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二人の魔法使いは永遠に  作者: どぶネズミ
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第21話 それが猫

 空は鉛筆で書いた線を指でこすったような雲で覆われていて、島田は少し不快感を感じながらも自宅へと歩いていた。そして自宅の前にたどり着くと、そこにはアキトと五十人はいるだろう吉川組の組員全員が集まっていた。それに気が付いた島田はアキトの方へと向かい、声をかけた。



「アキト、みんな、ありがとう。」


アキトは笑顔になると、組員を見渡しながら言った。


「お前ら、二人一組でできるだけ広範囲に散らばれ、いいな!」


その掛け声を合図に、アキトたちと島田は街へと散らばった。そして島田は、目撃情報をもとに様々な場所を歩いて回った。しかし、そう簡単に見つかるはずもなく、通行人に声をかけて回るもこれといった情報は得ることができなかった。


すると島田は、以前に音虎がいなくなったときは音虎と初めて出会った高架下にいたことを思い出し、不確かな自信を持ち高架下へと向かった。そしてあたりは暗くなり雨が降り始めた頃、高架下が見え始めた。


すると、高架下へ近づけば近づくほど音虎がいないことが明らかとなっていき、近づけば近づくほど音虎の笑顔や手のぬくもりを思い出し、そのたびに焦りが増していった。ついに高架下へたどり着き、ゴミ袋でできたそのベットが、音虎がいなければただのゴミ袋の山なんだと知ったころには、島田は絶望のどん底に立っていた。


冷静さを保てなくなった島田はゴミ袋の上に座り込み、寄りかかって天井を眺め言った。


「音虎はいつもこれを見ていたのか」


天井には、都会の汚れた空気の混じる結露の雫が作り上げた、無数の何かが描かれていた。これはただの汚れだ。しかし、今の精神状態の島田には、それは汚れなんかには見えなくて、ダヴィンチやピカソが描いた絵よりも美しく見えていた。


「今なら音虎のことがよくわかる気がするよ」


そう言い目を閉じようとしたとき、後ろから聞き覚えのある女性の声がした。


「だから言ったのに」

島田は慌てて振り返ると、そこにはケープマント着た少女が立っていた。島田がその少女に気が付くと、少女はフードを降ろした。その少女は銀髪のポニーテールで、目の色が青かったため日本人ではないことは明らかだった。そしてその少女は笑顔で言った。


「私はブリジット・エモニエ、みんなエミーって呼んでるからエミーでいいよ」


島田はエミーは敵なんじゃないかと思い、すぐに立ち上がり距離を置いて言った。


「何しに来た、セーヌ川で一服してるときに来た奴だろ」


「むしろ逆よ、私は音虎の唯一の理解者だよ。これから音虎のところへ案内しようと思ってたの」


島田は少し怒りながら言ったエミーを見て、まだ疑いつつも言った。


「じゃあ案内してくれるか」


「じゃあって何よ」


エミーはそう言いつつも手招きをして、島田と一緒に歩き出した。すると、エミーは歩きながら話を始めた。


「あんたが音虎のことをどれだけ知ってるか知らないけど、音虎がこの状況になった理由が二つあるの。一つは大魔女に歯向かったこと、そして一番大きいのが二つ目、禁止魔法の幻想魔法を習得してしまったから」


「大魔女ってなんだ」


「ガルセーっていう魔法使いをまとめる組織があるんだけど、一番実力があると認められた魔法使いが、大魔女か大魔法士になることができるの」


「なぜエミーは音虎を助けないんだ、理解者なんだろ」


島田がそう言うとエミーは島田を睨み、音虎の生い立ちについて話を始めた。音虎はごく普通の下級魔法使いの両親のもとに生まれ、ごく普通の女の子として育っていた。しかし、音虎が魔法適性検査を受けると、とてつもない魔力と才能に恵まれた千年に一度の逸材だとわかった。


