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#64 地下迷宮1階層 一角狼とコボルト



ダンジョンギルアは地下1階層から30階層までの大洞窟が蟻の巣みたいに連担する構造であり、ドワーフ自治領地下全体に広がっている巨大地下迷宮だ。


地下迷宮に潜るには事前に遭難対策のためにダンジョン広場にある案内所の届出用紙にパーティー全員の名前と期間と行先階層を届出が推奨されている。


ダンジョンギルアは誰でも自由に潜れるが、事前届出のない者が未帰還になっても冒険者ギルドは関与しない。


ダンジョン深層の地底湖には彩色水晶や魔水そして各種鉱石が豊富に産出しており、18階層と26階層には地底湖畔に元奴隷の採掘人たちが形成した村がある。


各階層ドームの規模は数k㎡キロから数十k㎡と階層ドームの大きさも位置も様々で階段洞窟で上下に連結しているが、決して上下階層が垂直位置で重なるわけではない。


下の階層になるほど強力な魔獣が生息しているが、30階層全てにおいて捜索する冒険者のための湧水地付の野営場所は発見できる。


当然、パーティーは夜行性の魔獣を警戒して野営テントを見張る必要はある。


地下26階層までは冒険者たちの到達領域なので地下環境や生息魔獣数の記入された地図や魔獣情報はギルドで入手できる。


階層主はいない、邪魔する魔獣集団を倒せば下りの階段洞窟に入れる。


各階層をつなぐ傾斜階段は何キロも石の階段が続き、暗い岩肌の中で青白く輝く鉱石に囲まれた階段は湧水も無く宿泊には不向きだ。


しかし階段両側の壁面は鉱床が露出しているために無数の小部屋状に採掘坑が残されており盗賊も利用する。


地下ダンジョン内では地上と異なり地下で発生する魔獣を討てば魔石とドロップアイテムを落とし身体はダンジョンに吸収される。


ドロップアイテムには牙や皮そして素材も落とすが薬ポーションや武器・防具そして貨幣なども多く出る。


剣などは使用痕もあり過去に死亡吸収された冒険者たちの装備品などではないかと推測されている。


最深部30階層で迷宮の主赤龍を討伐して開く[選択の小部屋]に降りて、代表者が出現する賢者の石に一つ願いを叶えてもらうかエリクサーを入手するか選択できる。


隣に出現する[移転石柱]に[聖樹の指輪]をした者が触れれば、触れた者は5大ダンジョンの入口か最深部に移転ができる空間移転スキルが授けられる。


今日も多くの冒険者たちが三々五々と数名から数十名のパーティーを組んで半地下で下り坂の入り口に消えていく。



◇◆◇



アベルパーティー7人も事前届をしてから、半地下の地上出入り口から洞窟中に入った。


既に夜刀姫は宿屋で全身液体鎧の戦闘装備になっており、革の剣帯に左右の剣を装着して腰上に1000発鉛弾入り腰バックを付けて前を歩いている。


アベルの時空間収納庫にはゴールデン商会に仕様書発注した30㎜鉛弾やクロスボウのシャフトそして征矢も完成品で各種3,000本が格納されている。


さらに鉛のインゴットや鏃・細木・矢羽等各種7,000本分が半製品として収納されている。


アベルパーティーは前衛に夜刀姫が進み探索でミーナが先行している。

中衛でアベルとジェンが続き後衛でスーと護衛のゴーンとクロエが全周警戒して進む。


メンバー全員は購入した魔道具通話器を腰ベルトにつけており同一階層内で会話が出来る。


初日だがアベルが指示を飛ばすこともなく、パーティーは既に戦闘隊形で進んでいる。


洞窟ダンジョン“ギルア”の広い入口を入ると、すぐに地下に降りる階段になり正面扉を開けると上には光魔石が輝き、両側は雑木林が崖の岩肌を隠しているが、正面奥は果てしなく丘陵と草原空間が続いていた。


