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ボク達は、思わず笑ってしまった。

「あのさ。一回で正解に辿り着かないクイズの可能性も有るのかな?」

 三井君が、何やら思い付いたみたいだった。


「どういう事?」

 と、四谷さん。


 聞かれた三井君は、少し恥ずかしそうに口を開いた。

「なんというか、道具箱(どうぐばこ)の中に新しいヒントアイテムが入ってるとか、そういうパターンも有るのかなって」


「ああ、有りそうだよね。正解かも」

 ボクは答えながら、自分の道具箱の中身を確かめた。しかし残念ながら、中身はいつも通りのままだった。

 皆も同じように道具箱を調べていたようで、ガッカリしていた。ぬか喜びしてしまった照れくさい顔を、お互いに見せ合った。


「道具箱で正解かと思ったのにな」

 五木君が鼻を掻きながら悔しがっている。

 四谷さんがクスクスと笑った。


 ふと見ると、一条さんもはにかんでいて、また目が合ってしまった。


 一条さんはちょっと慌てたような反応を見せてから、ボクに微笑みかけてくれた。

「道具箱でもないとなると、やっぱり、重箱(じゅうばこ)に重たい物が入ってるとか、そういう答えっぽいよね?」


「結局は出題者次第だけど、ボクがクイズを出すとしたら、多分そういう路線で考える。箱の言葉と箱抜きの言葉で、言葉の意味が変わってくるような箱」


「そんじゃあさ。やっぱり、下駄箱にゲタが入ってるんじゃね?」

 と、五木君。


「それだと、プレゼントとして嬉しくないからなあ。もっと嬉しい答えなんじゃないかな。

 答えに詰まったら見に行っても良いけど……」


「だったら千両箱(せんりょうばこ)か? 嬉しいじゃん」


「その場合、誰が千両もくれるのかっていう話に」


「じゃあパンドラの箱ってやつじゃねーの? 最後に希望が入ってるらしいってアニメで言ってた」


「それも学校にないよ。というかどこにもないよ」


「うーん……」

 ついに五木君のアイディアも尽きたようだ。(うな)り始めてしまった。


跳箱(とびばこ)は学校にあるけど、違うだろうしね」

 四谷さんは、一応といった感じでメモに書き足した。先程から、四谷さんは皆が口に出した箱をリストアップしているのだ。


貯金箱(ちょきんばこ)じゃねえの? たしか、なんかの募金してたような」

 そう聞いたのは、さっきからお(かね)に絡めたくて仕方ない五木君。


「あれはそもそも、募金箱(ぼきんばこ)かな。完全に学校側がやってる事だし、多分関係ないと思うよ」


「ねえ、私書箱(ししょばこ)じゃない? 私書って、秘密の手紙って意味も有るって小説で言ってた。ラブレターか何かなんじゃないかな?」

 四谷さんが言った。


「私書か。それ、かなり怪しいね」

 三井君も、前のめりになって話に乗った。


 五木君はラブレターなんて興味がないようで

「学校に私書箱なくね?」

 と、投げやりに聞いた。


「職員室の前になかったっけ?」


「あれは目安箱(めやすばこ)って言うんじゃないかな?」


「あ、目安箱って書いてあるよね。ダメだね」


「いや、目安って怪しくね?

 俺、思い浮かばなくなったから、目安箱を見て来ようか?」

 そう言って、五木君が立ち上がった。


「皆で確認した方が見逃さないだろうから、見に行く時は皆で見ようよ。ボクか一条さんにしか分からないヒントとか、そういう何かがあるかもしれないし」


「そっか、俺の筆箱は筆になってないもんな。そこんとこ忘れてたわ」

 五木君は座り直した。そしてボクの方をじっと見て、こう言った。

「というか、さっきからお前の考え方すげえよな」


「え?」

 ボクは一瞬、遠回しに文句を言われたのかと思って、身構えた。


 だけど、五木君はすぐに笑顔になってこう言ってくれた。

「救急箱は生徒がいじりにくいとか、下駄箱はゲタが嬉しくないとかさ。いつもと違うっていうか、ビシバシ言ってくれるじゃん。

 俺一人だったら、イチイチ見に行ってすげえ時間無駄にしてると思う」


「そうだよね」

 四谷さんも、五木君の言葉に同調した。

「私も多分見に行くタイプだもん。

 二川君のおかげで、推理がすごい進んでるって感じがするよね。二川君、今日はたくさん喋ってくれるし」


 しまった。一条さんを早く安心させたくて、夢中で考え過ぎた。

 指摘されて初めて、ボクがたくさん口を出している事に気付いた。急激に顔が熱くなってくる。何か、それなりの理由を言わなくては。

「いや、ごめん。見に行くのも悪くないんだけどね。もしかしたら、もう正解の箱が出てるのかもしれないし。

 ただ、今の私書箱と目安箱みたいに、この箱じゃないかって流れの中で、違う箱の話が出る時もあるから。今はまだ、箱の種類について皆で考えた方が効率が良いかなって。

 クイズだとすると、これかなあって答えより、五人全員がこれしかないって感じる答えな気がして」


「その考え方、なんとなく正しい感じするよな。クイズって大体そうじゃん。

 二川の説明を聞いてると、俺ワクワクしてくるんだけど」


「分かる分かる、答えにどんどん近付いてる感じがするよね。気のせいかもしれないけど」


 四谷さんと五木君は共感したのか、なんだか仲良く盛り上がっている。


「あ! なあ四谷。俺、閃いたんだけど。

 もしかしてアレじゃね? 最後に『君達が協力してクイズを解いた友情が、何よりの宝箱(たからばこ)だ!』って言ってくるやつじゃねーの?」


「何よりの宝物なら分かるけど、宝箱とは言わなくない?」


「うわ、正解を思い付いたと思ったら全然違った。すげー恥ずかしい」


 四谷さんの鋭い指摘に、五木君は顔を手で隠した。


 思わず皆で笑ってしまった。

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