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二人の魔法使いは永遠に  作者: どぶネズミ
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第27話 開戦

アキトは音虎の部屋へ向いドアの前に立つと、笑顔を作り部屋をノックした。


「音虎チャーン、入るよー」


「はーい」


アキトはドアを開けると笑顔で入室した。すると、音虎はアキトの方へすぐに来て小声で聞いた。


「シマちゃん、なんて言ってました?」


「いやー、心当たりはないって言ってたぞ」


「そう…ですか」


音虎は落ち込んでしまったのかあからさまに悲しい顔をして、それを見たアキトは「これでよかったんだ」と何度も自分に言い聞かせながら言った。


「じゃ、私他にやることあるから」


「はい!ありがとうございました!」


アキトは部屋を出て扉を閉めると、すぐに出口へと駆け足で向かい、道路へと出ると走り出した。


しかし、特に目的地があるようには見えなかったが、何かを探しているのかきょろきょろと首を振りながら無我夢中で走って、暗い路地裏を見つけるとすかさず奥へと入っていき、胃の中の物を嗚咽しながら地面へと垂れ流した。


途中過呼吸になりかけるも嗚咽し、声を殺しながら涙をボロボロと流した。しかし、声を殺していたつもりだったが、抑えきれずに漏れてしまった声がコンクリートの壁を反響していた。


「無理だ、私には見ていられない、どうしろってんだよ」


アキトは涙で濡れた地面を見つめていると、どこから迷い込んだのか、配管を上るカマキリを見つけた。そしてすぐに涙を拭き、カマキリの首をつかみ頭と体を引きちぎって剥がした。


「こいつも私と同じ気持ちだったかもな」


アキトは胴体をその場に捨てると、カマキリの頭をポケットへと入れ島田たちの家へと帰っていった。




 アキトは島田の家が見えると、平常心を何とか取り戻したつもりなのか笑顔を作り、そのまま歩いた。すると、敷地の入り口前に一人の人影が見えアキトは目を凝らしてよく見ると、


白いケープマントを羽織った魔法使いらしき人が立っていた。それに気が付いたアキトは慌ててその人の方まで走っていき、顔がよく見える距離まで近づくと息を切らしながら言った。


「お前は敵か?お前の返答次第では今すぐ四肢をもいで街を引きずり回す」


アキトの顔はまるで般若のような鬼の形相だった。すると、その魔法使いはフードを降ろし顔を見せた。その魔法使いは十五、六の少年で、綺麗なスカイブルーで少し長めの髪の毛を簡単に手で溶かすと、同じ色の目でアキトをしたから上へ舐めるように眺め言った。


「私はガルセーに所属するメシアムと言う者ですので、まぁあなた方の敵ですが、とりあえずゆっくりと話しましょう」


アキトは自分が小ばかにされているようにも感じたが、落ち着いて言った。


「待ってろ。おーい関田、こいつ話をしに来たガルセーの奴だ、島田たちを呼んでくるから見張りを頼む」


そう言うと、他の組員たちもその魔法使いの方を一斉に睨み、関田という組員以外もその魔法使いの所へ行き囲いだした。


「おいお前ら、間違えても殺すなよー、なんせ話し合いがしたいらしいからな」


「姉貴!俺ぁ弟分殺されてんだ、ちょいとそりゃ難しいぜ」


「まぁ待て、話を聞いた後なら自由にしていいから」


「あーいよ」


そしてアキトは家に入り、島田の部屋をノックし、他の組員にも聞こえるように大声で言った。


「ガルセーの奴が来たぞ!お前ら降りてこい!」


その掛け声とともに、他の組員や音虎は慌てて部屋から出てきて、片足を無くした重症の者でさえ松葉づえを使い出てきた。しかし、島田だけはあくびをしながら遅れて部屋から出てきて、島田がそのメシアムという魔法使いと対面した時には、すでに全ての組員たちがそろっていた。


「兄ちゃんよ、俺らは子供だからって手加減できるほどお利口さんやないで」


「せやで、ワシらろくに教育を受けてこうへんかったから、間違えて殴っちまうかもしれん」


組員たちはメシアムを威嚇していたが、微笑みながら組員たちのを見て相槌をうっていた。すると、島田はさっそく声をかけた。


「で、話をしに来たと聞いたが」


「あぁ、貴方が島田徹平と言う人間ですか、お会いでき光栄でございます」


「こちらこそ光栄だよ少年」


「申し遅れました、わたくしガルセーのウインテット・メシアムと申します、以後お見知りおきを」

「あぁありがとう。それで、話とはなんだ少年」


「そうですね、まず確認をさせていただきたいのですが、あの女を受け渡す気はないと言う認識でよろしいでしょうか?」


島田は表情を変えずに首を縦に振った。


「ありがとうございます。我々はあなた方から奇襲攻撃を受けたにもかかわらず、こうしてその女一人引き渡せば平和的解決をすると言っているのですが、その点はお分かりで?」


