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#61 ヤーセンへの夜間飛行



数億の星明りが夜空に渦巻き、赤い連星の月明かりが地上を照らしていた。


今アベルたちはヤーセンへの夜間飛行をしている飛行船の中にいる。


上級魔法を使える俺の仲間はヤーセンにいるスー・マーリンしかいなかった。


獣人国領の迷宮都市ヤーセンまでスー魔導師を説得するために、誰も経験のない飛行船の夜間飛行に挑戦していた。


操縦者Aに磁石の北西の方角に1000㎞飛行したら空き地を見つけて着陸するように指示してある。


行き過ぎて北極の神獣の大陸まで飛行したら、イフリートの炎など悪夢すぎる。


宰相から聞いた話で不思議厨子は、同じ大陸に住むバハムートから当時の魔王が授かった古代遺物らしい。


着陸場所で夜明けを待ち再度上空から迷宮都市ヤーセンを探して、冒険者ギルマスをやっているスー・マーリンに赤龍退治までの助勢を頼んでみよう。


ソドム魔導国での携帯通話器の音声が再び頭に響く


(西エルフ聖樹国聖都アース政所から、スフィ巫女が突然倒れて昏睡状態だそうです。薬草では意識回復せず呪術ではないかとの緊急連絡です)


音声を追い払って暗い夜空を睨む俺の頭に今度はスフィの声が蘇る。


(ご主人様のそばが私のいる場所なんです。私を置いて行くんでしゅか?)


クシャクシャの緑の髪に水色の瞳をしている尖った耳の小柄な痩せたエルフの幼女だった。

麦わら帽子を掴み震えているエルフの少女がアベルを睨んでいた。


(助けてくれるのでしゅか? )


