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Freedom Birth 戦えませんがなんとかなるみたいです  作者: なろといち
ヴェコン編Ⅱ
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6.全員、合流

「ショウさん!」


「アニキ!」


 頼んだ飲み物がそろそろ無くなる頃、ギルドの出入り口から元気な声が聞こえてきた。

 ショウは声の方へ振り向き、席を立ちながら手を上げる。

 それを確認するまでも無く、二つの小柄な人影が彼に駆け寄ってきた。


「ショウさん、よくご無事で。心配しました」


「あははっ、無事、とは言い難いけどね。なんとか」


「アニキ、長旅お疲れ様です」


「いやいや、俺は馬に乗ってただけだし。ルナールも、無事で良かったよ」


 そう言ってショウは二人を労うため、頭を撫でた。

 セラスとルナールはお互いに顔を見合わせ、照れ隠しに微笑む。

 その光景を見ていたケンが、テーブルを叩いた。


「おぉい、ショウ! お前、俺の目の前で! ちくしょう、本調子なら飛び掛かって喉を食いちぎってやるのに!」


 恐ろしい事を口にした親友に呆れながら、ショウは撫でるのをやめて手を離す。

 少し名残惜しそうにしている二人の後ろに、つばの広い帽子が見えたので、ショウはセラスに訊く。


「セラス、その後ろの子がもしかして……」


「あっ、そうです。彼女が私たちを助けてくれた、シャルです」


「……シャルム……カンターメ」


「ショウ・ラクーンだ、よろしくシャルム。パーティーメンバーの窮地を救ってくれて、ありがとう」


「…………」


 肩を窄めて身体を小さくしたシャルムが、俯いて押し黙る。

 何か不味い事を言ったのだろうか、とセラスとルナールに顔を向けるショウ。


「あー、実はアニキ……」


「えっと、詳しく説明します」


 その後、ケンの隣に『座らされた』セラスが、向かいの席に座るショウへ昨日シャルムから聞いた話を伝えた。

 自分たちをシムだと思って報酬を期待したこと、実はあのバジリスクは彼女が取りこぼした一体であること、ソロでクエストを回しお金を稼いでいる理由……等々。

 セラスが話し終える頃にはケンとアイリもある程度回復し、身体を起こして聞いていた。


「なるほどね……あなたが噂の魔術師ちゃんか」


 アイリが頬杖をついて、シャルムを見る。

 彼女の言葉にショウは首を傾げた。


「噂って?」


「大きい街ですからね。クランの数も種類も結構あるんですけど、その中で頑なにソロで冒険をしてると、ある意味目立っちゃうんですよ」


「クラン同士の繋がりってのもあるからな。狩場で目立つ奴を見つけたらその間で噂になっちまうってことだ」


「確か、あなたは――『幽爆(ゆうばく)の魔女』、だったかしら?」


「……」


 居心地悪そうに、シャルムはその名前を聞いて一度席を座り直す。

 噂話というものに別段興味の無かったショウは、その話題から本来の話へと切り替えていく。

 尾ひれが付いた他人のなんて、どうせ大したことの無い与太話に違いない。


「事情はどうあれ、二人を救ってくれたことには違い無いんだ。是非ともお礼をしたいと思うんだけど……」


「……昨日の、あれは……ちょっと」


「? ……やっぱりあれじゃ足りなかった?」


「いえ、実はそういう事じゃないみたいで」


 不思議に思ったショウはセラスに顔を向けたが、彼女は苦笑いを浮かべてインベントリから取り出した金絲鉱をテーブルに置いた。

 それを見たケンが、白い目でショウを見る。


「お前、お礼に石をやるって……ガキの使いじゃないんだからよ」


「んー、やっぱりそうか」


「そりゃそうだろ。そんじょそこらにある石なんざもらっても嬉しくないだろうって」


「貴重そうな感じだったから売ればお金くらいになるかと思ったんだが……やっぱり、俺が何か作って贈った方が良いよな」


「お前の場合、安売りするとそれこそ悪目立ちしそうだけどな。今回の場合は致し方ないだろう」


「あっ! 俺たちがシャルムを手伝ってお金を稼ぐっていうのはどうだ?」


「お前はとりあえず、ここら辺のモンスター対策しないとまたすぐ神殿送りだぞ。戦闘能力ゼロってこと忘れてるだろ」


「確かに……バジリスクを数人で倒すとなると作戦や装備も揃える必要があるだろうし」


「最大の敵はバジリスクだが、他のモンスターだって手強いのは居る。まぁ、とりあえずは一通り試してみる事からだな」


「そうか……あっ、悪かったねシャルム。お礼の件、しっかりと考えるから。何か君から希望があればそれでも良いけど」


「……えっ、いえ……あの」


「しっかし、未加工の石をねぇ。こんなの欲しがるのなんて鉱石マニアくらい――って、金絲鉱じゃねぇか!!」


 テーブルに置かれていた金絲鉱を片手で拾い上げて眺めたケンが、驚きのあまりそれをショウに向かって全力投球してしまう。

 胸にそれを食らったショウは、ぐふっ! と息を漏らし、席から崩れ落ちる。


「ア、アニキ! 大丈夫っすか!?」


「ショウさん!? もう、お兄ちゃん! いったい何やってるの!」


「い、いやだってよ……こいつ、金絲鉱を――」


「暴力するなんて、サイテー!」


 ――ゴンッ!


「あー、なんか本気で頭痛がしてきたんだけど! これ以上悩みの種を増やすのやめてください、先輩!」


 セラスは叫びながら、(ネメスィ)をケンの脳天に食らわせた後、ショウに駆け寄ってルナールと共に彼を介抱する。

 妹の攻撃をまともに受けて、ケンは泡を吹きながら気絶した。

 親友の投球を受けて、ショウは苦しそうにのた打ち回っている。

 アイリは頭を抱えてテーブルに突っ伏してしまう。

 そんな光景をシャルムは、呆気に取られて眺めるしかできなかたのだった。

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