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二人の魔法使いは永遠に  作者: どぶネズミ
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第31話 黒い猫②

柴田はゆっくりと指を指し、島田はその指の先に目線を向けた。しかしそこにはミニミ軽機関銃があり、不思議に思った島田はよく目を凝らして見てみると、グリップのあたりに黒く煙が出ている何かがあった。


「うっ」


柴田は耐えられなかったのか、その場で吐いてしまった。島田もいくら医者だとしても、焼け焦げたそれを見続けることはさすがにできなかった。すると、遠くからこちらの方へと向かってくる足音が聞こえ、二人はとっさに身構えその音の方を見た。


「あれ、あの女は一緒じゃないんですね。あ、もしかして僕、殺しちゃいました?」


立ち込める煙から現れたのは、まるで友達に話しかけているように満面の笑顔のメシアムだった。島田はポケットに手を入れ、すぐに調合魔法の瓶を握ると、今まで見たことが無いほどの鬼の形相で言った。


「殺すぞ」


「ははは、怖いなぁ」


島田はメシアムのことを睨んでいるだけだったが、柴田は違った。柴田は胸にしまっていた回転式けん銃をとっさに取り出し、メシアムへ向けた。


「おいやめろ!」


島田は柴田のことを止めようとしたが、彼は怒りに任せ引き金を引いてしまった。しかし、柴田の発射した弾はメシアムの防御魔法によって止められていて、弾頭の周りに黄色い蜘蛛の巣のようなものが張っていた。


そして、防御魔法によって止められた銃弾を見たメシアムは鼻で笑い、笑顔で柴田のことを見ると、柴田は恐怖からか目を見開き、引き金を七度引いた。しかし、柴田の持つ回転式けん銃は五発装填の物で、三発は余分に空撃ちをしただけだった。そしてもちろんだが、銃弾は全て防御魔法によって止められていて、それを見た柴田は叫ぶように言った。


「お前が茂木さんを殺したんだろ!」


苛立ちから声を荒げた柴田だったが、メシアムは片目を瞑り人差し指を両耳に入れ栓をすると、めんどくさいと言いたげな表情を作り言った。


「うるさい」


「へ?」


「麦の戯言」


そうメシアムが言うと。メシアムの方へ銃口を向けていた柴田の腕は、下へ九〇度の方向へ折れ曲がり、激痛からか柴田は腕をつかんだまま転げまわり、そして叫んだ。


「ふっざけんな、てめ、あークソッ、殺してやる!」


するとそんな様子を見たメシアムは、腹を抱えて笑い出し言った。


「ははははははっ、情けないなぁ、はは、面白いからもう片方もやっていい?いい?」


メシアムは腹を押さえたまま、今にも笑い出しそうな震えた声で言った。


「む、麦の戯言っ」


すると柴田の左腕がいとも簡単に折れ曲がり、再び柴田はもがき叫んだ。


「あああああ!痛い痛い痛いっ、あっ、足がああ!」


そしてまた、メシアムは声を出して大笑いした。


「本当に面白いなあ、あ、貴方ははやめとくよ。あの女の前で沢山遊びたいからさ、ケガしないようにね、じゃあ」


そう言いメシアム島田の額を軽く指ではじき、その場を去ろうと背を向けた。すると島田はメシアムの肩を二回叩いた。


「ん?」


そう言いメシアムが振り返ると、メシアムの目の前には島田の拳が視界全体を覆っていた。そして、鈍い音ともにメシアムはよろけ数歩後ろへ下がると、鼻からこぼれてきた血を拭いその血を眺めると、口周りにシワが寄るほど歯を食いしばり、恨むような目つきで島田を睨んだ。


「僕の顔を傷つけたな…この僕の!」


「すまんな、だけど今の方が似合ってるぞ」


するとメシアムは杖を島田に向け言った。


「僕は親切心であなたたちを見逃してやったんだ、だがもうそのつもりはない!」


「じゃあ君の顔よりかは綺麗な死体にしてくれよ」


メシアムは怒りが頂点に達したのか、杖を島田の方へ向け、大きく息を吸うと呪文を叫ぶように唱えた。


「サモア!」


メシアムの持つ杖が白く発行した時、島田は右手に持っていた調合魔法の瓶を握りしめると、目の前の地面へと力ずよくたたきつけた。すると、中から液体が零れアスファルトを濡らし染み込んでいくと、そこから火花が散り、小規模の爆発が二人を包み込んだ。


