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#09 冒険者ギルドオースチン支部



 ノルマン帝国地方都市ローレンに居城を構えるトリッシュ女伯爵の館の応接室で紅茶のティーセットを前にアベルは座っていた。背後にはメイド姿の夜刀姫が控えている。


「オーガ砦の討伐は来週の月曜日早朝に出発したいのですがよろしいでしょうか? それまでの5日間で城下街オースチンの冒険者ギルドで登録とか、新しく頂けた武器の練習期間に充てたいのですが? 」


 

「もちろん結構ですわ、冒険者ギルド長にも当方から推薦を申し伝えて置きましょう」


「いいえ、F級の搬送人登録をして身分証明の木札を取得するだけですので、お手数を煩わせる程でもありません」


「まったく摂政オッタル大公にも困ったものですわ! 」

(えっ、マジでアムル人の俺に言いますか)


「彼こそエデン地方からのアムル族の強制移住と職業制限を布告して、アムル族を我が領地の魔の森に移住させた張本人ですわ! 」


「なんと・・・・」(知ってたけど)


「あら、驚かれまして、このことはアムル人のアベルさんの前だから事実を申しているのです」

(ではトリッシュ女伯爵は反摂政派の貴族なのか? )


 説明によると現ノルデア帝国のヨハン皇帝は病弱で実弟のオッタル大公が摂政をしている。


 2大陸4ダンジョンのギルド経営やアケニア騎士団領も大公が支配しており帝国で権勢を極めている、しかし皇太子アーサーの側近もおり、皇太子派と大公派の貴族達の争いが続いている。


「摂政とはいえ正統な皇太子殿下をないがしろにして帝政を壟断している極悪人ですわ」

(なぜ、そこまで大公を憎むのか? )


「私にとっては、亡夫エルンストが命を引き換えに成し遂げたシホン王国殲滅の功績を横領した極悪人でもあるわ! 」

「なるほど」(納得した)


「今では貿易窓口であるシホン港はオッタル大公の飛び地となっているわ」

(日銭の入る貿易港がすぐ傍で繁栄か、これは同情するわ)


(怖い~夜叉が笑っている( ^ω^))


「摂政といえども期間限定にすぎず、外戚のフェン公国当主にすぎません。2年後には事前取り決めどうり皇帝陛下に即位するはず」


「なるほど」

(今は摂政側を抑え込み皇太子を即位させるための多数派工作の時期か)


「皇太子殿下は聡明な方で侵略にではなく内政に国力を注ぎたいお考えです」


「それは大陸の平和のためにも、是非とも即位を実行して頂きたいですね」


「はい、アベル様と方向性が一致しましたね安心しました」



「帝都ベルブルグに到着してから知己を得ていたほうが有益な方はおりますか? 」


「それは是非ともダン侯爵邸にお出かけくださいな。こちらからも連絡しておきますわ」


「彼は帝国の情報統括者なので貴重なアドバイスを差し上げられるはずです」


「それは是非とも訪問させて頂きます」

(絶対、ダン侯爵も皇太子派の貴族だな)



 ◇◆◇



 カッと初夏の日差しが降り注ぐ領都オースチンの石畳みの往来では、魔の森を狩場としたエルフやドワーフそしてモフモフ系の獣人たちが冒険者の様々な姿で歩いていた。


 アベルは事実上のお上りさん状態で眺めては興奮していた。

(ラノベ小説のままじゃねえか、本身の大斧を担いでいるぞ! )


(そうだ、冒険者ギルドの場所をあの白猫の冒険者に聞いてみよう)


「あ~すみませんが冒険者ギルドの建物を教えてもらえませんか? 」


 すると白猫の冒険者はアベルに振り向いてニッコリと笑って言った。

「向かい側の石造りの建物がギルドにゃ? 」


 尻尾がピクピクと揺れて立っていた。

(にゃ~て言ったぞ、リアルに、すげ~)


