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Freedom Birth 戦えませんがなんとかなるみたいです  作者: なろといち
第四章 戦えませんがなんとかなるみたいです
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4.作戦会議

 気を取り直してもらうため匠太が注文したケーキを平らげた愛が、改めて姿勢を正す。

 飲み物は前とは違うアイスティーを頼み、すでに半分ほど減らしていた。


「だ、大丈夫です、落ち着いてきました。話の腰を折ってしまってすいませんでした」


「大分逸れちまったな。勧誘の件は気にしなくて良い。こっちでよく言い聞かせておく」


「あ、ああ。そうしてもらえると助かる。正直今はそういうことを考えてる余裕が無いからさ」


「すいません……うぅ、でも造形師かぁ」


「……愛ぃ?」


「な、なんでもないです。はい、私は何も言ってません」


「ははっ、仲が良いようで羨ましいよ」


 ふたりのやりとりに笑みをこぼした匠太が、自分の飲み物に口をつける。

 そんな彼に向き直った健が話を戻す。


「それで、匠太はこれからどう動くつもりなんだ?」


「そこなんだけど、俺の棍についてはセラスの協力を借りて対処しようと思ってる」


「……兄としては妹を危険な事には巻き込んで欲しくないんだが、あいつなら責任を感じて手を貸すだろうな」


「具体的にはどうするんですか?」


「うん、これから俺のプランを話すから、経験豊富なプレイヤーとしてふたりの意見を聞きたいんだ。成功率を上げるためにね」


 それぞれで頷いた健と愛を見て、匠太は自分の考えたプランを語り出した。

 行程自体はそんなに複雑なモノでは無かった為、すぐに終わった彼の言葉にふたりが顔を見合わせる。


「そいつは、できないこともないが」


「なかなか難しそうではありますね。私たちも意図してやった事は無いので成功するかどうかは……」


「そうか……どうすればリスクを減らせるかな?」


「まず成功の確立を上げるという意味でも今セラスが持っている棍の強化は必要だろう」


「それもですけど、その子の技量に重きを置く作戦です。そちらもどうにかしないといけませんね」


「だな。匠太、作成したモノを後から強化したりなんていうのはできるか?」


「うーん。今までは『新規作成』をして、その使用素材のところで既存の武器を使うことくらいしかやったことないけど……」


「それが可能なら付けておいた方が良い特殊効果がいくつかある。付け方は俺の方で調べてみるか」


「では、私はステータス向上の効果があるアクセサリーを探してみます。設計図と素材があれば萩村先輩が作れますもんね」


「それは、うん。今のところ武器と盾しか作ってないけど、作成可能リストにアクセサリーってタブがあったからいけると思う」


「さすが造形師! どんなモノを作ってくれるのか、楽しみです!」


「愛、お前のじゃないからな?」


「わ、分かってます。これはその……単純な好奇心です」


「ありがとう。ふたりにはいずれちゃんとしたものを作ってお礼するよ」


「本当ですか!? やった!」


 小さくガッツポーズをする愛と、それを肩を竦めながら見る健。

 そんなふたりと作戦の詳細を詰めていきながら、匠太の休日は過ぎていくのだった。


 ――


 ふたりとの作戦会議を終え、お互いにやるべきことを確認した後、リアルでは解散となった。

 それぞれ必要なモノを持ち寄ってまたゲーム内で再集合という話運びになり、匠太は日用品と食料の買い物を済まして帰路につく。

 買い物袋を手に持ち、アパートの自室に帰って来たのはまだ夕方にもならない程の日の高い時間だった。

 匠太は買って来た物を冷蔵庫へ納めたり、シャンプーやリンスを詰め替えた後、ひと息つくためにベッドを背に座る。

 そのままインカムからネットへアクセスして、フリーダムバースの攻略サイトをチェックする匠太。

 ジョブの特徴、おススメな立ち回りなどを解説するページに飛び、そこで造形師の項目を見てみる。


「なるほど……やっぱり健の話の通り、名前だけで他のジョブみたいな解説や考察は全く無いんだな」


 有志による攻略情報を集めたサイトのため、情報に偏りがあり、特にレアなジョブについては手付かずの状態だった。

 健からの前情報でこのことは知っていたが、では彼はどうやって造形師の作成について調べるつもりなのだろう?

 他のサイトも似たようなもので、肝心な所は白紙だったため、匠太の疑問は一層深まるばかりだった。

 もしかしたらゲーム内の繋がりで独自に情報収集ができるのかも、と思い至り、ホログラムを閉じる。

 ベッドの上に胡坐をかいて座り直し、ゲームデバイスを手に匠太は苦笑いを浮かべた。


「自分が頼んだ手前、向こうからの注文も守らないとな」


 健たちと三人で相談中、二人から匠太へ出された注文を思い出す。

 街には近づかない事。自分たちが合流するまで大人しくしている事。

 そしてもうひとつはむやみやたらに造形師のスキルを使わない事、つまりは作成の自重を言われた。

 匠太はゲームにログインしても何もしてはいけないらしい。

 健たちとの合流の前に、現状だけでも把握しておこうとゲームデバイスを被る。

 一度、大きく息を吐き――


「それじゃ、行くか」


 そう気合を入れて、匠太はフリーダムバースへログインするのだった。

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