表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二人の魔法使いは永遠に  作者: どぶネズミ
41/44

第41話 当然猫は怒り悲しんだ⑤

音虎はすぐに振り返り目の前まで来ていたメシアムを細い右足で蹴り上げ、そのまま上空へと飛ばしてしまった。すると音虎は羽を後ろへ引くと、「ダンッ」とあの衝撃波のような音が出るほど力強く羽ばたき、メシアムの方へ飛んで行った。


一方そのころ、メシアムは浮遊魔法でどうにか地上へ戻ろうとしているものの、勢いが収まる気配もなくどんどん高く飛ばされていた。


「クソが!」


その時、メシアムの横目に凄まじいスピードで自分よりも高く何かが飛んでいくのが見えた。


「気の…せいか?」


だが、背中を明るく照らす黄金の明かりの存在に気が付いた。


「違うっ!これは!」


そう叫び後ろに体を向けるとそこには、渋谷を、いや、東京全域を覆ってしまうんじゃないかと思ってしまうほどの大きな魔法陣が展開していたのだった。そして、その魔法陣のさらに上には大きく羽を広げ羽ばたく音虎の姿が見えた。


「彼女が選んだ私が選ぶ」


音虎がそう言うと、メシアムは恐怖からか目を大きく見開き叫んだ。


「ふざけるな!こんな惨めにっ、正々堂々やろうじゃないか!」


音虎は聞く耳を持ち合わせていないようで、続けて言った。


「彼を連れて行って、残りは私がやるから」


すると、魔法陣から無数の白い閃光がバチバチと音を立て発生し、月くらいなら掴めてしまうじゃないかと思うくらいの大きな手が姿を現した。その手は色白で潤った綺麗な肌をしていて、子供のような若々しさがあった。その手は風を切る轟音と共にメシアムの方へと腕を伸ばしてゆき、そのまま手を広げた。


「メルク様ー!メルク様ー!」


メシアムは喚き叫ぶも、その巨大な手のひらに吸い込まれるようにどんどん近づいてゆき、大きな指がゆっくりと閉じメシアムをしっかりと握りしめた。大きな手はその場にとどまりじっとしていたが、すぐに風を切る轟音と共に魔法陣の中へと消えて行った。すると、魔法陣は再び無数の白い閃光が放たれ、どんどん小さくなっていった。


だが、小さくなればなるほど光量が増してゆき、ちょうど地上から眺めた月ほどの大きさになると、大きな炸裂音と巨大な閃光が等間隔に三度おきた。そして三度目の閃光が消えた時、その小さくなった魔法陣が弾け、黄金の火花や火の粉が一気に放たれた。


その火花や火の粉は夜空を駆け巡り広範囲に広がると、遅れて大きな炸裂音が「ドン」と響いた。そして火花はチカチカと瞬くと次第に失速してゆき、輝きもゆっくりと落ちてきた、その時だった。


「お願い!今日は特別な日なの!」


音虎の声だった。すると音虎は両手を大き広げ、夜空を抱くようにして叫んだ。


「入道雲 蝉時雨 虫の駆け落ち」


すると、音虎の広げる腕の間あたりに白い魔法陣が五つ、十個、五十個とどんどん増えていき、魔法陣が発光し、そこから白いハトが現れ空へと羽ばたいて行った。白いハトは次々と放たれ、今も輝きが落ちている火花の方へとすごいスピードで飛んで行った。そして白いハトたちが夜空に埋もれ見えなくなったその時だった。


「シマちゃーーーん!」


音虎の叫び声に気が付いた島田は空へ向いていた目線をすぐに音虎の方へ向けた。音虎は真っ白な歯を堂々と見せながら、とても生き生きとした爽やかな笑顔で島田を見つめていた。


「早く!」


音虎は両手を大きく広げていて、島田はその笑顔に引き寄せられるように立ち上がり、さっきまで衰弱していた人間とは思えないほど軽やかに走り、音虎の方へと向かった。


「なんや島田さん、元気なんかいな」


そう言う組員とは裏腹に、アキトは嫌な予感がしたのか心配そうに島田を目で追った。


「音虎!」


島田はそう言うと、音虎にぶつかるように抱き着き、力強く抱きしめた。そして島田は音虎の顔に近づき、腕を音虎のうなじに通しキスをしようとした。


「待って」


音虎はそう言い島田を引き離すと空を見上げた、その時だった。先ほどまで消えそうだった火花の一粒一粒が輝きを取り戻していたのだ。そして、その火花がそれぞれ大きく弾け、その弾けた火花がまた大きく弾けてと連鎖していき、夜空は黄金の火花で埋め尽くされていて、天の川銀河なんかの比じゃないほど美しかった。


「綺麗だ…」


島田がそう言いその景色に夢中になっていると、音虎が島田の襟元を引っ張り自分の方へと顔を寄せるとキスをして、島田もそのまま音虎を抱きしめてキスをしかえした。


すると、夜空を飾っていた黄金の火花がゆっくりと地上へ降りてきて、星の雨を浴びているんじゃないかと思わせた。すると島田は音虎の口元からゆっくりと離れると言った。


「こんな時間が、いつまでも続いてほしい」


音虎は可笑しなものを見るような目で島田を見ると、微笑んで言った。


「シマちゃんからそんな言葉が聞けて、嬉しい」


島田は照れ隠しなのか、「何を言ってるんだ音虎は」と言わんばかりの呆れた顔を演じたが、目線を音虎へ向けると、上目遣いで真っすぐこちらを見つめていたのに気が付き、再び音虎を抱きしめ言った。


「愛してる」



読んでくださりありがとうございました!

完結まであと5話も無いくらいです!

引き継ぎ、「二人の魔法使いは永遠に」をよろしくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