版権図鑑①
【Over flowerと神楽乙葉】
ニコボート社が2006年に発売したアダルトゲーム。及びそれを原作とするTVアニメーション。ゲームシステムは平凡で、内容もよくある学園恋愛シュミレーション。
………なのだが、スタッフが「現実の学校を参考にした」という事からか、当時の作品である事を考えても悪い意味でリアリティのある生々しい描写や展開が特徴。
代表的なものを挙げると、攻略対象のヒロインが陰湿ないじめを行う、攻略ルート中のヒロインが平気で他の男性と肉体関係を持つ等があり、選択肢によっては昼ドラやサスペンスのような展開が待ち受けるという当時のオタクに売る気あったのか?と言いたくなるような内容。
そしてアニメに至っては輪をかけて凄惨な内容であり、視聴者を置いてけぼりにしてヒロインが殺し合う様は「血みどろの結末」と呼ばれ話題になった。
神楽乙葉は本作の看板ヒロインの一人であり、いやに生々しい他ヒロインと違って当時の恋愛ゲームによくあるおっとり巨乳お嬢様で、本作の癒しとも言える存在。
だが当然こんな作品世界で無事ではなく、他ヒロインから陰湿ないじめを受ける、主人公を他ヒロインに奪われた挙げ句不良に強姦されるといった散々な目に逢い、どのルートでも主人公と結ばれる事なく自ら命を断つというあまりの悲劇ぶりにネットで同情と人気を呼んだ。
なお居合いの心得があるというのは原作通りだが牛娘要素はSEOで九郎太が後付したものであり、原典の彼女はスタイルの良さを除けばごくごく普通の女子高生である。
【ネビュラマンJとメガフェンサー】
シブラヤプロ制作の特撮ヒーロー番組「ネビュラマン」シリーズの一つであり、怪獣を追って地球にやってきた新人ヒーロー・ネビュラマンJと、防衛チーム内部で暗躍する黒幕との戦いを描く。
企画がスタートした時、最大のスポンサーにして、上記の三大特撮全ての関連グッズを展開している大手玩具会社・バソダイは、ある斬新な提案を出した。それは、今やレンジャーシリーズの特権とされている合体ロボを、防衛チームの戦力として出すというもの。
それだけでなく、合体ロボを巨大ヒーローの鎧として合体させるというのだ。
支援メカと巨大ヒーローの合体というアイデア自体は、別のスポンサーと連携した過去作品である「電脳超人ブリッツマン」で既にやっていたが、本流であるネビュラマンでは初の試みになる。
と、いうのも、ネビュラマンシリーズにおけるロボットというのは基本的に敵怪獣であり、侵略者の戦力か、人間が科学の過信で作った負の遺産であり、基本的に否定される存在だ。そのロボットを、味方のサブ戦力として登場させ、なおかつ巨大ヒーローと合体させるというのは、ネビュラマンの歴史からすれば革命といっていい。
この試みは、当初は好意的に受け入れられた。費用がかかる上に売上の伸びない防衛チームの玩具をどうにかしたいというのもあったが、今の特撮現場のスタッフが「ブリッツマン」を見て育った世代という事もあって、是非やりたいという声が挙がったのだ。
子供向けの安価なアクションフィギュアと連動した、合体ロボの玩具の試作品や、本編に登場する着ぐるみが作られた。だが、この試みに待ったをかけた人物がいた。シブラヤプロダクションの代表取締役、つまりは社長である。
彼は、師でもある先代からシブラヤを受け継いだ責任として、人間の作った兵器とネビュラマンが合体するというコンセプトに反対だったのである。
ネビュラマンは宇宙を守るヒーローなのに、これでは人間の都合のみで戦う兵器のようになってしまう。そんな事は許されない、と。
こうして、シリーズ初となる味方サイドの合体ロボの登場はお流れとなり、ネビュラマンJは初の防衛チームの存在しない、民間警備会社の所属という設定で制作される事になった。
この、合体ロボットの着ぐるみ自体は制作されたが、ずっと倉庫の中で眠る事になった。が、ある話において出演させる事が決定した。
ここまで言えば解るだろうが、その巨大ロボットの成れの果てこそ、メガフェンサーである。
ヒロイックなカラーリングを兵器じみたモスグリーンカラーに塗り直され、ヒーローメカらしいツインアイの上に不気味に光るモノアイの仮面をつけて、敵ロボット怪獣として彼は我々の前に姿を現す事になったのだ。
ネビュラマンJ。第31話「偶像狂騒曲」。電脳機神メガフェンサー、登場。
地球防衛軍は、地球防衛をネビュラマンに頼り切りである現状を打開するべく、それまでの対怪獣戦力の技術の粋を集め、ロボット兵器メガフェンサーを建造。また、そのPRのためパイロットとして防衛軍の女性パイロットを招集し、世界初の地球防衛アイドルグループ「チームN」を結成した。 その様をニュースで見ていたJの所属する組織・メモリーのチームは「まさにアイドル、偶像だな」だとか「メガフェンサーは危険すぎる、人間に扱える力じゃない」と口々に皮肉っていた。
そして案の定、メガフェンサーは暴走した。チームN の指揮官として防衛軍に潜伏していた「ロデューサ星人」がその本性を表し、チームNのメンバーを生体ユニットとして繋ぎ、自らもメガフェンサーを操り地球侵略に乗り出す。