 青空の下で通りの向こう側に冒険者ギルドの石造り建物が見えていた。


「ミーナは男に好かれるんだな~おい! 」

「道を聞かれただけにゃ、サラのいじわる~! 」



 革鎧姿の白猫ミーナは2人の仲間たち獣人に囃し立てられていた。

 3人編成で熊男戦士と魔法使い狐娘と偵察白猫人の獣人冒険者グループみたいだ。


 後ろの夜刀姫だけが不機嫌そうな雰囲気を醸し出していた。

 やがて3人の獣人冒険者達はうなずき合って、日差しに照らされた冒険者ギルドの石造り建物に入っていった。



 アベル達も遅れて石の階段を上がりドアを開けるとそこは受付と依頼の羊皮紙が張られた壁のある酒場だった。


 時間も昼に近く冒険者の姿もチラホラ見える程度だった。

 先ほどの仲良し獣人三人組は練習場にでも行ったのか姿はホールに見えなかった。


 酒場の奥で昼間から酒のエールを飲み周囲を睨んでいた男たちがアベル達を見つけた。


 それからテンプレどうりに柄の悪い新人イビリの冒険者3人がアベルに絡んできた。


「おいコラ!このアラム人が黒エルフの女連れで木の杖ついて粋がってんじゃねえぞ! 」


 ギャハハハ・・・・ヒヒヒヒ・・・と連れの男達が爆笑する。


「僕ちゃんは木の杖でオーガを叩くのでちゅか? 」


「オラ、黒エルフはこちきて酌をしろや! 」


 真ん中の髭面大男Bはアベルを突き飛ばして、夜刀姫の肩を捕まえようと右手を出した。

 よし、先に手を出したのは相手の方と右横の受付嬢も見ている。


 アベルは一歩引いて夜刀姫にうなずいた。


 夜刀姫は手掌で大男のあごを軽く突き上げた。

 あごを突かれた男はそのまま意識を失いのけぞり倒れた。

いい反応だ・・・


 カクン、ズシ~ン


 これで激怒した左右の痩せ男と小男は腰の片手剣の柄を右手で握った。

(ナイス)


 これは打って良い合図だ。

夜刀姫は素早く手刀で左右の痩せ男と小男の手の甲を連打した。


 ビシ、ボキッ  ビシ、バキ


 グア~~~~!!!!


 あまりの激痛に痩せ男と小男二人の男は右手を抱え込んで呻いて蹲ってしまった。



 瞬間に三人の男達が戦意喪失して静かになったので、酒場の冒険者たちには受付でなにが起きたのか分からないみたいだ。


 見ていたカウンターの受付嬢が声を上げた。


「見事な技ね、彼女の正当防衛を確認したわ、手を出した三人が悪い、治療費は本人負担でギルドのヒーラーで治療よ」

「あなた達は冒険者登録でいいかしら? だったらこの申し込み用紙に必要事項を記入して頂戴」


 受付嬢はアベルたちにカウンターの上に申し込み用紙を差し出した。

 奥にいた職員たちが倒れている三人の男たちを起こして奥に連れて行った。


 「こうゆう事はよくあるのですか? 」

 「新人いじめは年中行事よ、気にしないで! あと、私の名前はフラウよ」


 母親と同じ名前だった。

 申し込み用紙にはアベル・エデンの名前と特技だけ書いた。

申し込み用紙に初めて書いた。


自分が書いた文字を見たらルーン文字だった。

内容を考えて記入すると筆先はこの文字で記入している。

夜刀姫はヤトヒメと紹介してゴーレムだと説明した。

フラウはカウンターの下から水晶球を出してきた。



「アベルさんはこの鑑定石を触っください」

「この球はなんですか? 」


「この鑑定石は犯罪の処罰歴を示すのよ」


「ああ、処罰暦があると赤く輝き、ないと青く輝くのかな? 」


「なんだ知ってるのね! 」

 水晶製の鑑定石は青く輝いた。


「今の予測は勘です、さすがに犯罪者を冒険者にはできないのではと思いまして」


「そんな若くて勘が鋭いと女の子に嫌われるぞ」


「特技は荷物搬送に魔法袋て、アベル君は魔法袋持ちなんだ。商人達から指名はあると思うよ。ヤトヒメちゃんはゴーレムってすごい、従魔扱いになるけど登録料金はF級の搬送人50銅貨で従魔鑑札も同じ50銅貨の合計1銀貨よ」