中央に草原があり、左右に野営しやすい雑木林と小川が流れている。


冒険者ギルドで購入した1階層の地図通りに左右に崖と林と小川があり中央草原地帯が順路になっていて奥に出口も記入されている平坦な丘陵階層だ。



「最接近魔獣は正面一角狼の270頭の群れで雑木林の中に毒尾羽の極彩色鳥30羽程見られる、出口のある崖左右に洞窟がありコボルト200匹程が感知されるにゃ」


とりあえず対応する脅威は、正面で走り寄る灰色一角狼の群れだ。


こちらに270頭ほどの群れか駆けてくる、次第に一角狼が大きく見える。


狼の群れを見て後衛にいた冒険者の龍人ゴーンが騒ぎはじめた。


「よし、ここは俺に任せてくれ、一撃で倒してやるよ」


「・・・期待するにゃ」


後ろから背の高いゴーンが最前列に出てきた。

クロエもそっとゴーンの後ろに控えている。


ゴーンが右手を真っすぐに伸ばして掌を開いて灰色一角狼の群れに狙いを付けて素早く詠唱を開始した。


すでに距離は100mに縮まっていた。

「即死」


するとゴーンの右手掌から発生した魔力が前方50mぐらいの空間に滞留して横に広がり薄く黒い靄のカーテンに具現化した。


疾走している一角狼の群れは避けられずにそのまま靄の中に突入した。


すると靄に触れる前は獰猛な食欲に駆られていた一角狼の身体が、靄に触れた瞬間に生命が消えて慣性エネルギーのままに死体となって転倒していった。


苦痛からの悲鳴もなく突然生命を失い転倒する異様な地面の振動音だけが鳴り響いた。


昼間の光環境だから靄の塊を目視できたが夜間なら不可視だろう。


「殺生液呪術に似てる」

スーがポッリと呟いた。


「即死の黒魔術を初めて見たよ」

「いいだろう、我が家に伝わる秘伝だぜ」


「赤龍も即死してくれればいいにゃ」


「高位魔獣にも効くのか、やってみないと分からん」



夥しい一角狼が倒れていたが、やがてダンジョンに吸収されて跡には小さな魔石と牙が夥しく残されていた。


「魔石とドロップ品も長時間放置するとダンジョンに吸収されるにゃ」


クロエとミーナとが拾い集めてゴーンに手渡していた。


「狼の魔石と牙集めたにゃ」


「有り難う」


「すごいわ、今回は楽できそう」


クロエはゴーンを軽くハグしていた。

ゴーンは無言で照れていた。



◇◆◇



一角狼討伐で時間も押して夕方近くになり、街道脇の草原で小川の流れる傍に数多くのキャンプ跡のある区域が右側に見えてきた。


「今からこの小川の傍の草地で今夜の野営の準備に入りますね」


「帝都のゴールデン百貨店で製造させた各種テント群にゃ!」


アベルは早速、数多くのキャンプ跡のある場所から少し離れた小川の傍の草地を今晩の野営地と決めた。


下層に行くほど不整地野営になるから、既存の寝台や設備のうえにテントを被せる構造になる。


早朝に出発するときにはテントを収納して、掘り下げた地下排水溝や地下施設跡地も盛り土して現状に回復する予定だ。



アベルの作業は、寝台として使用する7台のハンモックテントを収納庫から組み立てた形のまま取り出して敷地内に配置した。


食堂セット・トイレセット・風呂場セット・食器入れや調理道具そして鍋釜・流し台・調理台などは個別のコンクリート台座の上に据え付けられており地下排水口を排水構につけてセットして火魔石をボイラーにセットし起動した。


