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Freedom Birth 戦えませんがなんとかなるみたいです  作者: なろといち
第二章 戦えませんがパーティー結成
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6.初めての食事

「おし、じゃあ『腹も減って来た』ことだし、レベル上げの前に飯にするか!」


 そういうとケンは自分のストレージボックスから、ピクニックに持っていくようなバスケットを取り出した。


「え、お兄ちゃん……何言ってるの?」


「ゲームで食事するのか?」


「……お前ら、もしかして始めてから飯、食ってないのか? セラスにはチョコバーやっただろ」

「あれって何かを回復させるアイテムなんじゃ」


「はぁ……お前たち、ステータス画面を開いてみろ」


 ケンの言葉に従って、ショウとセラスは各自のステータスを確認する。


「MPの下に食器のアイコンが付いたゲージがあるだろ?」


「えっと、アイコンはあるけど、ゲージは無いよ」


「だったらそれは腹ペコってことだ。このままの状態を続けると空腹で神殿送りになるから、注意な」


「そのせいで身体が動きづらく感じてたのか」


「空腹時はスタミナ最大値の減少なんかのデバフが付くからな。なんにしても食事は大事だ」


「やっぱり店で買わなくちゃ駄目なの?」


「そんなことないぞ。簡単なモノなら練習すれば作れるし、料理人なんかのジョブになればランクの高い弁当なんかも作れる」


 そう言いながらケンは、バスケットと共に取り出したレジャーシートを敷いていく。


「今回のこいつも、俺のクランに居る料理人に作ってもらったやつだぞ」


 バスケットを開けると、そこには色とりどり、種類豊富なサンドイッチがいっぱいに詰められていた。

 ケンはサンドイッチが載せられたトレーを外へ出して、ショウとセラスの前に置く。


「味もなかなかだ。ほれ、食ってみろ」


「ゴクッ……じゃあ、遠慮なく」


「い、いただきます」


 喉を鳴らしたショウは瑞々しい野菜を挟んだハムのサンドを、セラスは玉子サンドをそれぞれ手にして、一口頬張る。


「もぐもぐ……ごっくんっ」


「どうだ?うまいだろ」


「え、えぇっと……」


「かなりの薄味、なんだな」


「は?……あっ、そうか」


 ショウたちは見た目に反して料理の味があまり無いことに、残念な表情を浮かべる。

 それを見て、理解できないといった顔のケンがあることを思い出す。


「あぁ、そうだった。お前たち、感度の設定そのままだったな」


「設定? 弄ったことが無いから、たぶんデフォルトのままだぞ」


「メニュー画面でオプション、感度設定って選んでいくと、色々調整できるものが出てくるだろ?」


 ショウとセラスはケンの言葉に倣い、画面を進めていく。

 感度設定と書かれたタブを開くと、大きな文字で注意喚起が表示された。


 『注意! これらの設定を変更する際はプレイヤー様の自己責任で行って頂きます。身体や精神になにかしらの不安を感じた場合は直ちにゲームを中断し、診療アプリでの診断を推奨しております』


「ねぇ、お兄ちゃん。なんかすごく怖くなること書いてあるけど、大丈夫なの?」


「節度を守れば全然オッケーだ。『承認』を押すと、それぞれを設定できるようになる。とりあえず、『味覚』と『嗅覚』の部分を『一般』に変えるところからだな」


「……へぇ、他にも『感覚』、『疲労感』なんかもあるんだな」


「そっちは上級者向けだな。ゲームでリアリティを追求したい奴が上げる奴だし、今は弄らなくて良い」


 感度設定を一通り終えると、それを見守っていたケンが――


「騙されたと思って、もう一回食べてみろ」


「出来ることなら騙されたくは無いんだけど……ぱくっ」


「もぐもぐ……っ!?」


「「お、美味しい!」」


「だろぉ」


「え、なんでなんで? どうしてゲームの中の食べ物がこんなに美味しいの?」


「これは驚いた。やっぱり作った人のジョブが料理人だからか?」


「それもある。だが、どうして美味しいと感じるかっていうのは……自分の記憶にある!」


「記憶?」


「過去に食べた物の味を脳に再現させることによって、ゲーム内の俺たちに味覚が生まれる訳だ。料理の出来やランクによって、より美味しいと感じるようになってるらしい」


「つまりこの味は、私たちが今まで食べた物から近いものを選んでるってこと?」


「なるほどな。難しいことはよく分からないけど……」


「そうですね。今は……」


「「いただきます!」」


 挨拶をしたショウとセラスは、再び食事を開始した。

 先ほどとは比べものにならない勢いで、サンドイッチを次々と口へ運ぶ。


「はぁ~、お、美味しいです」


「うまいうまい!」


「味を再現しているだけだからどんなに食べても太ることは無い。腹いっぱい食べろ。お茶もあるぜ」


 コップに注がれた冷たいジャスミン茶を差し出し、ケンが笑う。

 しばらくの間、ショウとセラスは置かれたお茶には手を付けず、サンドイッチを夢中で頬張っていた。

 それを嬉しそうに見ていたケンもひとつ、カツサンドを手に取り口へ運ぶ。


 食事を終え、三人が一息入れていると――


「はぁ~、このジャスミン茶もいい香りがして、美味しいです」


「え、これさんぴん茶だろ? 淹れてくれた奴がそう言ってたぞ」


「確かに、ジャスミン茶っぽいけど……ケン、そのさんぴん茶ってどう違うんだ?」


「俺が知るかよ。このゲームだと口にしたことが無い物はそれに近い味になるらしいから、そっちが適応されたんだろ。多分」


「そうなんだ。今度見つけたらそっちも飲んでみようかな」


「ところで、ゲージの方はどうだ?」


「ちょっと待ってくれ……おぉ、すごい! 満タンだ」


「そりゃ、あれだけ食えばなぁ」


 と、ケンが肩を竦める。

 三人前にしては多い量のサンドイッチを八割方食べ尽くしたショウとセラスは、ご満悦な表情を浮かべていた。


「さて、じゃあそろそろ本題に入るか! いくら序盤だからって手を抜くなよ」


「ああ、そうだな。満腹感っていうのは無いけど、腹ごなしの運動はしないとな」


「ふふ、それだとどちらが本命か分からないですね」


 片付けを手早く済ませた後、ショウたち三人はパールを連れて、モンスターが出てくるエリアまで移動した。

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