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Freedom Birth 戦えませんがなんとかなるみたいです  作者: なろといち
ヴェコン編Ⅰ
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10.リスポーン

 優雅なBGMを聞きながら、ショウは『この場所』に来てからずっと目の前に表示されているホログラムのカウントダウンとにらめっこしていた。


「……あと三分。十分っていうのも意外と長いもんだな」


 ここは、ゲーム内で体力が尽きたプレイヤーが神殿送りになるまで待機する空間。

 いわばリスポーン待機所と言った所で、ここで強制的に十分間の拘束をされる。

 その間にログアウトはできるが、ゲーム内チャットや通話はできない。

 完全な遮断された空間だ。


「セラスたち、大丈夫かな……一応パールも含めた馬車はパーティー共有にしてあるから、俺が居なくなっても消えないはずだけど」


 プレイヤーが神殿送りになると、その者の所持品は一定時間残る。

 再び訪れて中身を回収するか、生き残ったパーティーメンバーが持ち帰ってきてくれていれば失われないが、時間が過ぎると消滅してしまう。

 その時、自分の持ち物をパーティー共有に設定しておけば、誰か一人でも生き残っているとそれは消えることは無い。

 あらかじめ、ショウはその設定を馬車にしていた。


「足が無くなって走って逃げているってことは無いだろうけど……うぅ、もどかしいな」


 目の前の数字がゼロになると――


 『最後に訪れた街の神殿で復活できます。復活しますか? 【はい】【いいえ】』


 ホログラムの内容が代わり、二つのボタンが浮かび上がるように表示された。

 ショウは迷うことなく【はい】のボタンを押す。

 するとBGMが鳴り止み、ピロンッと音が響く。

 身体が浮くような浮遊感と、眩い光に包まれてショウは初のリスポーンを遂げた。


「――っ、んー?」


 光が徐々に弱くなり、目を開けられるくらいになると、ショウは薄目で状況を確認する。

 教会と言っても祭壇や講壇があるわけでも無く、殺風景な円形の舞台、その中心にショウは立っていた。

 おあつらえ向きに天井から光が差し込んでいて神聖な雰囲気は出ているが、他にあるものと言えば外へ続く扉とそこまで伸びる絨毯、並んでいる長椅子くらいだ。

 ショウはその場に居ることに抵抗を覚えて、とりあえず教会の外へ出る。

 そこは――


「ここは、エーアシュタットの……噴水広場の近くか?」


 最後に訪れた街ということで、ショウは始まりの街(エーアシュタット)にリスポーンした。

 一度ヴェコンへ入ってからであればそちらに送られるのだが、彼が光になったのはそれを成し遂げる前だった。

 失敗したな、と心の中で後悔の念を抱きつつ、ショウはセラスに連絡を取る為メニュー画面を開く。

 するとそこには既にセラスからメッセージが届いていた。


 『ショウさん、無事にリスポーンはできたでしょうか? 私たちはなんとか無事です。今助けてもらった冒険者の方と一緒にヴェコンへ向かっています。また連絡が取れるようになったら一報ください』


 メッセージを確認して、すぐにショウはセラスへ通話を発信する。

 何回かの呼び出し音の後、通話が開始された画面が表示された。


『はい、もしも――』


「セラス!? 大丈夫だったか? もう街に着いたのか? 助けてもらった冒険者って、いったいどうなったんだ!?」


『あっ、いえ、あの。ショウさん、落ち着いてください。私もルナールもヴェコンに無事着きましたから』


「そ、そうか……良かった。ごめん、俺、大見得切ったくせに役に立たなくて……」


『そんなことないです! ルナールや他のシムたちを気遣ったショウさんは正しいと思います!」


「あははっ、ありがとう。でもその結果がこんな体たらくじゃあね」


『……今度からは自分だけ無茶をするようなことはしないで下さいね。心配ですから」


「分かった。ありがとう、セラス」


『パーティーメンバーですから……ショウさんは今はエーアシュタットに居るんですよね? お兄ちゃんと一度合流した後迎えに行きますから、待っていてください』


「いや、その事なんだけど――」


 ショウは鼻の頭を掻きながら、明るい調子で言葉を続ける。


「俺は自分でどうにかそっちに行くから、セラスとルナールはヴェコンに居てくれ」


『え? どうしてですか? せっかく馬車があるのに』


「セラスたちには先にヴェコンの冒険者ギルドや周りのモンスターの情報なんかを収集していて欲しいんだ。今回のような時の対処法なんかも含めてね」


『でも……』


「それにルナールはそこでしばらく居を構えなくちゃならないし、準備も必要だろ? 大丈夫、明日には合流できるようにするから」


『……分かりました。気を付けてきてくださいね』


「うん――あっ、それと」


『はい?』


「助けてもらった冒険者って人はまだ一緒に居るのかな?」


『はい。一緒ですけど』


「じゃあ、お礼になるか分からないけど、ルナールが持っている『金絲鉱』をその人に渡して欲しいんだけど」


『い、良いんですか?』


「もちろん。文字通り、命の恩人だからね」


『……分かりました。では、そう伝えておきます』


「頼む。俺もそっちに行ったら改めてお礼を言うから」


『はい。では、待ってますね』


 そこで通話を終了したショウは、とりあえず胸を撫で下ろす。


「さて、今度は本当に自分だけでヴェコンまで行かないとな……リリィさんに相談してみるか」


 ショウは何か足になるものがないかリリィに訊くため、冒険者ギルドへ足を進めるのだった。

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