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Freedom Birth 戦えませんがなんとかなるみたいです  作者: なろといち
ヴェコン編Ⅲ
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8.採掘開始

 坑道をしばらく進むと、ショウたちは開けた空間へと出た。

 広さはサッカーコート一面分ほどだろうか。

 ドーム型の競技場のような高い天井、加えて壁なども淡く光り輝いているため、暗闇を感じることは無い。

 そういう鉱石を含んでいるのか、ヒカリゴケでも生えているのか、ショウには詳しいことは分からなかったがゲームではこうなのだろうと割り切った。

 それでも薄暗さは拭えなかったので、ランタンはそのまま持っていたリリィは一度空間を見渡すようにした後、壁際に沿って移動を始めた。

 遠目でも採掘ポイントはキラキラ光っていて視認しやすかったが、ここはモンスターも出てくるエリアらしい。

 レベルも低く、対処しやすいとリリィが言っていたが、警戒するに越したことは無いだろう。

 見た限りだとショウたちの他に先客は居ないようだった。


「ここで掘れる物は荒野とそれほど変わりがありませんから。もうひとつランクの高い所へ行くと変わってくるのですが、最初はこちらの方が良いでしょう」


「確かに。今まで外での活動でしたからね。光源の確保や立ち回りなんかも今回で勉強しておかないと」


「ふふっ、ショウ様でしたらすぐに慣れますよ」


 世辞とも取れる言葉を受け取った後、ショウは入り口から一番近い採掘ポイントへ辿り着く。

 そこには荒野で見つけたポイントと同じく、光り輝く透明な水晶が地面から生えていた。


「周囲にモンスターの気配は……大丈夫そうですね」


「それじゃ、やってみます」


 ショウもリリィに倣い辺りを見回してみる。

 そして彼女の言葉を聞いてから、ストレージボックスからつるはしを取り出した。

 軽く呼吸を整え、柄を握り直す。

 大きく振りかぶり、力強く採掘ポイントへつるを一回打ち付けた。


 ――カーンッ!


 空洞内ということもあり荒野には無かった反響音が鳴り響く中、ショウは採掘ポイントを離れてリリィの元まで戻った。

 その事に、なにか問題でもあったのか、と思ってしまったリリィが首を傾げる。


「ショウ様? どうかなされましたか?」


「え?」


「えっ……いえ、採掘の方は?」


「終わりましたけど?」


 ショウも同じように首を傾げてきたのでリリィは不思議に思い、再び採掘ポイントへ目を向けた。

 するとそこには水晶が光の粒となって、天井へ昇って消滅する光景が広がっていた。


「い、一回の振りで終わったのですか!? ……えっ、まさか!」


「あー、えっと……このつるはし、俺が作ったモノなんで」


 その言葉と一緒に手にしていた片つるはしを見せられて、リリィは納得せざるを得なかった。


「な、なるほど、ショウ様お手製でしたか……いえ、それでも一撃とは」


「あははっ、ところで、採掘ポイントってこのままで良いんですか?」


「えっ、あっ、はい。時間が経てばまた同じ場所に水晶が現れますので、放っておいて大丈夫です。他の方もいらっしゃらないようなので、ここのポイントは一通り回りましょうか」


「お願いします。できればレアな物も出てくれれば有難いんですがね」


「希望を持つのは良い事ですが、焦らず行きましょう。なにせ先ほど言ったふたつの鉱石は熟練のプレイヤーの方でも滅多に手に入れることのできない物と聞いていますから」


「……そうですね! あまり期待ばかり大きく持っても仕方ないですからね!」


「? では、次のポイントに向かいましょう」


 再び前を歩き始めたリリィの背中を見て、ショウはもう一度インベントリを確認する。

 そこには、『金絲鉱』の文字があった。

 荒野で手に入れていた物はストレージボックスに確かに入っている。

 つまりは二つ目。

 ショウはこっそりと今掘り当てた金絲鉱もストレージボックスにしまうのだった。


 その後、いくつかの採掘ポイントでつるはしを振る作業を続けていると、一風変わった水晶を見つけた。

 他の所は透明な水晶であったが、今回のは血のように赤くまるでルビーのような水晶だった。

 ショウはつるはしを振る前にそれを指差して――


「ここは他のと色が違うみたいですけど……」


「それは高品質なポイントですね。レア水晶(ポイント)と呼ばれています」


「へぇ……レアなんですか?」


「ここではそんなには。これよりさらに珍しい金に光る水晶があるのですが、そちらは高ランクのエリアにしか出現しませんし、このエリアでは良くても銀鉱石くらいかと」


「銀ですか……金は出ないんですかね?」


「極稀に出てくることはあるみたいですが、そちらも望みは薄いかと」


 銀鉱石どころか、金鉱石も今までの採掘で出なかったことなど『無かった』。

 それぞれ既に二桁ほどの量が出ているとはとても言い出せず、ショウは鼻の頭を掻く。

 そういうものだと思っていた彼は、リリィの言葉で認識を改めなければと、表情を固くするのだった。


「ここで丁度折り返しですから、一周回っても早くに街へ戻れますね。一回で採掘を終えられる恩恵は凄いです」


「そ、そうですね……あははっ」


 固い笑みのまま、ショウは赤い採掘ポイントへ近づき、つるはしを振るう。

 カーンッと響き渡る音の反響に耳を澄ませていると、その音とは違う聞いたことが無い風切り音が上方から聞こえて来た。

 それにいち早く気付いたリリィが、腰に携えていたスクラマサクス『アーベント』を抜刀して声を上げる。


「ショウ様、気を付けてください! 『ビッグコファーシュ』です!」


「モ、モンスター!?」

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