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Freedom Birth 戦えませんがなんとかなるみたいです  作者: なろといち
第一章 戦えませんがゲームスタート
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10.街の外へ

 冒険者ギルドを出た後、ショウは思案していた。

 それは、最初に自分にアドバイスをくれた友人。ここでは『ケン』と呼ばれている人物がくれたアドバイスのことだった。


(……なんであいつは回復薬を買うことは勧めて、冒険者ギルドのことは言わなかったんだ?)


 ケンは『もしものために回復薬は買っておいた方が良い』とは言ったが、『最初は冒険者ギルドへ登録を』なんて言っていない。

 さらに言えば『冒険者ギルド』なんて単語すら出てこなかった。


「そのことが妙に引っかかるんだよな。単なる言い忘れか?」


 このゲーム、もっと言うと『MMORPG』では常識過ぎてアドバイスすることでも無いという事なのだろうか?

 いや、こういったゲームには疎く、勝手が分からないというのはケンも知っている。

 お調子者ではあるが、そこら辺の配慮は欠かない性格だというのは、現実世界でショウも知っていた。

 そこまで考えて、ショウは最初の噴水がある広場に戻る。


「……考えてもしょうがないか。とりあえず、街の外へ出てクエスト(冒険)をしよう」


 疑念を払うように首を振り、辺りを軽く見回す。

 縦横無尽に行き乱れる人の流れの中、そこから荷物を載せた荷馬車を見つけ、それを追いかけるように城壁の方へ歩いて行く。

 街の内側から荷馬車を走らせているということは仕入れを終え、街の外へ出ていくのだろうとショウは予測した。

 もちろん、相手は馬が引いてる馬車、ショウは徒歩。

 追いつくでもなく、徐々に離れていくそれを大体の方向の目安として歩き進めていくと、城壁に開けられた門が見えてきた。

 この時点で荷馬車はすでに街を出たのだろう。ショウの視界からは消えていた。


「すいません、ちょっと訊きたいんですが」


「――ん? なんだ?」


「この門を出た道って、南に延びてます?」


「そりゃ、ここは南門だからな。まっすぐ行けば南だよ」


「あ、そうですか。ありがとうございます」


 開門されている道の隅で人の流れを見ていた門衛と短い問答をして、ショウは鼻の頭を掻きながら会釈して通り過ぎる。

 無事に街の外に出られたショウが見たのは、見る限り真っ直ぐ伸びている舗装されていない土の道。

 それでもある程度整えられた道が、草原を割くように続いていた。

 今の立っている門からでは、リリィが言っていた丘も林も見えない。


「……歩くしかないか」


 冒険の始まりにしては些か低いテンションで、ショウは街の外へ第一歩を踏み出した。

 整えられているとは言っても、それは大きな石や窪みが無い、という程度でこんな道を現実の世界でショウは歩いたことが無かった。

 今までやってきたゲームにしても、自分が実際に徒歩で移動するなんてことも無く――


「確かに、新しい経験なんだけど……」


 ゲームということもあってか、身体の疲労は感じなかった。

 しかし、いつまでも続く道をひとりでとぼとぼ歩いているだけ、というのはさすがに飽きが早い。

 歩き始めてから十数分ほどして、早くも休憩に入ろうと道を逸れ、草原の方へ足を向けた。


「そういえば、ストレージボックスから取り出すときはどうするんだ?インベントリみたいに選択画面が出るわけでも無いし……」


 仔牛を納めた時と同じように、心の中でストレージボックスと呟く。

 すると再びショウの前に歪みが現れた。


「ここから『仔牛』を取り出したいんだけど……」


 と、その歪みへ右手を入れてみる。

 瞬間、指先になにか触れるような感触があった。

 どうやら紐状のようで、掴んで引っ張ってみる。

 すると――


『……モォーー』


「をっ!? で、出てきた!」


『モォー』


「な、なるほど。取り出したいものを思い描けば良いのか」


 仔牛は自分がいきなり草原の中にいることに最初こそ戸惑った様子だったが、軽く頭を振り、すぐに足元の草を食べ始めた。

 そこから少し離れて、ショウは地べたに座り、仔牛の様子を少しの間眺める。


「……そうか、せっかくストレージボックスがあるんだから、デスペナで無くなるかもしれないアイテムはこっちに移しておいた方が良いよな」


 ショウはインベントリを開き、今そこに入っているアイテムを全て出した。


「いちいち画面を操作して使うとなると面倒だけど、思っただけで取り出せるなら、回復薬もすぐに使えるかもしれない。あとはリリィさんが言うには時間経過は無いらしいから、生ものや劣化するものを手に入れた時もこっちの方が良いな」


 次々とストレージボックスにアイテムを収納していったショウ。

 だが、あるアイテムを見てその手を止めた。

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