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17/21

ボクの好きな人の親友は、とても良い人だった。

 ボクは、猫のお墓参りを引き受けた時から、一つ心配していた事があった。行きは一条さんが一緒だから良いけど、問題は帰り道だ。

 八戸さんの家からボクの家まで、一人で歩く事になるのだろうか?


 ボクは方向音痴で、知らない道を一人で帰れる自信がない。

 でもそれを告白したら、一条さんは連れて行ってくれないかもしれない。だから秘密にしていた。


 既に全然来た事のない場所にいる……かなり不安だ。

「八戸さんの家まで、残りどれくらいなの?」


「えーっと……あのお弁当屋さんのトコロまで行けば、半分くらい?」


 一条さんの指先を見ると、カラフルな旗が店先に並んでいた。

「へえ。『ハンバーグ弁当四百円』だって」

 安いなあ。それに、付け合わせのポテトが美味しそうだ。


「アレ、美味しそうだよね。

 私、皮付きのポテトが好きだから、あの旗を見るといつもお腹空いちゃって……」

 一条さんが、ちょっと恥ずかしそうに微笑む。


「じゃあ、帰りなんてお腹ペコペコ?」


「ううん。八戸さんの家で、お菓子を食べさせてもらえるから」


「ああ、そうだったね」

 ボクは、モグモグと嬉しそうにお菓子を食べる一条さんを想像して、思わず笑った。

「でも、さっき聞いた時にはビックリしたなあ。

 一条さんが、毎回お菓子を食べて帰ってるなんて」


「だって、本当に気付かなかったんだもん。

 お姉さんの家の中で食べるから、自分の家で食べてるみたいな感じで」


「分かるけどさあ……」


「もう言わないで。すごい恥ずかしい」

 一条さんが、顔を手で半分隠した。


 わあ、マズイぞ。嫌われてしまう。

 違う話題を……そうだ、お姉さんの話をしよう。

「それにしても、あのお姉さんも人が良いよね。

 わざわざお菓子を作ってくれるなんて」


「お姉さん良い人なんだけど、ちょっと勘違いしてるんだよね……」

 と、一条さんは複雑そうに思い出し笑い。


「勘違い?」


「私とお姉さんの共通する明るい話題って、二川君の話くらいしかなくて。

 だから『あの時の男の子とは、学校でも仲が良いの?』『いえ、あの日まではあんまり話した事がなかったんですよ』『そうなんだ。すごく優しかったね』とか、話してたの」


「うん」


「そしたらお姉さん、私達が学校でも仲良しだと思ったのか、次は二川君と一緒においでよって言い出しちゃって。

 私、二川君に迷惑だから頼めないですって断ったんだけど、男の子の好きそうなお菓子を作って待ってるって。お菓子が余ったら困るから絶対に連れて来てねって、すごい念押しされちゃって。

 それで困って、六花に相談してたの。そしたら六花が暴走して、あんなクイズを作っちゃって」


「ああ、そういう理由だったんだね」

 なるほどなあ、だからあんなに考えて……。


「バカだよねえ、六花。

 私への手紙の二枚目には『二川君と話せた? もし仲良くなれたら、お墓参りに誘っちゃいなよ。二川君は優しいから平気だよ。絶対に来てくれるよ』って、勝手に決めつけて書いてあった」

 一条さんは、ちょっと怒っているようにも見えた。

「……だけど、分からないじゃんね?」


 色々な思いが頭の中でケンカして、すぐに返事が出来なかった。

「……良い友達だね」

 上手く言えないけど、まずはそう思った。


「うん。

 ……たまに、思いっきり抱き締めてあげたくなっちゃう。すぐ偉そうにするから、言わないけどね」

 そう言って笑う一条さんは、とても素敵で爽やかで。


 隣を歩ける事を幸せに感じた。

【作者からのお知らせ】


更新が遅くなってすみません。

去年手術(詳細は活動報告に書いてます)した傷口から血が出てきてしまい、高熱でしばらく何も出来ませんでした。

また、今後の予定として、今月は複数回の大きな検査が有り、三月に一回目の再手術が有ります。


次回以降の更新も遅くなるかもしれません。ブクマとかして、たまに覗いて見てもらえたら嬉しいです。

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