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#69 地下迷宮11階層 捕囚ダークエルフの救出



地下迷宮五日目の午後、ゴーンとクロエがオーガ村から台地上の関所入り口まで雑草が踏み固められた道を歩むと、門番のオーガジェネラル1匹が2人を獲物と見なして鉄斧を両手で持ちゆっくりと歩いて近づいて来た。


友好的な雰囲気でもないし、ゴーンとクロエの次の行動が戦いの狼煙になる。

2人は近づくオーガジェネラルから50mほど離れた地点で立ち止まり、ゴーンはピルム槍をオーガに投擲してクロエは矢を射た。


ゴーンの投げた槍はオーガジェネラルの腹部に命中して、クロエの矢は右眼に突き刺さった。


子狐ジェンは関所上空で空間ブロックに乗ってこの様子を見ていたが、門番の絶叫を聞いてすぐに呪術を唱えて白煙を噴き出しているリンを出現させて、関所全域に向けて”しだれ柳”の様に広がる白燐雨を降らせた。


関所敷地に門番の絶叫を聞いて集まったオーガジェネラル70匹程の全身に、ジェンが砦の上空の天井近くから降らせた”白燐雨”は炎の粒子となり降り注ぎ皮膚に付着し焼き付いた。


リンは皮膚火傷を起こし白煙を吹き出しながらさらに深層部まで浸透炭化して生身のまま火葬する。


関所では70匹程のオーガ達の頭上に白燐が降りかかり貼り付いた。

直後、オーガジェネラル達の絶叫が11階層ホールに響きわたった。

“グァ~~~ッ ギヒ~~~~ィ“ ゴロゴロゴロ~~


オーガジェネラル達が生きたまま浸透炭化するリンの激痛に地面を転がり廻り、追加で周囲から集まったオーガ達の身体にも飛び散り粘着し浸透した。


ジェンは白燐雨を複数回関所に降らせて焦土化させてから、奥の崖にある出口洞窟まで空に架けた空間ブロック上で九尾を揺らして駆け降りて行った。


既に崖の出口洞窟付近にはアベルと3人の冒険者がミーナと共に空間移動してジェンを待っていた。

ジェンの最後の役目で4人と共に洞窟内に入り前面に9層ブロックを張り、中にいる冒険者と仲間達を高温と酸欠から守る避難所を作った。


ミーナはそのまま砦に移転して消えたが、砦の上空には浮揚するスーがいた。


洞窟内に入ったアベルは避難所の入口広場は面積が広いのを確認して、貯水タンク付きの簡易シャワー装置とトイレセットを組み立てた。


排水は床の地層に空洞を探知したので緊急対策として排水筒を接続した。

続いて組立て済の帆布製鉄パイプ屋根付きランプ付きテントセットを空間収納庫から3張取り出し設置した。


1張りは”暁の紅い光”用のテントで5台の簡易寝台と衣類・寝具を入れた。

1張りはゴーンとクロエ用のテントで2台の簡易寝台と寝具を入れた。

1張りはアベルパーティー用のテントで4台の簡易寝台と寝具を入れた。


もちろん救助した3人の女性達は疲れ果てておりトイレ使用後テントで熟睡した。

最初は3人の女性達はこわごわ洞窟内に入って来たがアベル達の助けようという意図が分かると施設に馴染んで来たようだ。


洞窟内入り口のスペースでは、後は長テーブル2台と長椅子4脚を入れると一杯になった。

夕食は料理店から購入した調理済のスープ入りの寸胴鍋とパンや果実とワインがあるが、全員が揃ったら熱々の状態で収納庫より出そう。


空間収納庫の中に膨大な量の貯水があるのでシャワー消費や食器洗浄や洗面・トイレなどに十分に真水供給が出来る。


