忍者の決闘は今まさにチェックメイト
「なろうラジオ大賞4」参加作品です。1000文字です。
忍者、忍者、決闘、そして幼馴染です。よろしくお願いします。
暗闇に響く鋭い音。ぶつかる刃と刃。
黒装束に身を包み刀を交え合う二人の男。しかし片方の者はすでに消耗激しく、力に押され弾き飛ばされてしまう。石垣の壁に背を打ちつけられ、鈍い声と赤い飛沫を吐いた。
降りしきる雨は勢いを増す。
分厚い雲に覆われた空に雷鳴が轟くと、止めを刺さんと跳びかかる黒い影を稲光が照らした。
一方の者は武器も手放し隙ばかり。もはや迫り来る鋭い切先が胸を貫く未来をただ迎えるしかないようである。
忍びといえど人の子。この生死の際で彼は一体何を想うであろうか……
ああ、もう駄目か、
背後は石垣。
正面に敵の刃、尖ってて、痛そ。
右もダメ。踏み出せば落とし穴がある。知ってる、なんせ某が仕掛けたからな。さすがにハマったらウケる。蝮が百匹下にいるから、最悪。
左に転がれば池の中だ。なんせ某、泳げぬもんね。それでも忍びかと言われそうだが炎の術を操る某は水との相性が悪い。その炎もこの雨じゃ使いようがないし。
ならば宙へ飛び上がるかとなるが、そこは相手が先手を打っている。空へと投げたクナイの一群が時間差で某の頭上にやって来ている。
万事休す。八方塞がり。
敵は全て計算していたんだ。長期戦になったのも策か。
正に詰め将棋。
絶体絶命。この窮地、もはやなす術の無し、か、
チェスで言うならチェックメイト。ふっ、なぜこの日ノ本の田舎忍者ごときがチェスという異国の遊戯を知っているのかと。後の世の者達は思うかもしれない。
天才なのさ。
ついでに言うと、ここまでまだ0.02秒しか経っていない。スゲーだろ。
だが遊んでる時間も字数もない。
忍びたる者、死の間際こそ主君への忠義を果たす時、命と引換えに一矢報いよ。と師範が言っていた、ような気がすると小夜ちゃんが言ってる夢を見た。
この期に及んで好いた幼馴染を思いだすとは、元より忍びなど向いていなかったのだ。
そういや小夜ちゃんに貰った丸薬が装束に入ってる。「また私の部屋に忍び込みたくなったらこれを握り潰して」て言われたんだっけ。
小夜ちゃん……
えいっ
――ブチッ
その瞬間。
空が激しく金色に光るや、
凄まじい音を立てて稲妻が宙を切り裂くと、跳び上がり眼前に迫っていた敵の体に落ちた。
一瞬にして敵は地面に崩れ落ち、起き上がる事はなかった――
某が暫く放心していると、駆け寄ってくる幼馴染の姿が見えた。
「小夜ちゅわーん」
某は手を振った。なぜか彼女は顔を歪めてしまう。
「ヘンタイ! なんで生きてんのよ!」
読んでくれてありがとうございました。
また、なろうラジオ大賞様ありがとうございました。1000文字制限は考えていたより難しかったです。よい経験になりました。