ああ、絶対に助けてやる、1度だけ願いを叶えてくれる”賢者の石”がダンジョンギルアのB30の宝箱にあるそうだ、俺は赤龍を倒して”命の雫”を願おう。


命の雫はどんな呪いでも難病でも治してくれるそうだ。

俺が持ち帰るまで生きてくれ。


王都から1000㎞夜間飛行して見つけて着陸した土地は砂丘だった。

上空からも白く目立つ砂地で、所々に木の柱が地中から立っていた。

周囲に人家が見えず密林の中の不思議な土地だった。


とりあえず飛行船の係留索を柱に結んだ、空港としては理想的だ。

皆も船の外に出たのでアベルも船外に出て、砂丘に座り夜明けを待った。


明るくなった北の夜空に大きな輝く星を見つけた。


すぐに早暁の光が射して砂丘の中に蠍みたいな昆虫が潜って入った。


遠くの山脈から判明したこの広大な砂地は爆撃後5000の死霊が徘徊して砂漠化したスライム雑木林とオッタル軍ヤーセン駐屯地跡地だった。


朝日に照らされた砂丘の上に係留した硬式軽銀飛行船が見える、やがて乗るために立ち上がったアベルの赤いバンダナが風に揺れた。


眠り続けるスフィの傍に行きたいとアベルは痛切に想う。



◇◆◇



場所が判り前回と同じ都市正門横の草原に飛び飛行船を着陸させた。


アベルと夜刀姫と移転者ミーナ、ジェド冒険者、ジェン狐娘など全員が飛行船から降りて、アベルは飛行船を収納した。


さあ、迷宮都市ヤーセンの冒険者ギルドに行ってスーギルマスと話し合いだ、ただ今回のギルア攻略は地下30階層までやるから1月間程ギルドを空けさせることになる。


話し合いで協力が得られれば一番いいことだよ。


「私が先頭に立ちます」

「よろしく頼む」


前衛は夜刀姫、ジェドで中衛アベル、ジェンで後衛がミーナと組んだ。

何も問題はないはずだ、アベルたちは無事に門を通過してギルドに着いた。


冒険者ギルドの扉を開けてホールの中に入り受付に歩こうとしたら、スーが2階から階段で1階ホールに降りてきてアベルたちに話しかけた。


「いらっしゃいアベル、2階の会議室を用意してあるわ」

「流石だね、例の件で手伝って欲しいことが出来てね」


「それ以上は会議室で」


「何かあるの」

「ここのギルド員はあの信徒もいるからまずいわ」


「そうか」


2階の会議室にスーとサブマネージャーのハンナそしてアベル、夜刀姫、ジェド、ジェン、ミーナと中に入り扉を閉じた。


夜刀姫が扉の横に立った。


「オッタルはダンジョンギルアの赤龍と合体して、奴はスフィに死の呪術を掛けている、殺す以外にない」


「私のギルマスだった父親を殺したのはオッタルのヤーセン侵攻軍よ、オッタルを殺す手伝いなら喜んでやる、ただお願いがあるわ」


「赤龍はB30の階層主だから長期戦が予測できる、腕の立つヤーセンのギルマス代理が欲しいわ」


「俺がギルマス代理になろう」

「ジェド有り難う」


「明日からスーとアベル、夜刀姫、ジェン、ミーナと討伐チームを組みダンジョンギルアに潜る」


「前に帝都のカインに洞窟野営の道具依頼をしていた、

ミーナは俺を連れて帝都まで移転往復してくれないか」

「分かったにゃ」


「帝都まで移転往復で魔力消耗が激しいだろう、今日は休んでダンジョンギルアは明日からにしょう」


「「「「分かった、にゃ」」」」


作戦会議を終えて7人が1階受付まで降りて、ジェドを前に出してサブマネージャーのハンナが職員に紹介した。


「ヤーセンギルドの職員はそのままで聞いて、スーギルドマスターは指名依頼で1ケ月間程の不在になる、その間こちらのジェド殿がギルドマスター代理となります、挨拶を聞いて頂戴」


「俺はジェドという、短い間ですがよろしく頼む」


「「「「代理、よろしくお願いします! 」」」」


アベルはこれからミーナと帝都に飛び、カインに頼んでいた品物を収納してからダン侯爵に現況報告しよう。



◇◆◇



帝都のダン侯爵秘密アジトに移転したアベルたちを応接室で待っていたのはダン侯爵と意外なルイ皇子そしてカイン執事だった。


「オッタルはいまどうなっているのか説明してくれ」

「オッタルは赤龍と合体して地上支配の機会を狙っています」


「赤龍と合体してとはどういう意味だ」

「肉体は赤龍に食べられています、魂魄が龍と融合しています」


「もう得体のしれないバケモノだなそれは」

「そうです、バケモノが地下大迷宮スーンを動き回り全ダンジョン支配を狙っています」


「奴は死んでも厄介ごとを地上に残すのか」

「スフィ巫女も奴の黒呪術で死の床に就いています、呪術者を倒します」


「アベル殿がバケモノ退治をしてくれるのか」

「やります、カインに頼んであったダンジョン野営道具の引き取りも来都の目的です」


「アベル殿の話は私の方から兄上に報告します」


「アベル様、庭にダンジョン野営道具と食料品を集積してあります」

「了解、ダンジョン道具・生鮮食料を収納したらヤーセンに戻ります」


「赤龍オッタルに勝利することを願っている」

「後日、戦勝報告に参ります、では庭に出よう」


秘密アジトの庭に出たアベルはバイヤー役のマイク・ハーベスの付き添いで、百貨店・専門店で購入した洞窟野営用のハンモックテントや調理器具・浴槽・トイレ等の取扱い説明を受けた。


またヌールイ湖畔で有効性が確認した魔導具の携帯通話器も入手した。

アベル自身の空間収納庫に集積された全ての道具や食料品を収納した。


マイク・ハーベスにはパトリシアが赤薔薇隊の分隊長に昇進したことを伝え、買付けの功績に特別賞を出した。





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


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