テント群の設営を終えるとアベルは12階層に続いている下り道の前に椅子を置き避難所の後方警備に就いた。

ジェンは洞窟前面で9層ブロックを張り、洞窟前に冒険者とか仲間達がやってくれば9層ブロックを開閉する役目だった。


一方関所内では、鼻を突く燐の臭気と白煙と焼けただれたオーガ達の悲鳴が続いていた。

関所の入口前まで歩いて着いたゴーン達の前には、白燐雨で重度火傷のオーガジェネラルが70匹ほど地面にグッタリと横たわっていた。


引き続いてゴーンの止めの即死(デス)の黒霧がゆっくりと地表を覆い出してきた。

夜刀姫は砦から駆け付けるオーガジェネラル達を鉛弾攻撃で迎撃していた。



◇◆◇



「ここはどこ、空が見えないわ・・・」


オーガロードの巨体の上で揺さぶられて獣の体臭は遠慮なく纏い付き疲労困憊している裸の小麦色の体を苛む。

とても地底の11階層のこの寝室から脱出出来るとも思えなかった。

ロードの肉欲に小さな体は疲弊しており、無言のまま凌辱で翻弄されていた。


小柄のダークエルフが連日寝台の中で責められて心停止になりかけている。

火照った体を冷やすため風を体に掛けているがもう限界だった。

地上のダンジョン入口までは分厚い10階層分の地層があるのだ。

ちっぽけなこの私を助けに来る冒険者はいない、もう生きる望みは消えた。


タマルのつぶらな瞳から一粒の涙がこぼれ落ちひび割れた唇が動く

「誰か、助けて・・・」

(答えてくれる人はいない・・・)


倒れているダークエルフは20歳ぐらいに見える小麦色の健康そうな体つきであったが、グッタリして動きはなく脱がされた衣類が床に散乱している。


飲み水は養母から教わった水魔法で少量は出る。

タマルはロードの寝台にグッタリと寝ている。

身体の疲労が強すぎてこのままおとなしく苗床になるしかないのか。


10歳でオッタルに放り出されて孤児になったタマルは寡婦のダークエルフに拾われた。それからウルク大陸に逃れて来てダンジョンのあるゴンゾー市で寡婦の苦しい生活の中養ってくれた養母のニコルに感謝している。


義母のニコルの顔や義妹のニーナや義弟のトーヤ達の心配している顔が浮かぶ・・・もう幾日目だろう、隣室のミロとは会えないが生きてるのだろうか。

村で別れたドーラやミレーヌそしてソラでも誰か生き残りがいるのかな・・・


突然、麓の関所の方向から大勢のオーガ達の絶叫や悲鳴が砦に轟いてきた。

“グァ~~~ッ ギヒ~~~~ィ “


タマルを凌辱していたロードは巨体を寝台から起こして舌打ちをしてタマルを放り出した。

「騒がしい~、無能なジェネラルどもめ!」

ロードは壁に掛けてある巨大な魔剣を担ぎ裸で2階のテラスに出ていった。


すると入れ違いの様に革鎧姿の白猫人ミーナが寝室内に出現した。

「”暁の紅い光”のタマル・ヌリを助けに来たにゃ! 」


すると寝台上の片隅に投げ出されていたダークエルフがピクリと反応した。

「だれ・・・」


「”暁の紅い光”の3人は助けた、最後のミロ・ジェンヌは何処にいるにゃ!」

「隣の部屋よ」


ミーナはタマルを助け起こして床にあった衣類でタマルに着せてから背負い隣の部屋に移転した。

隣の部屋の隅には数人の捕囚が入れる程度の鉄檻があった。

中には魔法使い姿のエルフの少女が1人檻の中に閉じ込められて蹲っていた。

黒のフード付きローブにロッド杖と金髪で碧眼の尖った耳の痩身なエルフ女性だった。


(痩身で助かったのか)