続いて既に組立てある帆布の鉄パイプ屋根付き大型テントを空間収納庫から7張取り出した。


これには6枚の横幕を垂らすことが出来て目隠し用にも使える組み立て済のテントだ。


7張りのテントはそれぞれ食堂テント・炊事場テント・調理テント・風呂場テント・トイレテント用として各設備の上に被せ設置した。


これらの施設はアベルの時空間収納庫の”収納”と”設置”機能を前提に作られている。


ただし、川沿いの平坦な土地で天井との空間がないとフルのシステム設置は出来ない。


例えば岩場の狭小洞窟なら分散して風呂場をシャワー装置に変更しよう。


階層の野営する地形に合わせて自由に個々の設備とテントの組み合わせを変えていこう。


「ではハンモックテントの中に各自の枕・毛布・下着とか食器・ホークなどは入れて下さい。あとテントの覆いの名札が未記入なので各自記入して下さい!」


「アベルがゴールデン商会のお嬢ちゃんに作らせた物で初のお披露目にゃ」


7台のハンモックテントの据え付けを手伝うと、ミーナは素早く一番端のテントの吊るしてある木札に竈門の炭を付けた肉球を押して自分専用のテントにした。


やはり夜刀姫は、アベルのテントの傍に自己点検装置を据え付けた。


するとアベルと夜刀姫とミーナの位置が決まると、とジェンとスーのテントの位置も決まった。


ゴーンとクロエも決り、7人のテント位置が決まった。


早速、テントの名札に肉球マークを付けたテントからミーナが出てきた。


「テントのクッションは抜群にゃ、ただ横にクロークが欲しいのと手鏡・ゴミ箱も欲しいにゃ~」


「気が付かなかったな、今回は空間があるので洗面場セット・クロークセットとテントを張りますね」 



「やった、でも下層の狭い洞窟の階層だとフルの設備やテントは出せないにゃ?」


「狭い洞窟だと、個人用テントとトイレ・シャワーセットなどの分散配置になるよ」 


「階層の広さに応じて出すなら、それでいいにゃ~」


実際に地下階層で野営してみてフルのシステム設置か分散配置かを地形で選択するのが最適解だ。


食事は帝都の料理店で朝昼晩の料理献立で10人分900食を調理して貰いアベルの時空間収納庫に熱いままのスープや肉料理とかを蓋付き寸胴鍋に入れて採れ立てのサラダや焼きたてパンと共に収納してある。


野営では盛り付け程度の手間で食事することができた。


むしろ日々の風呂セットの掃除や化粧トイレセットの清掃や下水処理のほうが毎日の作業時間はかかった。


初夕食で中央に食卓や長椅子を配置してカップ、深皿、ナイフホークやワイン瓶とパン・果物皿などを置いて大型テントで囲い四隅にオゾン草の鉢も置いた。


帝都の料理店味付けの熱いままのスープや兎肉料理とか採れ立てのサラダとパン・果物などが中央テーブルに配置されて食事は始まった。


「肉料理の肉はウサギ肉でいいの?」

「美味しいでしょう、その兎肉は充分味付けして煮込んであるよ」

「私はパンとジャムと果物と野菜サラダでだけでいいわ」


「ミーナは今晩何か仕掛けるの?」


「今夜、出口の洞窟のコボルト達に毒霧を仕掛けるにゃ」


「洞窟の中に人質が生きていたらどうするの」


ミーナは僅かに眉を寄せて困った表情をしたが。


「洞窟の入り口まで近寄れば魔力探知で魔獣が赤色で人質は青色で探知できて、青色がなければ毒霧を風魔法で入り口から奥に流すだけにゃ」


「そうかスキルを聞いてごめんね、明日の朝に成果確認で200の魔石を回収するだけだね」


「ですです、生き残ったボス級が出たらクロエさんの弓でお願いにゃ」


「任せて!」


その後ミーナの姿は夕食を終えてから3時間程消えていた。


他のメンバーは食事後交代で風呂トイレテントを使い、早々に各自のハンモックテントの中に入り明日に備えて就寝した。


一晩中、夜刀姫が不審番に立つので野営地は魔物も不審者も近寄れない。


いつのまにかミーナも無事に戻り、何故か地上の太陽と月の運行と連動して地下階層の輝石の輝きも変化して、夜の時間帯になると完全な闇ではなく薄暗くなった。



◇◆◇



翌日の朝は化粧テントの洗面台で洗顔歯磨きをしてから、食堂テントのテーブルに収納庫から出した熱いままのコーンスープや採れ立てのサラダとパン・果物などが配置されて朝食は始まった。


朝からでも念のために大皿に用意した鳥の唐揚げの山が最初に無くなった。


食事も終わり、アベルはテントや設備をそのまま収納して野営地の溝や地下槽も埋め戻して後処理もキチンとした。


早朝のうちに、左右の5つのコボルト洞窟内をミーナとジェンとクロエが魔石回収をしているとゴリラぐらいの鉄剣を持った犬頭コボルトが1匹飛び出してきた。


「コボルトロードにゃ!」


クロエはダークエルフ独特の長弓に矢をつがえて構えていたので、矢に魔力を込めて3本早打ちした。


放った矢はコボルトロードが身を翻したがホーミングして3本共にコボルトロードの側頭部と喉と心臓に深々と突き刺さった。


“グギャ”


コボルトロードは絶叫して鮮血を吹き出しながら転倒した。


「俺の見せ場はどこよ」


「雑木林の枝に止まっている極彩色の鳥がいるにゃ」


「あの極楽鳥は尾羽に猛毒があるみたい」


「では焼き鳥はだめにゃ」

「酒がなければ焼き鳥はいらん」


7人は手早く洞窟内で灯火魔法を使いながら魔石回収を終わり、ミーナが案内した2階層オーク村への階段洞窟にそのまま踏み込んで行った。






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




PV23,628アクセスに達しました、本物語を読んで頂きこころから感謝いたしますm(-_-)m! 

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