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#60 重力範囲魔法グラビティの魔導書



スフィ!


スフィが倒れた、なぜ彼女を狙うのだ、憎ければ俺を狙え!

なんて卑劣な・・・

「ジェンの霊感では北の地面の下から黒い波動は来るそうにゃ」


ターネリア州の北の大地ならダンジョンギルアしか考えられない。

だめだ、地の底に追いかけて術者を殺すしか呪術は阻止できない。

術者を殺すまでスフィの細い身体が持って欲しい。


しかし飛行船で飛ぶ前にアベルはソドム魔導国の王都ゲヘナで、国王ルシファーに亡き王女ロゼ姫のゴーレム製造を履行する約束もある。


ソドム魔導国は事前に指示したロゼ姫の全身画そして工房と鋼鉄製作業台が、必要資材はチタンインゴット・白金インゴット・ミスリル銀インゴット・そして魔鋼鉄インゴットと魔晶石、最後に魔水入り容器を準備出来ているのか。


もし資材が有るのならば一刻も早くゴーレムを製造してギルアに向かいたい。

今後の獣人国やダンジョンシバ運営上大切な魔導国との友好関係は維持したい。


「スフィ巫女の件は傍受で聞かせてもらった、何か手助けできることがあれば教えてくれ、準備しょう」


「陛下の御気持ちだけ感謝します」


ドードー教の地下洞窟捜索からおよそ2時間後。

アベルたちは飛行船を降りて、国王ルシファーと宰相の前に立っていた。


「亡きロゼ担当画伯も工房も必要部材も指示通り準備した、伴侶の緊急時に済まぬがゴーレムを製作して貰えないだろうか」


改めて城中で数多く動いている従者ゴーレムを観察すると、魔王島の技術者ゴーレムとそっくり同じ形状だった。

人間の関節や手指機能を持つ作業に特化されたモデル人形だった。


「直ちに工房でゴーレム製作に入ります」


「すまぬが作業中を技術者たちに見学させてよいか」


「工房でのゴーレム製作時に、俺の動線に入らなければ大丈夫です」


メンテナンス時の参考にしたいのだろう。

傍に控える魔導師の案内で国が用意した地下工房にアベルたちは向かった。


工房に入るとアベルは驚いた魔王島地下4階の研究所そっくりな工房が用意されていた。


事前に指示したロゼ姫の全身画そして工房と鋼鉄製作業台が、必要資材はチタンインゴット・白金インゴット・ミスリル銀インゴット・そして魔鋼鉄インゴットと魔晶石、最後に魔水入り容器を準備出来ていた。


これはどうしたことだ、魔王島の環境が完璧に再現されていた、港でフレーム馬車で苦労したのはアベルが勝手に倉庫で作業開始したからだな。


ここまで工業力が近似しているのは400年前に魔王島から消え去った民族、そして490年後に魔王島に帰島する人々はここソドム魔導国の人達だ。


記憶にあるガリヴァー旅行記の天空の城「ラピュータ」に住んでいた市民たちの様だな。


元ロゼ姫御付きの宮廷画伯の人がいたので、秘匿していた入浴中のデッサン画も数枚貸し出して貰った。


こちらはボードに木炭で粗いタッチのデッサン画だが人体の構成比や肉体の動き表情が生きて伝わってきた。

8歳の少女が画中に生きていた、お澄ましの静止画では伝わらない秀作だった。


アベルは白ボードの粗いデッサン画を王女ロゼの参考画に採用した。


三度目なのでデッサン画だけで充分にイメージできた、まだ8歳児の幼児体形でも将来絶世の美人が約束された可愛らしい銀長髪で紅い瞳で笹耳小麦色の肌のダークエルフ少女であった。


ボードのデッサン画をイーゼルに立て掛けて、魔水晶石等の各種素材を作業台で再確認して、魔水缶の中身も確認して全ての召喚の準備完了を確認した。


アベルは脳内イメージの元の入浴中の少女裸身画を見つめて“ゴーレム召喚”と唱えた。

すると作業台周辺の素材群が光に包まれて激しく輝いた。


アベルはあまりの眩しさに眼を閉じたがやがて瞼を開けると作業台上にデッサン絵そっくりなダークエルフ美少女が横たわっていた。


作業台上のインゴット群は消滅して、記憶中枢になる魔水晶石も消えていた。


召喚したゴーレムの長期間作動のためのこれまでの経験則から起動の前に素早く鍛冶で胸部切開を施して、胸部内にある魔水晶石を確認してから体腔内の空間を魔水で満たし保護した。その後、胸部を閉じて錬金術で融合した。