ミーナが罠解除で鉄檻の鍵をカチャリと開錠した。

格子を開けると、エルフ少女はロッド杖を持ちながら鉄檻から這い出してきた。


「ミロ・ジェンヌです、助けてくれてありがとなの」

「ロードを殺すためにこの砦はじきに溶岩池になるから、3人で今から移転するにゃ」


タマルとミロのエルフ少女たちは驚いて、置いて行かれない様にミーナの両肩に手乗せて目を閉じた。



◇◆◇



さすがにこの阿鼻叫喚を不審に思つたか巨大な魔剣を担いだオーガロードの巨体が砦の二階テラスに出て関所側を見渡した。

大柄なオーガロードが上空のスーを発見して喚き、憎悪を込めて睨んでいる。


スーは関所での白燐雨が降り始めた時点から上空で長い詠唱を唱え始めており、砦の外壁までの範囲指定をちょうど済ませた所だった。


“ファイアーインフェルノ”

スーがつぶやくとそれは空中でオーロラ様の白い高熱の炎が出現してロードが見上げる砦に舞い降りてきた。

さすがに身の危険を感じて、オーガロードは砦の2階奥に引き込んだ。


しかし高熱の炎は消えることはなくゴウゴウと砦の屋上で炎壁となり動かずに回転を始めた。

高熱の炎環が白く渦巻き、砦の2階1階地下室の石材を次々と溶かして煮え立つ溶岩池と化した炎熱地獄になった。


「グァ~~ッ熱い!儂は何度でもここに必ず戻ってきて貴様を殺してやる」

溶岩池の中でオーガロードは立ち上がり右手でスーを指さして赤鬼の表情で睨みつけながらゆっくりと沸き立つ溶岩池の底に沈んで行った。


最後を見届けたスーも崖奥の出口洞窟まで空中浮揚フライで移動した。

ゴーンとクロエそして夜刀姫はミーナが拾い上げて出口洞窟内に移転した。



◇◆◇



時は少し遡りミーナがタマルとミロの2人を移転で洞窟内に連れてくると、起きた3人と顔を見合わせた途端に泣きながら駆けだして5人全員が抱き合った。


「無事でよかったよ!」

「会えて良かったね!」

「ひっく・・・・ぇ~ん」


「ねえ、タマル!最後まで守ってやれなくてごめんよ、ミロも、皆を守り切れなくて悪かった」

「そんな、ドーラの責任じゃないわよ」


「うん、そんなドーラやミレーヌそしてソラも村で酷いことされたんでしょ」

「はっ!私は失神してて何されたか覚えてねえよ」


「それも凄いわね、豪胆というか」

「馬鹿言ってないであんたたちシャワーあるから体を綺麗にしようよ」


「それから”暁の紅い光”をこれからどうするのか話合わないとね寝る前にね」

「そうだね、今回は結構参ったからね」


「話し合いは夕食食べてから寝る前の時間にね」

「「「「はい」」」」


泣きながら抱き合っていた5人の女性達は肩を組んで避難所のシャワー室に歩いていった。


いつのまにかミーナも無事に戻り、何故か地上の太陽と月の運行と連動して地下階層の輝石の輝きも変化して、夜の時間帯になると完全な闇ではなく薄暗くなった。


地下迷宮五日目の夕食で2列の長テーブルと長椅子4脚を配置してカップ、深皿、ナイフホークやワイン瓶とパン・果物皿などを置いて大型テントで囲い四隅に輝くランタンを吊った。


