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第2話 元カレ?大集結 ①

『ユイ無事!?』


 私がイダくんとアラトさんとのいざこざに巻き込まれていた間、チャットアプリのグループにそんな簡潔なメッセージが送られていた。

 差出人は親友の一人、ヨウちゃんからだった。


『大丈夫だよ!二人は?』


 急いで返信を送る。一秒も経たずに既読のマークが付いた。


『ヤエもあたしも大丈夫』

『なんでか電話が中断されちゃったからいまヤエが改めて通報してる』

『なんか取り合ってくれないんだけど!』


 リアルなタッチのキャラクターが激怒したスタンプが送られてきた。ヨウちゃんは相当お怒りのようだ。

 ヤエちゃんはもう一人の親友の女の子。二人とも無事なようで何よりだ。

 それからも、間髪を入れずにメッセージが連投される。


『ユイ明日学校ちゃんと来てね!あとダメ元でも警察に相談して』

『伊田くんも待ってるんだぞ!』


 またイダくんの話か…と思ったけど、きっと彼女なりの元気付けだろう。

 そこで私はようやくスマートフォンの画面から視線を外し、顔を上げた。


(…まぁそのイダくんなら、学校に行くまでもなく目の前で待ってるんだけど……)


 私の目の前には、イダくんとアラトさんが並んでいた。


 あれからイダくんとアラトさんをどうにか宥め賺し、私は無事に自宅に戻ってきていた。…二人をそのまま引き連れて。

 一人にするのは危険だと主張して無理矢理着いてきた、というのが正確だけど。

 お前らも同類だと言いたいところだったが、あの占い師の不審者に襲われるよりはマシだったし、何より祖母が歓迎してしまったため、自宅に迎え入れることになった。


 食卓にはいつもより多めに惣菜が出され、普段使うことのない来客用の箸が二膳、彼らの席に置かれている。


「おい、お前。お祖母様が食事を出して下さっているというのにスマホをいじるな」

「まあまあ、ちゃんと連絡しとかないと…警察たくさん来ちゃうかもでしょ」


 説教を垂れるアラトさんに、祖母に聞こえないよう小声で私に話しかけるイダくん。私の一挙一動に逐一反応しつつ、何の躊躇も無く食事をとっている。

 その横では、祖母が続々と惣菜を並べている。


 少しは遠慮しろ…と言いたいところだけど、こうも嬉々として人をもてなす祖母を見てしまうと、口出しできなくなってしまった。

 我が家の支配者である祖母を味方に付けるとは、何とも目ざとい男達だ。


「広い家だから、いつでも泊まりにおいでねぇ」

「ハイ、明日からも来ますね!」

「もう来なくて良いです」


 つい先程アラトさんを上げた時も思ったが、祖母のこの危機感の欠如はいずれ矯正せねば…厄介なセールスマンに要らないものを買わされるのも時間の問題だ。


 慣れない大人数の食卓。不審者に襲われた件もあって、食欲をはじめとしたあらゆる欲求が失せてしまい、私は席を立つ。


「おい。どこに行くつもりだ?」

「先にお風呂入る…」

「あ、ならおれも見張りに…」

「はーい、唐揚げだよぉ。いっぱいお食べ」


 再び付いてこようとする二人の前に計り合わせたように祖母が新たな惣菜を繰り出した。ナイスタイミングだ。しばらくは祖母が足止めしてくれるだろう。

 流石に浴室まで付いてこられては溜まったものではない。この間に先に済ませてしまおう。


 既に熱々の湯が張られた浴槽。先に体を洗ってから浸かる。


(……にしても、どうしよう…)


 帰って欲しい。だけど、彼らが居なくなったタイミングであの不審者がまた現れてしまったら、私はどうすることもできない。

 そもそも、あの不審者の目的は何なのだろう。…〝強いて言うなら〟夫婦になること、だとか宣っていたけど…。


「絶対に嫌だ…」


 思わず声が出る。

 本当に夫婦になるのもそれはそれで嫌だし、推測でしかないけど、あの不審者の態度を見るにそれだけでは済まないと思う。


 それに友人二人の時間を止めたり、恐らく位置情報を切っている筈のスマホを辿って私の居場所を特定したりと、手段も常識が通じる相手ではない。きっと目的もろくなことではないのだろう。


 …そのことを思い出して、今この一人きりになっている時間はかなり危険なのではないか、とふと思い至る。


(……今、襲われたら……)


 普段は湯が少しぬるく感じるようになるまで風呂に浸かっていたが、今日は早々に上がることにした。

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