そしてそれからはメルクという大魔女が音虎を拘束して、強制的に攻撃特化魔法中心の厳しい指導を始めた。その扱いはあまりにひどく音虎は親に助けを求めたが、音虎を助けようとした両親は大魔女に拘束され、音虎への見せしめに目の前で殺害した。


しかし、音虎は悲しむ暇もなくほぼ虐待の指導を受け、幻想魔法を心の拠り所にしていたのを発見されて、処刑される前に逃走した。これが音虎の生い立ちだと知った島田が、大魔女への怒りが湧くのは自然なことだった。そしてエミーは言った。


「これを聞いても私が立ち向かえると思う?」


「すまない、失礼なことを言ったんだな」


「わかりゃあいいよ」


「でも音虎が拘束された今、一刻を争うんじゃないか」


「処刑には儀式があるのよ、二日はかかる」


それでも島田の歩くスピードは上がっていき、そんな島田を見たエミーは島田の足を踏んで言った。


「あんたちょっとは落ち着きなさいよ、みっともないよ」


島田は少し困ったが、強気なエミーに歯向かえるほどの言い訳が見つからずに大人しくすることにした。すると、島田はふと気になることがあり、スマホを触りながらエミーに質問をした。


「なぜ、そんな大魔女様とあろうお方が日本に、大きな組織が日本にあるんだ?」


「日本では魔法使いと聞くと、どれだけの人が幻想を抱くと思う」


「わりとそういったファンタジーはこの国で好まれるな」


「それがすべてよ、この国は魔法使い最後の砦としてガルセーの手の内」


そう言いエミーはとある狭い路地裏へと入っていった。それに続き島田も路地裏へ入り、そのまま進むと、そこには煉瓦の壁に囲まれた不自然に広がる空間が広がっていた。そしてエミーはそのまま進み島田に言った。


「あそこにたった一つだけ壁に蛍光灯が付いているだろう、あそこの真下に三度ショットグラスをたたきつけると」


エミーは、島田が過去に魔法使いを見た建物を指さして言った。


「ゲートが開きあの建物の地下室にたどり着く、そこの部屋を出てすぐ右の廊下の床をぶち抜きな、そこが処刑場よ」


すると、エミーは島田にショットグラスを三つ投げ渡し言った。


「臆病な私を許してくれ」


悲しそうに言うエミーを見た島田は、エミーを真っすぐ見つめ頷いた。エミーは安心したのか三歩後ろへ下がり、ヴィンセントの所でもみた青白い稲妻の裂け目ができ、その中へと消えて行った。すると、後ろで隠れていたアキトたちがぞろぞろと出た。


組員たちはそれぞれ、RPG―7ロケットランチャーやAK47アサルトライフルなどを持っていて、アキトだけは側面にエングレーブが施された上下二連散弾銃を持っていた。そしてアキトはショットガンのバレルを折り、ショットシェルをチャンバーへと装填しながら組員へと声をかけた。


「聞いたかお前ら!やっとシマちゃんに恩返しができるとよぉ!」


その掛け声に合わせて、五十人を超える組員たちは声を上げ互いを鼓舞し始めた。そしてその声のなか、アキトは島田を見て行った。


「勝利した暁には、私の夫になってくれないか?」


島田は半笑いで言った。


「俺は吉川組を継ぎたくないからな」


すると、アキトはいつものように「がははは」と下品に笑い言った。


「そりゃ仕方ないな」


アキトはとても低い声で言った。


「なら、音虎チャンを悲しませるんじゃねぇぞ」


島田は少し考え、凛とした表情を作り言った。


「当たり前だ」


そう言うと、島田はショットグラスを強く握りしめ、壁へと投げつけた。


読んでいただきありがとうございます!

よろしければ、ブクマ評価などなんでもよろしくお願いいたします!

ちなみにですが、来週から投稿時間が水曜日の5時からになりますので、ご注意ください。


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