島田はまた首を縦に振った。


「では徹底抗戦するにあたって最後の忠告を申し上げます。この戦いはあなた方だけの問題ではなく、あなた方のご家族も対象であり、戦いの際に民間人の巻き込みも容赦いたしません。おそらく戦いが伸びることも考えずらく目撃者を極力減らすため、戦いが終了後この街を跡形もなく消す予定です」


これを聞いた組員たちは「人でなし」などとヤジを飛ばしたが、メシアムは気にせずに話を続けた。


「私としては、あの女一人死ねば沢山の命が救われるのですから、さっさと引き渡すのが賢明だと思うのですが」


すると、一人の組員がヤジを飛ばした。


「そんなに俺たちと戦うのが嫌なのか、もしかして自分たちが弱いから脅して強く見せようって魂胆かよ」


組員がそう言うと、メシアムを一発殴ろうと片手を振り上げた次の瞬間だった。


「レジェット」


メシアムの手には杖があり、その杖の先には上半身が消えてなくなった組員がいた。それを見た組員たちはメシアムを殺そうと一斉に襲い掛かったが、メシアムは青い球体のバリアのようなものを貼ったため、近づくことすらできなかった。すると、メシアムは笑顔で言った。


「我々はあなた方のもろい体を心配してやってきたというのに、愚かなものです。これで分かってくれましたか?」


組員たちは怒りを隠せずに罵倒し続けていたが、島田はまた表情を変えずに冷静な声で言った。

「確かに君の言うとおりだ、こっちもこれ以上死人が増えては困る。」


組員たちは、一番それを言ってほしくなかった島田からの発言に驚き、目を見開いて島田を見つめた。


「だが、少し時間をくれないか、今すぐの判断は少し無理がある。今日の夜二七時に渋谷一〇九でどうだ」


組員たちは必死に島田を止めようとしたが、メシアムは気にせず言った。


「さすが優秀な方です、物分かりがよさそうで嬉しいです。では、約束場所にガルセー一同お待ちしております」


メシアムはそう言うと、青い稲妻とともにどこかへと消えてしまった。すると、驚いた表情で島田を見つめる組員たちを見もせず、島田は玄関へと向かった。


そして自室の前に立つと、ちょうど後ろに隠れて話を聞いていた音虎がいたのに気が付き振り向いた。しかし、音虎は唾を飲むと自室へと帰っていった。それを見た島田も自室へ戻ろうとすると、音虎が最初に看病をしていた組員が島田の肩をたたき言った。


「あんた、そんな人間じゃないはずだ」


しかし、島田は露骨に嫌そうな顔をして、自室へと入った。




 島田は調合魔法の瓶を手に取ると、ガムテープで体に張り付けた。すでに胸と腹のあたりに十個は瓶が付いていて、最後に腰につけた瓶を手に取り言った。


「あとはこれを飲んでから」


そう言いながら瓶を開け飲もうとすると、アキトが部屋を突然開けて言った。


「音虎がいなくなった!」


「は」


「やりすぎだ!もう音虎チャンはお前のことを嫌いになんかなれないんだ」


すると、アキトの後ろには他の組員たちの姿があった。


「アキト…言ったのか」


すると、後ろにいた音虎が初めて看病した組員が言った。


「島田さん、全て終わったらワシらアンタをぶん殴らなあかん。なんせワシら腹くくって音虎チャンのために頑張っとったのに、嘘つかれとったんやからな」


「せやで、島田さんそなかっこええことする男ちゃいますやん」


すると他の組員たちはゲラゲラと笑った。それを見ていた島田はリュックを降ろし、アキトに渡して言った。


「それは言いすぎだ」


そしてまた組員たちはゲラゲラと笑った。


「リュックの中に調合魔法の瓶がはいってる、これで最後、これで決着をつける」


すると、アキトが掛け声をかけた。


「前回恩返しをしたが、あの一回で音が返せたとか思ってる馬鹿いねぇよな!?」

すると、おくから「いませぇ~ん」とふざけた声が聞こえた。そして、アキトは大きく息を吸い言った。


「行くぞ!」


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― 新着の感想 ―
[良い点] いよいよ戦いですね。 敵は余裕綽々どころか島田達を敵とすら思っていない感じで不気味ですが、 どうなるか期待です。
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