そこに駆けつけたネビュラマンJと交戦になり、ロボット怪獣特有の多彩な攻撃でJを追い詰めるも、油断と傲慢が仇となりメガフェンサーは設定上存在した分離ビークル形態を披露する事なく大破。
コアユニットを分離させて逃げようとするロデューサ星人だったが、コアユニットはネビュラマンJの必殺光線を受けて大破。ロデューサ星人も倒された。
最後はチームNを辞めた元アイドル達が、各々の夢に向かって歩き出す事を匂わせて、話は終る。
…………後のラジオ番組でこの話を担当した脚本家が出演した際に話したが、これは放送当時の美少女ゲーム、特にアイドル物や戦闘力美少女モノ等にあるような、プレイヤーが指揮を取り美少女を戦わせるゲームシステム。そしてそれを楽しむ、命令だけして自分は戦わないオタクへの風刺として書いたらしい。
よくある流行り物への風刺と言えばそれまでだが、ようはこの脚本家は美少女ゲームを楽しむオタクに対して「貴様らは侵略宇宙人と変わらない、正義のヒーローに退治されろ」と言っているようなもなのだが、美少女コンテンツよりもネビュラマンの方が権威もあって意識も高く、そうした美少女コンテンツが好きなオタクの意見は封殺され、今もネビュラマンJは名作として愛されている。
………が、バソダイの発進しているコンテンツの中には玩具だけでなく「ライブライブ」や「アイドルサイアー」等の美少女・アイドルコンテンツも存在し、ネビュラマンJでシブラヤがやった事は、メインスポンサーの提案を我儘で蹴った挙げ句、喧嘩をふっかけたようなものだ。これに対する公式の回答はバソダイもシブラヤもしていないが、当の話を書いた脚本家がその後ぱたりと名前が出なくなったのを見るに、つまりそういう事なのだろう。
【 |鬼斬-ONIKILL-《オニキリ》 】
2003年〜2019年まで週間少年ジャックで連載していたホラーバトル漫画。地獄より這い出てくる怨霊=鬼を霊力と刀を使って滅する霊能者達の戦いの物語。
作者の久保吉屋の独特のセンスのある台詞回しやケレン味のある必殺技の数々、そして美麗なキャラクターから多くの読者のハートを掴んだ。
………が、ファン層が中高生と女性が中心だった事から当時のインターネットにおいては批判的に見られており「中二病」「オサレ」等と冷笑される事がほとんどで、タイトルを捩って「おにぎり」という蔑称で呼ばれる事もあった。
同時に当時の女性ファンによる人気投票荒らしやヒロインへのアンチコメントの苛烈から余計にネット民の悪感情を加速させ「人気投票で一条さん(敵のモブキャラクター)一位にして腐女子泣かそうぜw」等の悪意を持った祭りにまで発展し、少年ジャック編集部からも苦言を呈されるまでになった。
時代が流れてネットユーザーが代替わりした事でネットの悪感情は少なくなったが、今度は本編で主人公と結ばれたヒロインが人妻になり寝取られるという成人向け二次創作が乱立。その事に対して当時の女性ファンが憤慨し、あの時の報復と言わんばかりに絵描きのアカウントに対する無差別通報が行われ、多くの絵描きがSNSからその姿を消した。
以上の事から「ネットにおける男女間対立の象徴」と評される事が多い作品である。
余談だが当のヒロインについては「足を引っ張る等のマイナス要素を少年達の大好きなおっぱいで中和するハズが腐女子に人気が出てしまったせいで憎悪に晒され、それを乗り越えて主人公と結ばれたハズが今度はエロ絵描きに目をつけられて間男に犯され続ける、少年漫画ヒロインの業を象徴するおっぱい」という批評がある。
【銀河列車戦記】
ミリタリー漫画で有名な「梅本一也」の代表作の一つ「銀河列車199」をベースに、生前彼が構想していたスピンオフ作品のアイデアを原案とした半オリジナルアニメ。2019年〜2020年の日曜17時に放送された。
銀河列車を運営する宇宙鉄道局と安全を守る宇宙鉄道警備隊に視点を置いた作品で、列車強盗や未知の宇宙生物といった脅威に知恵と勇気で立ち向かう様を描く。
最大の特徴としては大型化して戦艦並みの火力・積載力を持った「列車型宇宙戦艦」の登場と、その多くが実際の鉄道車両をモチーフとしている事が挙げられる。
鉄道マニアはどの車両が登場するか?あの列車が登場したらどんな戦艦になるのか?という話題で盛り上がり、今でもホビー雑誌等ではオリジナル列車戦艦の作例が掲載される事がある。
余談だが梅本一也といえば女性キャラの色っぽさに定評があり、本作のキャラクターデザインは時代に合わせてアレンジされていたものの、この作品で性癖を狂わされたという若年層の声も少なくない。
【次回予告】
皆、正義の味方になりたがる。
銀行で、宇宙で、法定で、あるいはアリーナで。
悪いやつを倒して平和を守る、それ自体は別に悪いことじゃない。
………悪者にされた方からしたら、たまったもんじゃねーがな。
次回「子供のゲームや漫画を取り上げる時はその後の一生恨まれる覚悟でやれ」
このイベント、どう攻略する?