 アベルは2人分の銀貨1枚をフラウに差し出した。

 フラウは1銀貨を受け取り1枚の紙を手渡してきた。


 「ギルドカードと鑑札が出来るまで1時間程度かかるから壁の依頼表でも見ているか、この“冒険者の手引き”でも読んでいたら」


 「はい、そうします」


 F級冒険者向け依頼票では、兎、蜂、スライム、鼠、大蟻、コブリン等の部位、あとは傷薬草、麻痺茸等の採取が多く。

 F級の雑役その他依頼票では、搬送人、介護人、清掃人、草刈人、伝言人、家事手伝、監視人などが多かった。


 “冒険者の手引き”にはギルドの指示に従え、犯罪を犯すと除名するなどしか書いてなかった。


 1時間経過したので二人は受付カウンターに戻った。



 受付のフラウさんは待っててくれた。手元に真鍮製楕円型のギルドカードと小型の鑑札が置いてあった。


 鎖付きの鉛製楕円型のギルドカードには表面にギルド支部名と俺の名前が刻印されていた。

裏面には登録番号と登録した職業名が刻印されていた。


 小型の鑑札はやはり長方形の真鍮製であり、ヤトヒメと俺の名前が刻印されている。

 夜刀姫には収納庫にある黒革でチヨーカーを作りこの名札を埋め込みしてみよう。


「F級木札は壊れやすいのでE級以上と同じ真鍮製にしてあります。検問でも文句は出ません」


 俺の首に真鍮製のギルドカードを鎖で下げて、夜刀姫の首には今夜黒革のチヨーカーを作ろう。


「E級は初級冒険者研修が受けられるけど、F級はこれで終わりよ、お疲れさまでした」


 ギルドから帰ってきて収納庫から素材を出して作った。夜刀姫の首に合わせて作った黒革チョーカーで名札が中央に飾ってある。

後ろの銀バックルで長さ調節はできる、夜刀姫の黒服系メイド服に黒革チョーカーは似合っている。



 ◇◆◇



「フラウさんありがとうございました。それと旅の途中で狩った獲物は売却できるのですか? 」


「ええ、出来るわよ、裏手に大きな倉庫がありますので解体の責任者に手渡してください。責任者が確認して買取伝票を出しますのでここの支払いの窓口に出してくださいね」


「分かりました、ありがとうございました」



 アベルと夜刀姫の二人は裏手に回り、大きな倉庫を見つけて入り口から中に入った。

 魔の森での獲物もあるし、旅の途中で狩ったオークとオーガも現金化が出来そうだった。


「こんにちは!解体の責任者さん!誰かいませんか? 」


「おう、いるぞ」


 奥からのっそりと全身を覆うような皮のエプロンを付け手に山刀を握った男が出てきた。


「売れる獲物があるのなら床に出してみろ」


「どんなに多くても買取するのですか? 」


「ものには限度があるよ、まずは最近の獲物から並べてみろや」


 アベルは空間収納庫から13匹のオークと1匹のオーガを出して倉庫の床にずらりと並べた。


「ちょ、待て今日はここまでだ、くそ徹夜作業が確定だぜ、今買取伝票書くからな」


 解体責任者は230万G(金貨23枚)の支払い伝票を走り書きしてサインをした。


 伝票をアベルに手渡して一言つぶやいた。


「明日は持ってこないで、休ませてくれ」


 アベルは当面の資金が確保できたのでホクホクしながら支払い窓口に伝票を出した。

 つると窓口の奥から


「何、すげ~本当か? 」

 という呻き声と共に金色の硬貨が23枚出されてきた。


冒険者登録時の手数料支払いの話が出てくるので、2大陸での物価のはなしです。


例えば、街で宿屋1泊(1部屋50銅貨・1食15銅貨・お湯5銅貨)の支払いを前世の金額評価に換算しますと。


前世評価換算で(1部屋5000円・1食1500円・お湯500円)となります。



 ◇◆◇



これはアベルのギルド登録時のステータス情報です。

個人が“ステータス・オープン”と唱えれば自分だけ全部見ることが出来きる。


ノルデア帝国ベルブルグ冒険者ギルド 組合員原簿

名前      アベル・エデン

年齢・性別 15歳・男性

種族 アムル人

職業 ・ランク 搬送人(F級)

【鑑定石ではここまで表示される。】


ユニークスキル: 時空魔法(空間収納庫・空間移転・空中ブロック)、ゴーレム召喚(金属)、 知識転写(鉱物) 

ノーマルスキル: 鑑定(鉱物)、錬金術(金属合成)、鍛冶(金属変形)

生活スキル: 着火魔法・飲み水魔法・乾燥風魔法・

堀削土魔法

派生スキル: 収納袋作成(10㎥)


・職業は15歳のギルド登録で選択した後は変わらない。

・級ランクは経験値対応でS~Fまで自動表示する。


・ユニークスキルは生涯不変で、伝授は出来ない。

・ノーマルスキルはスクロール巻物でも取得できるが

基本的には師従して習得する。

・派生スキルはユニークスキルを熟達していくと本人限定で派生するスキルです。





 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


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