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初デート




ついにきてしまった。

リックとのお出かけの日…!

リリーに今日のことを話したら昨日の夜からずっとハイテンションでいつもよりも念入りに手入れされたし、朝から洋服やヘアメイクをああでもないこうでもないと付けては外しを繰り返している。


「あの、リリー?そんなに気合いを入れなくても…」


俺と遊ぶから気合を入れたのか?案外楽しみにしてたんだな。とかとか!もし言われたら、なんて言い返せばいいのよ!!



「いいえ、お嬢様!これはデートですよ!!!お洒落をするのはレディの嗜みです!!!」


これはもう何を言ってもダメらしい。

大人しくされるがままになった私にリリーは言う


「お嬢様、今日くらいは女の子らしく素直になってみてもバチは当たりませんよ!いつも強気な女の子がみせるからこその!ギャップ萌えってやつです!!!」


…とても楽しそうね?

リリーは私より少しお姉さんで、恋愛小説がかなり好きらしい。


「わかったから、そろそろ行かないと遅れるわ」


時計に目をやるともう家を出なければ待ち合わせに遅れてしまう時刻だった。


「あら!いけない!お嬢様、もう出来ましたよ!今日も素敵です!素直に、ですよ!」


そう軽く私の背中をトンと押してくれた。

特別リックとのやりとりなどを話した覚えは無いのだけれど彼女は不思議と私のことをいつも把握している。まあ私としては助かることばかりなので特に深くは聞かないことにしてる…。



目的地につき馬車を降りるとスっと手が伸びてきた。

御者の男が降りてきてくれたのかと思い何も考えずに手を取りお礼を告げながら顔に目をやると、その男はリックだった。


彼はいつもと違って少し長い漆黒の前髪をあげていて整っている綺麗な顔がはっきりと見えた。

服装もいつものシンプルなものではなく装飾が加えられた上等なものだった。


「え!あ、もしかして待たせてしまったかしら?」


リックは、ワタワタと慌てる私を、手を取りながらじっと見つめたかと思えば耳を赤く染め少し目線をそらす。


「いや、今来たところだ。心配ない。」



恋愛小説の定番のセリフじゃない!!!

リリーが憧れのシーンだと前に話していた気がする。そんなシーンをリックと再現することになるなんてなんだかとてもくすぐったい。


「そ、それなら良かったわ。」

私があわてて温度のあがった頬を誤魔化すように言うと彼はまだ手を取ったまま何かを言いにくそうにしている。


「どうかしたの?」

「いや…その…えっと…」


その間、彼は私から視線を外さない。

ドレスとかを見ているのだろうか


「なにかおかしな所でもある?」

「いやちがうんだ、その……とても似合ってる。」


驚いてリックの顔を思わず見直すと、今度は耳だけでなく頬まで真っ赤になっていた。そんな顔を私の手を持つのとは反対の腕でパッと隠すようにしてしまう。


リックが私のことを褒めるなんて今までほぼなかっただろう。いつも黙って目を背けるか、君にはもっと地味なのが良いとか、そんな事ばかりだった。


「えっと、ありがとう?」

彼に褒められることに慣れていなくて思わず疑問形になってしまった。セシルやお兄様に褒められることなら慣れているのに…!同じようにはできなかった。


「ああ。」


ようやく手が離れたかと思えば、腕を差し出してくる。わたしはこれでも公爵家の令嬢、さすがに紳士のエスコートに対する対応は学んでいる。


やや緊張しつつ彼の腕に手を添えると彼の硬かった表情が少し和らぐように感じた。


今日は今人気のオペラを観劇する事になっている。リックのことは別にしてとても観たかった演目なので私は楽しみにしていた。


チケットはリックが用意してくれたのだけれど、もはや個室と呼べるような素晴らしすぎるボックス席に案内された私はなんだか落ち着かずソワソワしてしまう。普段は友人と来るのだけど、ここまで上等な席に座ったことなどない。


「リック、素敵な席ね、ありがとう」

「ああ。気にするな。」


なんだか今日はいつもより少し素直になれるかもしれない。

そう思えてきて私は少し口角が上がる。




このままこの時間が続けばよかったのに。


「お、アナベルじゃねえか!」


後ろから聞こえてきた活発そうな声によりそれは終わってしまう。



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