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二人の魔法使いは永遠に  作者: どぶネズミ
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第28話 だが奴らはその愛を砕こうとした①

 この世に太陽なんてないんじゃないかと思うくらい空は真っ暗で、星はおろか月さえも見えなかった。まるで別世界に来てしまったと勘違いしても、誰も笑いはしないだろう。


しかし、こんな時間になっても街の明かりは絶えることはなく、ビルからはちらほらと窓の明かりが灯っていた。すると、とあるビルの屋上からその景色を眺める大魔女メルクの姿があった。


「メシアム」


大魔女メルクがそう言うと、青白い稲妻の光がメルクの背中を照らし、そこからメシアムは現れて言った。


「お呼びでしょうか大魔女」


「美しいとは思わんかね、この景色が」


「はあ、私はそう言った美学がわからないもので、すみません」


「違う、そう言った話ではない。この国の人々はこんな夜中まで心身を削り、辛いと言いながらもただ仕事をする」


メシアムは鼻で笑い言った。


「馬鹿みたいだ」


「そういうことだ」


「…どういうことでしょう」


「私はそもそも美学の話などしていない、だから私が言った美しいという単語は何にでも代用がきく。馬鹿らしい、奴隷、下品、なんだっていいのだ。どうであれ、彼らを支配しているのは我々で、彼らがそれに気が付くことはない、魔法なんてあるはずがない、きっとそう言いまた日常を送るだろう」


「はは、確かに美しいや」


すると、メシアムの横に青白い稲妻が発生し、裂け目からケープマントのフードで顔を隠した男が現れて言った。


「大魔女、音虎が一人でこちらへ向かって来ているのを確認しました」


「そうか、あとは待つのみだな。戦闘員に伝えろ、処刑場の準備を整えろと」




 音虎は涙を流しながらゆっくりと足を動かし、今にも過呼吸になってしまいそうなのを抑えるために、胸当たりの服を破けてしまいそうなくらい握りしめていた。


「せっかく会えたのに、わたっ、私嫌われてっ、死にたくて、でもみんなが助けてくれたのにっ」


音虎の歩くスピードはどんどん遅くなっていき、ついに立ち止まってしまったかと思うと、膝から崩れ落ち声を出して泣いた。


「もうやだよお」


音虎はもう自分の涙で前が見えず、ただただ泣いた。周りに人がいるわけでもないので、音虎のことを助けようとする人などおらず、静寂と薄暗い街に音虎の声だけがずっと、ずっと響いていた。


「もう死にたい…、でも、でも…」


音虎はまた声を上げて泣き始めた。


「シマちゃん…」


すると次の瞬間、ドンと言うすさまじい音とともに、音虎の目の前に何かが落ちてきた。地面はえぐられ、砂埃が舞い音虎を襲った。音虎はそれでも頑張って涙を拭き、目を開くとそこには大魔女メルクの姿があった。


「答えが決まったと受け止めていいんだな」


音虎は頷き言った。


「ここで殺して」


「だめだ、時間をかけて儀式をする必要がある。それとガルセーにはびこる不届き者へもう一度考え

る時間をやるために、第一議事堂にてそれを行う。」


「もう、考えるのが辛いの、今すぐじゃなきゃ嫌」


大魔女メルクは眉間にシワを寄せると、自分の杖を取り出し言った。


「ヘイド・センベルク」


「まって、それって昏睡」


その瞬間、三十メートルはある火柱が二人を囲った。


「おい、メシアムか?後で沢山遊んでやるから今は」


「すまんのぉ、メシアムじゃなくて」


大魔女メルクはすぐに飛行魔法を使い、まるで戦闘機のソニックブームのような破裂音とともに垂直に飛び上がった。すると、その火柱の周りにはガタイの良い男たちが十人近くいて、銃を構えながらメルクの方を見ていた。


そして、その男たちの持つ銃から銃弾が発射されると、すぐにバリアで身を守り一〇九の方まで逃げ、十分離れたところで、浮遊したまま叫んだ。


「メシアム、お前ら集まりな!」


その掛け声とともに、数十人の魔法使いが浮遊魔法を使い集まってきた。それを確認したメルクは大声で言った。


「奴らは戦うことを選んだようだ、思う存分暴れてくれてかまわない、行きな!」


それを聞いた魔法使い数人は、浮遊したまますさまじいスピードで組員たちの方へと向かった。一方、組員たちが音虎に怪我がないかを確認すると、とりあえず物陰へと非難するため、音虎が最初に看病していた組員が音虎を背負い走っているところだった。


「どうして、なんで来たの?」


「みんな音虎チャンが大切だからだ」


「でも、シマちゃんは私のことが嫌いで」


「本当にそう思うのか?」


「え?」


組員たちは文化村通りから右に曲がりすぐのカラオケ屋の前に付くと、そこに止まるトラックの陰に隠れた。するとそこには、リュックサックから瓶を取り出し並べる島田の姿があった。


「シマ…ちゃん?」


「音虎!」


そう言うと、島田は持っていた瓶をすぐに置き、音虎のもとへ駆け寄るとすかさず抱きしめた。しかしすぐに音虎を引きはがし、両肩を押さえて言った。


「馬鹿じゃねえの、やっぱお前はそうやって」


「え、なんで」


「もうお前はそういう性格なんだな」


「ごめ」


「ちがう、俺が悪いんだ」


「え、シマちゃんが何を」


「すまん、時間がない、それは終わってから説明する」


すると、島田の後ろから他の組員たちとアキトが駆け足で向かって来て、アキトは険しい表情で言った。


「シマちゃんマズいぞ、奴らがこっちへ向かって来てるのが見えた」


アキトは息を切らしながら島田へ報告したが、後ろにいた音虎に気が付くと、アキトは音虎へ近づき頬を軽く叩いて言った。


「音虎チャン、全て終わったらシマちゃんと一緒に一発殴ってやる」


「え」


そう言うと、アキトは音虎力ずよく抱きしめ言った。


「生きていてくれて、ありがとう」


「ごめんなさ」


「ごめん、時間がない。シマちゃん、とりあえずシルヴィアンを渡してくれ、馬鹿でも使いやすい」


「ああ」


するとアキトの背後に猛スピードで飛んできた二人の魔法使いが見え、こちらに気が付くと、凄まじい破裂音を鳴らしこちらへ急旋回して向かってきた。そして、そのうちの一人が杖を持ち叫んだ。


「ツォルン」


すると、その魔法使いの杖から赤くプラズマのようなものでできたビームが飛んできて、アキトの背中めがけて飛んできた。


「アキトさん!」


音虎がとっさに叫ぶも、アキトは立膝をつくとじっと動こうとはせず、音虎を見つめているだけだった。すると、アキトの背後に飛び込んできた人影が見えた。その人は音虎が初めて看病した組員だった。


次の瞬間、その組員はアキトの頭上をかすめながらトラックの正面ガラスへと吹っ飛ばされ突っ込んだ。幸い、窓ガラスを貫通してガラスで体を切ってしまいうようなことは避けれたものの、その組員が腹にできた傷を押さえながらゆっくりと体を起こすと、その傷口からたちまち炎が上がり、その炎はすぐに組員を包み込んだ。


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