しかし、爆発の煙の中には防御魔法で身を守る、無傷のメシアムの姿があった。メシアムの口角は徐々に上がっていき、鼻で笑いながら言った。


「あー、無駄死にだね」


メシアムはそう言い、島田の死体を確認しようと煙が晴れるのを待っていた。しかし、晴れた煙の先にいたのは、防御魔法を使い島田を守る音虎だった。


「は?お前呪いは」


「ジグ!」


音虎はそう叫ぶと、メシアムの足元から一本の太い氷柱が、メシアムめがけて突き出てきた。だが、メシアムがとっさに防御魔法を張っていたおかげか、空中へと弾き飛ばされただけでまたも無傷だった。


「あっぶなー」


メシアムはそう言い反撃をしようと杖を音虎の方へと向けたが、防御魔法の球体状の膜にはひびが入っているのに気が付き杖を降ろした。そしてそのヒビのおかげか、それともメシアムことを鋭く睨む音虎に怖気づいたのか、あの破裂音とともに浮遊しどこかへと逃げてしまった。


様子を見ていた島田は、メシアムが逃げたのを確認すると、音虎に話しかけた。


「音虎、お前呪いが解け」


しかし島田が言い切る前に音虎は膝から崩れ落ち、口からペースト状の大量の血を吐いた。島田は慌てて音虎を看病しようと音虎を抱きかかえたが、音虎の吐血は収まるどころか悪化し始めた。


「おいやっぱり!馬鹿なんじゃねえの、なんで」


「大丈…夫」


「大丈夫じゃねぇだろ!」


するとちょうどそこへ、組員三名を連れたアキトがこちらへ走ってきた。しかし次の瞬間、アキトが連れてきた内の一人である古淵と言う小柄な組員の頭に、身長より大きな槍が飛んできて突き刺さり、さらにその槍の飛んできた勢いのまま後ろへ飛ばされ、向かい側の街灯の柱へと槍が突き刺さった。その姿はまるで、メモ用紙を画鋲で壁に貼り付けたようだった。


「アニキ!」


そんな古淵を見たもう一人の大柄な組員は、そう叫び立ち止まってしまった。案の定その組員の右の太ももへめがけ槍が飛んできて突き刺さり、そのまま腹にも飛んできて貫通した。しかしその組員は咳き込みながらもまだ辛うじて立っていて、右手に持っていた拳銃を魔法を使いの方へ向けた。


だが、引き金を引く前に四、五本の槍がさらに飛んできて全て刺さると、硬直したまま力尽き後ろへ倒れた。


一方もう一人の組員とアキトはすでに島田たちのいる建物の隙間に避難していたが、二人の組員を助けようとはせず、その死にざまを目に焼き付けていた。そして、まだ痙攣していた小柄な組員が動かなくなったのを見たアキトは、島田へ言った。


「もう五人だけだ、すまない」


「大丈夫だ」


アキトは一瞬顔を出し一〇九の方を見てすぐに戻ると、さっきまでアキトの顔があったあたりに青い稲妻が走り、その奥に着弾したのか地割れのような音が響いた。だが、アキトは特に怖気づいたりもせずに言った。


「今ぱっと見ただけでも、五十人はいる」


「増えたな」


「どうする」


するとアキトと島田は、島田の腕の上で意識が朦朧としている音虎を見た。そして島田は顔を上げアキトを見つめた。アキトは自分が音虎のことを見てしまったことで、島田にその判断をさせてしまったのかと思い、息の混じった声でうつむき言った。


「ごめん」


そうアキトは言い、もう一度島田の方へ目をやると、島田はすでに瓶に入った液体を喉へ流し込んでいるところだった。それを見たアキトはまたうつむき拳を強く握りしめ、爪が強く食い込んでしまったからか、拳の中から血がぽたぽたとこぼれていた。


「ごめん、ごめん」


アキトは震えた声で言うも、後ろにいた柴田が自分の羽織っていた服を肩にかけ、背中をさすった。すると、何かか切れてしまったのか、二人の組員を前にしているにもかかわらず、アキトは声を出して涙をこぼした。


「姉貴は悪かあないですよ」


アキトは何度もうなずきながら、コンクリートの床を濡らした。そして島田はすべて飲み終えると、音虎の頬を軽く叩いて言った。


「音虎、君に伝えたいことがある」


島田がそう言うと、音虎は重そうにする瞼を何とか開き、少しだけ口を開き微み言った。


「どうしたの?」


「そうだな…」


島田はそう言い空を見上げると、真っ暗な空が広がっていた。しかし、それでも島田は星がないか一生懸命探し言った。


「ありがとう」





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