前が襲撃したということで間違いないな」

「間違いありません」

声はぼんやりして、ここにいる人間ではない誰かに語りかけているようだ。

「襲撃した理由はなんだ」

「神の石を持っていると教えられ、奪おうとした」

シヴァドが自分のポケットに視線を落とす。左隣にアザハが、右隣にトオガが立ってその様子を眺めている。アザハは自分の腰の細い長剣に手をかけているが、トオガは自分の持ってきた鉄の棒に寄りかかって欠伸をしていた。

「神の石の情報はどこから?」

襲撃者は初めて沈黙した。閉じられた鎧戸が、外で輝いているであろう月光を遮る。

「いずれにせよ残念だ。神の石は彼が持っていたわけではなく、帝国に持ち去られた。彼は帝国との国境で起きた事件の証人として、軍部が監視しているが…神の石とは関係ない存在だ」

襲撃者が先ほどより少し大きく目を開いた。

「何だ?知らなかったのか。そういう情報を精査しない人間に雇われたか」

「俺は雇われたなどと言っていないぞ」

まるでハシビロコウのように、カナグラの眼光は鋭くじっと動かない。

「お前のようなものが国に出入りしたとは軍部は聞いていない。外国からの密入国だとすればより罪を重くしなければならないだろう」

カナグラの尋問は決して論理的とは言えなかったが、それゆえにどんな質問が飛んでくるかは分からない。尋問において、本当のことを襲撃者から全て聞き出す必要はなく、真実に迫れるような情報だけ引き出すことができればいいのだ。

「何となく誰に頼まれたかは見えてきたな。私が元々持っている情報と推測にぴったりとあてはまる」

「あの…カナグラさん」

シヴァドが手を上げた。

「その人、正常な状態じゃないと思います。意識が朦朧としているかと思うと、時々自分の意見を口走っているので…発言をコントロールされているかもしれません」

話し終わるのを待たず、カナグラはシヴァドに静かにするようにと手で合図を送った。コントロールしているということは、こちらの様子を伺い知る術も持っているかもしれない。

「私はそうは思わない」

カナグラはそれだけ言って、再び襲撃者の方を向いた。相手が操られていることを承知で、他の情報も引き出そうとしている。

「このあたりには…ほかに人はいないのか?」

襲撃者が質問する。その顔が歪み、狂気じみた笑顔を無理やりに作り出す。

「あんな安い魔法だけが私の全てだとでも思ったか?神の石を得るということがどれだけのことか、貴様らは理解していないようじゃないか」

襲撃者のシャツのポケットからふわふわと空中に浮きだす、小さな物体が見えた。「証拠は残さん!全員まとめて殺すだけだ!」

ペットボトルのキャップだ。そして、この世界では神の石だ。青い光を放ち、小刻みに振動している。

「はぁ…?」

トオガが困惑する。全員が防御の姿勢をとった。

「は、は、は、は…」

喘鳴のように笑う襲撃者の手前で、神の石が真っ白な熱を放つ。カナグラが俺たちの前に駆け寄ろうとするのが見える。

「自爆だ!」

誰かが言った。空間が揺らいだ。すさまじい量の魔力が、小さな神の石から放たれる。

建物を覆いつくす…かに思えた。

魔力は無数の白い光線となって、シヴァドのポケットの中にいる俺に全て注がれ始めた。神の石から俺の間に、高密度の魔力の流れが生まれた。熱も風も圧力もなく、魔法の全てが俺に吸い込まれてゆく。

「えっなにこれ」

俺の困惑した呟きは魔法にかき消される。全員が呆然として光線の束を凝視している。

「ん…?」

神の石と俺との間で、別の白い塊が出来上がりつつあるのが見える。

「あれは…人…?」

アザハが目を細めながら呟く。

胴体と四肢と頭部を備えたその形は、人のものだった。人が出現している。幼い女の子のようだ。薄着で、黒く長い髪の隙間から緋色の目が覗いている。ただ、側頭部から角らしきものが生えているように見える。

その姿が完全なものになると同時に、本来爆発に用いられるはずのエネルギーは、とうとう俺に吸いつくされてしまった。

襲撃者は意識を失って床に倒れていたが、兵士たちに運ばれた。黒髪の少女はその場に呆然と立ち尽くして、焦げ付いた匂いを振りまきながら、辺りをきょろきょろと見回している。

「お父さん?お母さん?」

アザハとシヴァドが少女に近寄る。足は裸足で、ところどころ痛々しく擦り切れている。

「大丈夫?」

呼びかけたアザハを見たが、まだ焦点は定まらない。

「お父さんと…お母さんは…」

少女の体がぐらりと傾き、シヴァドがそれを受け止める。兵士たちに指示を出し終えたカナグラが様子を見に来た時には、少女は気を失っていた。

「カナグラさん…これは一体」

「分からない。シヴァド、君には分かることはあるか」

「…今のところは少ししか分かりません。あとは推測です」

アザハは少女を王宮まで送り届け、医師に診せることになった。トオガと俺たちは証人として軍部に向かう。

「また証人になっちまったよ、俺たち…」

「もう何と言えばいいのか分からないね」

俺たちは手配されていた馬車に、カナグラと乗り込んだ。

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