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Freedom Birth 戦えませんがなんとかなるみたいです  作者: なろといち
第四章 戦えませんがなんとかなるみたいです
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5.ルナールとパール

 ログインを完了したショウがまずとった行動は、メニュー画面を開いてフレンドリストを確認する事だった。

 現在、ショウがフレンド登録している人物は三人。

 ケンとルナールはアクティブを示す文字で名前が書かれていたが、セラスだけは灰色で記されていた。

 どうやらまだログインしていないようだ。

 ショウはまずメッセージを送り、ケンとルナールにログインしたことを知らせる。

 続けてルナールに現在の状況を聞くため合流したい、と送った。


『了解っす! すぐにそっちに向かうっす』


 間髪入れずに帰って来た返事を確認した後、ショウはストレージボックスからパールを出して、街道が見えるくらいの位置で待機することにした。

 何かしようにも、ふたりから止められている手前何もできないでいたショウは、草を食べ始めたパールをぼうっと眺め入る。

 しばらく惚けていたショウだったが、こんな状態でも自分にできることを思案しながらジョブスキルの画面を開いた。


「武器の名前を変えることってできるのかな? それっぽいスキルは、『刻印』……これかな」


 スキルのヘルプには手順しか書いておらず詳しい説明は省かれていたのだが、記述通りならこのスキルで銘を打てるようだった。

 試してみたいと考えたが、どうやらこのスキルを使用するには『ろう石』というアイテムが必要らしく、それについての入手方法などは例のごとく記されていない。

 名前の候補だけでも考えておいてアイテムはケンにでも融通してもらおうかと考えていた時、遠くからショウを呼ぶ声が聞こえた。


「アニキー! お待たせしましたー!」


 声の方へショウが顔を向けると、右手と一緒に背後で左右に揺れている尻尾が見えた。

 彼が手を振り返すと、ルナールがこちらに向かって勢いよく駆けだす。

 ショウの元まで来たルナールは彼の顔を覗き込むように笑って――


「アニキ、お疲れ様っす! 言われた通り、スケアクロウの動向を監視してたっすよ」


「ご苦労様、ルナール。危険は無かったかい?」


「へへん。任せてくださいっす! あたいこう見えても偵察するのとか得意なんすよ」


 それは身体が小さいから物陰に隠れてもバレないからでは? と思ったが、ショウはそれを心の内にしまっておいた。


「そうなのか、それは頼もしいな」


「あたいでも役に立つ所を――ひゃっ!?」


『モォー』


 胸を張って自慢げなルナールは、背中から伝わったパールの頭の感触に数センチ飛び上がり、向かい合っていたショウに抱き着く形になってしまう。

 もしこの場にセラスが居たならばまたひと騒動起こりそうな事態だが、とりあえずはショウの胸で頬を赤らめたルナールが尻尾を振るだけだった。


「おっと――大丈夫?」


「ひゃ、ひゃい。す、すすいません、後ろからいきなり何か……って、牛!?」


『モォー』


 ショウの胸の中で振り向いたルナールが、パールと目が合って再び飛び跳ねた。

 パールの鳴き声に驚いた彼女は慌ててショウの背中に回り、距離を取る。


「な、何でこんなところに牛が!?」


「あー、そういえばルナールは初対面だったね。こいつは俺のペットのパールって言うんだ」


「ペ……ット? え、アニキってこの世界に来たばかりっすよね?」


「まぁ、幸運にも貰える機会があってね。一応俺のパートナーみたいなものだから、仲良くしてくれると嬉しいんだけど」


「そ、そういうことでしたら……あたいは全然――」


『モォー』


「ひゃっ!」


 ショウの背中から顔だけを出して、パールを見るルナール。

 彼女に頭を撫でて欲しそうに近づいたパールだったが、ルナールは短い悲鳴を上げ、さらに一歩後ずさってしまう。

 怯えたような対応を見たショウは――


「もしかして、牛は苦手なのかい?」


「に、苦手という訳では無いっすけど、あまり馴染みが無くて……」


「あははっ、噛んだりはしないから、大丈夫だよ。撫でてごらん」


「は、はいっす……」


 恐る恐る近づいていくルナールの手が、パールの頭に重なる。


「は、ははは……こ、こうしてみるとなかなか可愛いっすね」


「いやいや、腰引けてるけど。顔も引きつってるし」


「そ、そんなことないっすよぉ」


 そう言いながらルナールは撫でるのをやめて、再びショウの背後へと距離を取る。

 残されたパールは、あまり満足がいく撫でさすりでは無かったのか、軽く頭を振っていた。

 ショウが肩越しにルナールを見る。


「そんなに怖がらなくても平気だって」


「そ、そうは言っても……こう大きいと貫禄というか威圧感が」


「えっ、大きい?」


 ルナールから視線を動かしたショウが、近くで草を食べ始めたパールの身体を見てみる。

 言われてみれば、初めて会った時より全体的に二回りほど成長しているように感じた。

 いつのまにこんなに大きくなったのだろう……いつも近くで見ていた為気付かなかったのか、とショウは鼻の頭を掻く。

 最早ルナールやセラスくらいの子なら背中に乗せても何ら問題ない立派な体格。

 これは連れて歩く際は注意しないといけないな、とショウは心に留めておくことにした。


「……まぁ、そのうち慣れると思うしそれまでは無理しなくて良いから」


「……うっす」


 とりあえずパールにはそのまま食事を続けさせ、ルナールからの報告を聞くために少し離れた所へ二人は移動するのだった。

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