私は会いたくなかった!
「相変わらずのブラコンだな!」
得意げに笑うこの男こそ憎っくき婚約者パトリックだった。
「そっちこそ暇なの?」
呆れたように聞いたときリックの隣に人がいたことに気がついた。
どこかの女の子と歩いてでもいたら即婚約破棄を言えるのに
その人は残念ながら私たちのもう一人の幼馴染であるセシル・ウェインだった。
「やあ、ベル。今日の服装も可愛らしくて似合っているね。まるで空からエンジェルが現れたのかと思ったよ。とても素敵だ。」
と微笑みながら歯の浮くようなセリフを言い放つ。
これが彼の通常営業なのだ。
彼はキラキラとした金色の髪を持ち
見た目でいえばリックと同じくらい整っている。
リックは黒髪で魔王のようにニヒルに口角を上げているのに対し
セシルは絵本の王子様のような美しさを持っていた。
隣に立つリックはこいつまじか、みたいな顔でセシルを見ている。
まあその気持ちはわかる。
「さすがセシルだ!ベルの可愛さがわかるなんて!いや、むしろわからない方がおかしいんだけど。」
「これはサイモン様、ありがとうございます。」
この二人はいろんな意味で似ている。
二人ともいつも私を全力で褒め称えてくれるのだ。
もちろん褒められることは嬉しい。けれど人前で大きな声でいうのはやめて欲しい。
周りにいる人がそんな美女がいるのか!?とこちらを振り向くのだ。
でもそこにいるのは美しい男たちと平凡な私。
なんとも居心地が悪い。
正直私、自分でも思うけど私って普通だからね。本当に。
でも前にそれをいった時お兄様は怒りの顔でなぜかパトリックの名を呼び
セシルは「ベルはとっても可愛いのだから自信を持って」
と微笑み私の話を流した。
「ベルとサイモン様はどちらへ?」
セシルは公爵家の人間だけれど次男であるため後継ではない。
そのため彼は私の兄に敬語を使うのだ。
お兄様自身は幼馴染なのだから気にするなといっていたが
セシルはこういうことはきちんとしておきたいといっていたらしい。
どこかの誰かさんと違って見本のような紳士っぷりである。
「新しくできたケーキ屋があるだろう。そこに行くんだ。」
セシルはお兄様の言葉にあっと気まずげにリックの方を見る。
「ふんっ。太るぞ。」
当のリックはこの調子だ。余計なお世話だと言い返したかったのに
頭に先日のリリーの言葉がよぎってしまう。
「お嬢様〜?もしや隠れておかし食べてます?
コルセットが前より閉まらなくなっています!」
そうだった…痩せようと思っていたんだった。
ケーキの誘惑につられすっかり忘れていた。
しょんぼりした私をみたお兄様はグリンとリックの方に顔を向けた。
「おい!いつもいつも私のベルにひどいことばかり…!今日こそ許さん…!」
「私の?それをいうなら俺のでしょう。婚約者なのだから。」
ドヤ顔が腹たつ。
隣のお兄様は悔しそうにくっと顔をさらにしかめた。