2.終わりの始まり
考えの行き着いた先は、皆同じにはならないだろう。
僕は時間を止められるようになった。
しかし、やはり時間を止めたとしても何をすることもできない。なぜなら、時間を止めている間、僕は少しも動けないのだから。
僕は時間を止められるようになった。
こないだの皆の反応からすれば意味が無いと感じるかも知れない。でも、時間を止められることは僕にとっては大変有意義なことだ。だってもしもの時に、死へのカウントダウンを止められるからだ。
僕はそのためだけに時間を止めたかったんだから。
「ふぅ、一時はどうなることかと思った」
僕は書類整理をしながら一日を過ごしていた。
研究室は追い出されたものの、会社はクビにはならなかった。
今は関連施設の事務員となり、今日も与えられた仕事をコツコツこなしている。
労働者は法に守られているものらしい。福利厚生も整っているホワイトな研究室だった。
しかし、残念ながら研究室で研究はできないが、まぁ時間を止めること自体に支障は無い。
「リクくん、この書類のファイリングを頼めるかな」
「はい、わかりました」
先輩に教えてもらいながら慣れない事務作業をし、たまには時間を止めてみたりもしていた。
時間が止まっている間は相変わらず真っ暗で何もできないが、時間を止められるようになったことを再実感し、嬉しさを感じている。
もちろん、誰でも時間を無限に止められる訳では無い。
僕が自分のために時間を止める研究をしていた訳で、僕が時間を止められる方法を選択し研究していた。
だとしても、止められる時間の長さはその個人の資質に左右される。僕に資質が無ければ止められる時間は生涯一瞬だっただろう。
僕は運が良かった。僕の脳内は時間を止めるのことに特化していたのだ。もしかすると、幼少期から時間の勉強や検証をしていた影響があるのかもしれない。
今思えば、初めからいきなり数十秒は時を止められたのだ、才能はあるだろう。あとは効率化の問題だけだった。
数十秒か数百秒、数百秒が数千秒、数千秒が数万秒と、今では止めようと思えばいくらでも止められるようになった。
その止まった時間の中で時間についての考え事をするのが僕の日課になっていた。
そんな毎日を数ヶ月過ごしていた、のだが……
目眩がする。
僕は仕事中にいきなり、その場へ倒れてしまった。
「どうしたんだ!?リクくん大丈夫か!」
先輩が僕に声を掛けるが、返答する余裕はない。
胸が痛い、呼吸が苦しい、僕の体はどうなったのか。
脈が無く、心臓が止まっていた。
あぁ……、これはどうしようもできない。僕が時間を止めるより先に、心臓の時間が止まってしまったのだから。
時間を止める猶予が無かった。僕は時間を止められるようになったが、時間を戻すことはできない。
苦しさと共にだんだん頭がボーっとしてきた。
心臓が止まったため、血液が脳へと回らないのだ。
おそらく、この胸の苦しみ…、心臓が止まったのはあの原因不明の病が原因だろう。根拠は無いが日々、死に怯えながら生きてきた僕には確信があった。
原因不明の病が原因不明に再発したのだ。医師からは再発するとは言われていなかった。医療は日々進歩しているが、未だわからないものは分からないのだ。
でも、いつかこうなる可能性があることは考えてはいた。
苦しみ少なく、死へのカウントダウンをしなくていいのなら、良かった…のかな……
僕は時間を止めることなく、目の前が真っ暗になった。
初投稿ですが、
感想書いて頂けたら頑張れます。