帝都の料理店味付けの熱いままのスープや兎肉料理とか採れ立てのサラダとパン・果物などが中央テーブルに出されて食事は始まった。


「”暁の紅い光”の皆さんはたっぷりと食べていいのよ」

「美味しいでしょう、その肉は料理店で充分味付けして煮込んであるよ」

「私はパンとジャムと果物と野菜サラダでだけでいいわ」


「ジェンは9層ブロックを張っていて眠れるの?」

「開閉は無理ですが、張っていても眠れます」

「外気は未だ冷めて無くて、1層だけでも朝までお願いします」

「分かりました」


「明日は、12階層で砂丘の中から虫探しにゃ」

「12階層は珍しく魔獣のいない階層でゆっくり探せるよ」

「流砂には気を付けてにゃ」


ドーラはピクッと片眉を動かしてと苦しそうな表情をしたが。

「実はうちのパーティーの今後の話し合いは今からする予定なんだ、だから今のところ明日の予定は何も言えないです」


「そうか明日の事を話してごめんね、明日の朝までに結論出してくれれば地上に帰る場合には俺に手伝いをさせて下さい」


「ですです、自分が納得できる生き方を見つけるのが大切にゃ」

「有り難う皆さん!」


その後”暁の紅い光”の5人の姿は夕食を終えてからテントの中にあった。


他のメンバーは食事後交代でシャワー・トイレテントを使い、早々に各自の割り当てテントの中に入り明日に備えて就寝した。

一晩中、夜刀姫が洞窟前に立つので避難所にオーガ達は近寄れない。



◇◆◇



(ドーラたちのテントの中では)

「じゃ、”暁の紅い光”の最後の話し合いを開催します」  

「ドーラ、最後の話し合いってなによ」  

「聞いて、他のメンバーから提案が無ければ私からあるの」  


「皆も今回はひどい目に遭っている筈だ、もうこれまでの様にのんびりと仲間と冒険など楽しめないよね、今日をもって”暁の紅い光”は解散します」


「それはドーラの本心なの?」

「本心よ、目の前で仲間たちが犯されているのに何もできなくて、私は決して自分を許すことなんて出来ないわ! 」


「ミーナさんも自分が納得できる生き方を見つけるのが大切って言っていたわ」

「ミロが言う通りだ、パーティーの積み立て資金は後日になるけど均等割で返すわ、私は実家の商店に帰るつもりよ、皆も今後の計画を立てて欲しい」

「「私達も実家に帰るわ」」


「私はもう少し冒険をしたいかな、やはり強いパーティーに入れば安心だからアベルさんのパーティーに入れ貰うつもりなの」  

「ミロがやるなら私もアベルパーティーに入るわ」 

 

「結論としてタマルとミロはアベルパーティーへ参加ね、私とミレーヌそしてソラは実家に帰るわ」


 実家に帰る組は、盾剣士ドーラ、水治癒師ミレーヌと探索人ソラの3人で、明日アベルに地上まで送ってもらう。


風弓手のダークエル少女タマル・ヌリとエルフ土魔術師のミロ・ジェンヌの2人は、アベルパーティーへ参加と5人の身の振り方も決まった。


ここに女性冒険者パーティー”暁の紅い光”は解散した。



◇◆◇



アベルパーティーに参加する救出されたエルフ2人のステータス紹介です。


1人目は銀髪に金瞳を持つ小麦色肌笹耳で狩人姿の小柄なダークエルフのタマル・ヌリですが霧の王国の女王の娘で度々拉致されていた少女です。

オーガロードから救助されて以降はアベルパーティーの弓手として活躍します。


名前 タマル・ヌリ

年齢・性別 100歳・女性

種族 ダークエルフ族(霧の国)

職業 ・ランク 弓手・(B級)


ユニークスキル: 風魔法賦与・曲射・追尾・3連射・鷹の眼・風の精霊召喚シルフ

ノーマルスキル: 炊事・洗浄・野営・短剣術・木工術

生活スキル: 堀削魔法・飲み水魔法・浄化・灯火魔法

派生スキル: 錬金術(鏃作成)・風結界



2人目は金髪碧眼笹耳で魔法杖フード付ローブ姿の痩身なエルフのミロ・ジェンヌで、オーガロードから救助されて以降はアベルパーティーの土魔術師として活躍します。


名前 ミロ・ジェンヌ

年齢・性別 130歳・女性

種族 エルフ族 (西エルフ聖樹国)

職業 ・ランク 土魔導師(B級)


ユニークスキル: 土魔法5(岩弾・鉄槍・堀塀・煉瓦・造形)・土の精霊召喚グノーム

ノーマルスキル:上級魔法 火属性1(炎弾)・硬化

生活スキル: 着火魔法・飲み水魔法・浄化・灯火魔法

派生スキル: 整地(宅地・畑)・植物生育





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



PV29,577アクセスに達しました、本物語を読んで頂きこころから感謝いたしますm(-_-)m! 

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