◇◆◇



夜刀姫のこれまでの日常生活の知識や基本的な護身術そして10曲の竪琴リラの演奏技術も王女ゴーレム”ロゼ”の魔水晶石に知識転写されている。

宮廷作法は元王女付き従女のアンヌに教わって貰うしかない。

呪術で傷ついた王族の心を癒すゴーレムになって欲しい。


周辺装置の王女ロゼゴーレム専用カマボコ型自己点検装置も製作した。

毎晩1回は水晶蓋を開けて躯体を横たえて金属躯体内の発生滞留した静電気除去をして、体腔内の魔水晶石・魔水計測や外骨格・手足などの破損状態を自動測定する魔石装置だ。


異常が検知されれば水晶蓋が赤色表示される。

メンテナンスは宮廷魔導師の人たちにお任せしよう。

下着や衣装も王女の衣服が残されていて、サイズもピッタリだった。


身体の構造は似ているが、顔や毛髪は静止画を参照して微細補正を掛けた。

銀長髪で紅い瞳で笹耳小麦色の肌のダークエルフ美少女のゴーレムが誕生した。


王女ロゼのゴーレムは王族の癒し対策として召喚した、使用場所は後宮の離宮と庭限定の行動範囲が予定されている。


アベルは作業台の上の王女ロゼのゴーレムに触れて“起動せよ”と命じた。

すると台上の金属ゴーレムが瞼を開けた。


ゆっくりと王女ゴーレムは作業台上で半身を起こした。

アベル「貴女は下着と衣服を着て台から降りなさい」


ロゼ「はい、マスター」


アベル「貴女の名前はロゼと呼ばれる」


ロゼ「はい、私はロゼです!」


アベル「ロゼはソドム魔導国の国王ルシファーの亡き王女のゴーレムとして召喚された。今後の命令権者は王族の全員だよ。」


ロゼ「了解しました!」


アベル「カマボコ型の自己点検装置も製作したので、毎晩1回は水晶蓋を開けて躯体を横たえて金属躯体内の発生滞留した静電気除去をして、体腔内の魔水晶石・魔水計測や外骨格・手足などの破損状態を測定しなさい」


ロゼ「了解しました!」


王女ロゼのゴーレムの身体作動も異常がないようなので、見学していた宮廷魔導師長に自己点検装置も添えて引き渡した。



◇◆◇



引き渡してからおよそ1時間経過後。

アベルたちは再度、国王ルシファーと宰相の前に呼び出された。


「亡きロゼに瓜二つのゴーレムを心から有り難う、アベル殿もこれからダンジョンギルアの赤龍退治に行くそうだが、報酬として何か手助け出来る物はないかと余も考えた」


「アベル殿は闇属性魔力をお持ちだ、ならば祖先伝来の魔導書を1冊差し上げよう」


「戦闘に役立つ魔術ですか」


「そうだ、すまぬがこの魔導書を触って頂きたい」


黒い魔物の革で作られたハードカバーの厚い本を近習がアベルに渡した。

すると本から7センス感覚が覚醒される魔力が流れ込んできた。


「なにか魔導書から7センス感覚が触られる感覚があります」


「それから、魔導書を開けと囁く声が聞こえます」


「この魔導書は1子相伝のもので重力範囲魔法グラビティが刻まれている、ロゼが受け継ぐはずの書だったが、この魔導書を差し上げよう」


「では魔導国からグラビティ相伝が絶えるのでは」


「いや、国宝庫にはグラビティ魔導書が1代1冊生まれる不思議な黒厨子があるので心配無用です」


「むしろその魔導書は亡きロゼの代わりにアベル殿に赤龍を討って欲しがっていると余は感じた、是非この魔導書を受けて欲しい」


「分かりました、魔導書を頂きます」


「その魔導書を開くと、グラビティ魔法が使える様になります、ダンジョンギルアB12の砂丘の特定箇所に生息する”重力虫”を樹液のペンダントに閉じ込め身に着けて初めて強力なグラビティ魔法が行使できます」


アベルが黒い魔物の革で作られたハードカバーの厚い本を開き古代文字の描かれた最後の頁までめくると、脳内の7センス感覚が覚醒される痛みが知覚された。


同時に魔導書が青い炎で燃え上がり灰も残らずに掌の上から消失した。

脳内詠唱句や魔法陣での範囲指定そして実行ワードが脳内に浮かぶ。


「B12の重力虫で強化された重力範囲魔法は、ダンジョンギルア階層のB26吸血鬼始祖・ B27結晶龍・ B29白龍・ B30赤龍に特に有効です。これで押さえて他の魔導師が攻撃できます」


ダンジョンギルアB12の砂丘地図と樹液ペンダントを1個渡された。


「有り難うございました」





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



PV19,571アクセスに達しました、本物語を読んで頂きこころから感謝いたしますm(-_-)m! 

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