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Freedom Birth 戦えませんがなんとかなるみたいです  作者: なろといち
ヴェコン編Ⅰ
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7.旅立ち

 数日が過ぎて――


『またショウの奴、とんでもないもん作っちまったんだな』


「そうなの。でもこれで移動が大分楽になるから。それに、パールちゃんも凄いんだよ」


『ははっ、そうか。なんにしてもお前たちに足ができて安心したぜ。これからこっちに向かうんだろ?』


「うん、そう。今ルナールの荷物を積んでいるところ。終わり次第出発するから」


『荒野に出てくるモンスターはそこいらの奴より強いから、気を付けて来いよ』


「はーい。また近くなったら連絡するね、それじゃ」


 ケンとの通話を終えたセラスが、もたれ掛かっていた民家の壁から離れた。

 視線の先に、荷台に居るショウへ荷袋を渡すルナールを捉える。

 セラスは小走りで馬車へ近づいて行き、二人に謝った。


「すいません。お兄ちゃんとの通話、終わりました。準備の手伝いもできなくてごめんね、ルナール」


「どうってことないっすよ。あたいの荷物って言ってもそんな大した量でも無いっすから」


「それは言えてる。本当にこれだけなのかい?」


「はいっす。こっちに移り住んでそんなに時間も経ってないし、それまでは放浪に近い旅をしていたっすから」


 先程ショウに手渡していた手荷物と、すでに積み込まれていたいくつかの袋を肩越しに見たショウが、納得したように肩を竦めた。


「遠征用に買った食材なんかと合わせたって大分余裕があるな。まぁ、窮屈よりは良いだろう」


「そうっすよ。んじゃ、そろそろ出発しましょう!」


 頷いて、意気揚々と荷台に飛び乗るルナール。

 それに続くようにセラスは少し不慣れな様子でよじ登る。

 荷台に乗っていたショウはそのまま御者台に出て、手綱を握った。


「随分あっさりしてるけど、今まで住んでたところに愛着とか無いの?」


 荷台に設置された座席に並んで座っていたセラスが、ルナールに訊く。

 質問されたルナールは笑顔で手を振って――


「まったく無いって訳じゃ無いっすけど、これが初めてでもないっすから。家にもご近所にも挨拶はちゃんと済ませてあるんで、あとは真っ直ぐ前を見て歩いて行くだけっす!」


「そうなんだね。私はまだ実家暮らしだから、そういう感覚よく分からなくて」


「あたいみたいにブラブラと根無し草になっちゃったら、アニキやケンさんが心労で倒れちゃうっすよ、多分」


「もう、ルナールったら。それ自分で言う事じゃないでしょ」


「あははっ、そうっすかね」


 二人の他愛のない会話を背中で聞いていたショウが、振り向いて出発の合図をする。


「それじゃ、岩と砂の街ヴェコンへ出発するよ!」


 それぞれに返事を返したパーティーメンバーたちを乗せて、ショウたちはエーアシュタットを旅立つのだった。


 ――


 エーアシュタットの外壁に設けられた南門を出て、そこから延びる街道を馬車は行く。

 日頃ショウたちがクエストで足を運ぶ草原や林を過ぎて、分かれ道に差し掛かる。

 看板に従い、ヴェコン方面へ舵を取ると、徐々に周りの景色は様変わりをし始めた。


「ここから先は馴染みが無いな。どんどん草木が減って来たね」


「空気が変わったというか、乾燥し始めたっすね。これから荒野になるっすから」


「こんなに急に変わるものなのね。これから向かうヴェコンって周りは全部荒地なの?」


「そうっすね。それとほど近いところに砂漠があるっす。岩と砂の街って言うくらいっすからね、殺風景ではあるっすよ」


「へぇ、街の規模的にはどうなんだろ?」


「大きいっすよ。陸路の流通の要なんで。街には『あれ』もあるんで、拠点にしているプレイヤーも多いって聞くっすね」


「あれ?」


 荷台から身を乗り出し、ショウと並んで話しをしていたセラスが首を傾げる。

 同じ格好で話しに加わっていたルナールが人差し指を立てて、答えた。


「トーナメント戦から総当たり戦、個人戦にタイトルマッチまで、戦いのエンターテイメント『闘技場』っす」


「戦いの……エンターテイメント?」


「まぁ、平たく言えばプレイヤー同士の対戦会場っすね。ペナルティ無しにPVPができる数少ない場所って聞いたっすよ」


「わ、私たちには関係なさそうな場所ね」


 ルナールの言葉を聞いて、セラスの顔が青ざめる。

 余程壮絶な戦いを想像したのだろう。

 しかし、彼女を見たショウとルナールは一度顔を見合わせて――


「アネゴなら良い線いくと思うっす」


「セラスなら一度挑戦してみるのも良いかもしれないよ」


「そ、そんなふたりして! もう、知りません!」


 頬を膨らませて不機嫌を体現したセラスは、荷台の座席に戻ってしまう。

 それに苦笑いで謝罪を述べた二人が、再び顔を見合わせて笑い合うのだった

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