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#53 アーサー皇帝と水晶宮のアベルたち(1)



アーサー皇帝は毒を盛られた父親のヨハン上皇の寝室から出て来た。


今日はだいぶ体調が良さそうに見え血色も良くなって本当にうれしい。

母親のハンナ太后もヨハン上皇が元気になり嬉しそうだ。


叔父でもあるが、父に毒を盛ったオッタルを殺せる日がやっと来た。

皇居の渡り廊下を護衛と歩きながらフェン公国の戦後処理を考えていた。


このまま知らぬふりを続けて、フェンに行幸し敵が餌に喰いつくのを待とう。

フェン公国は取り潰して、弟のルイ皇子がルイ公国を興す予定だ。

属州ノーム自治領は、功臣ダン侯爵に進駐させてそのまま与えよう。


次弟のルイ皇子が問題で麻薬好きの悪癖さえ直せば重用するのだが、薬漬けのままだと人前に出せないので生涯地方領主で終わりそうだ。


むしろ末弟のカール皇子がアイラ王女の影響か、最近は半島で実績のある近代化施策を帝国に上申してくる様になり将来は宰相にもと期待する。


ネロ公爵とオッタル翁は親族もろとも疫病で病死したと公表しよう。

皇族間での争いは貴族が参加して内乱になるので一族殲滅は鉄則だ。


今後のダンジョンエデンの経営は皇室財産として直接経営しょう。

ダンジョンエデンとカルマには管理に長けたアムル人を復帰させるしかない。

地下ダンジョン魔石は公害を出さない採掘方法に改めないと地下水系が汚染してナスル大陸が腐海化する。


聖樹国の西エルフ聖樹国7ケ条回答文については受諾する方針だ。

シバとギルアの喪失は残念だが、大公が卑劣な方法でやり過ぎた結果だ。


帝国は産業を興して工業国となり、エルフ達は精神文明で自然に生きる。

これからは武力で征服ではなく、交易でウルク大陸に市場を拡大すればよい。

原料の魔石や素材・鉱石を購入して、廉価な衣料や日用品を供給する。


行先の水晶宮で待たせている魔王の代官は帝国の国是から正式に拝謁させるわけにはいかないが、オッタル打倒の方向性が同じならば暫定協力しよう。

産業を興し生活を豊かにするために魔導技術を持つ彼らを取り込むことは必要なことだ。


皇居宮殿から渡り廊下を歩き外国使節用の瀟洒な水晶宮の応接間に足早に入った。



◇◆◇



皇帝が見えると応接間入り口に立つ騎士が声高く叫ぶ。

「アーサー皇帝陛下の御成り~!」


応接間の椅子に座る全員が起立してアーサー皇帝を出迎えた。

男性は右手を心臓の上に載せて礼をして女性はカーテイシーをして挨拶をした。

皇帝と近衛騎士以外は全員帯刀は受付に一時預かり中であった。


「公式儀式ではない、どうぞ楽にして貰いたい!」

皇帝も素早く正面席に座った。


最大版図のノルデア帝国の主アーサーは威厳のある引き締まった顔立ちで20歳くらいの若い皇帝だった。

油断のない知性に溢れた目がアベルたちの様子を鋭く観察している。


皇帝の左右はホレーショ宰相とカール皇子が座り、執事と近衛兵が背後に立った。

ロの形にテーブルが配されて左右には仲介役のダン侯爵とトリッシュ女伯爵が座った。それぞれ侍女が背後に立つ。


対面側には帝都滞在中のアイラとジェンそしてミーナとジェドとアベルが座る。

従女姿の夜刀姫がアベルの背後に立つ。


非公式ながらノルデア帝国アーサー皇帝と面会出来て、対オッタル戦略や西エルフ聖樹国7ケ条回答文についての帝国側反応を探ることが今回の皇居訪問の主題だ。


ホレーショ宰相の司会により出席者全員の紹介が行われ早速会議に入った。


「さっそくだがフェン公国情報に礼をいう、情報員による現地での工作裏付けも取れた」


「帝国に忠誠を捧げる私たちにとって当然のことと存じます」


「ご苦労です、さっそくだがフェン行幸は予定通りに執り行い、期間中は皇帝直轄軍とダン侯爵軍がフェン公国隣のゲヘナ砂漠で大演習を実施すると公告掲示中です」


「実際にはどのように?」


「今回は3つの作戦が発動中でして、ネロ公爵が謀殺を企むヘル城とオッタル翁が待ち伏せで潜むヌールイ湖畔、最後はエリツィン将軍が占拠中のノーム半島に味方の3部隊が接近中です」


「ノーム半島では、某の軍8000とトリッシュ軍4000の連合軍12000人は既にノーム半島に越境中でして、ノーム半島の鉄鉱山とウルク市を占拠中の敵駐屯部隊5000人に奇襲攻撃を仕掛け全域を作戦通りに制圧してご覧にいれます」


「うむ、期待している、余もこれから早馬で軍と合流する」


「フェン公国では、近衛騎士団10000人は宿営先のヘル城内に入り、皇帝寝室の吊り天井カラクリを確認後に城門を閉めて城内制圧をします。

ヌールイ湖畔オッタル陣地の5000人は背後から皇帝直轄軍50000人が奇襲攻撃します」


「今回はヘル城にて毒見役にジェド殿を、寝所の空中盾でジェン殿を、脱出でミーナ殿の協力をお願いします。」


「国境のフイン街で3人は行幸馬車をお待ちしております」


「左様か、合流時点で従者馬車に乗車願う事となる」


「私は空中から行幸馬車の安全をお守りします」

「お願いする。それとネロ公爵とオッタル翁は捕縛の必要はなく、打ち取り次第に首桶に入れて皇帝本陣に提出されたい」


「承知しました」


「戦後処分だがフェン公国を廃してルイ公国を興す、ノーム自治領はダン侯爵領とする、商都シホンはトリッシュ女伯爵領とする、アムル人をダンジョンエデンとカルマの管理人に戻す4項目が固まった」


「メラリ港の隣領地ですね、有り難うございます」


「念願が叶いました、有り難うございます」


「アムル人のこと、有り難うございます」


「では他の議題がなければ本日の会議はここまでとする」


「よろしいでしょうか、既にお手元に届いてある西エルフ聖樹国7ケ条回答文についての帝国のご見解をお聞きしたいのですが」


【西エルフ聖樹国7ケ条回答文】

1.アケニア騎士団領の承認は取り消す。

2.同上領土は獣人自治区とし、獣人自治政府を承認する。

3.ダンジョンシバはシバ族と魔族の共同管理とする。

4.ダンジョンギルアはドアーフ族とエルフ族の共同管理とする。

5.ウルク大陸の冒険者ギルドマスターは現地人とする。

6.ウルク大陸上に帝国駐屯地もノルン人居住も認めない。

7.魔王島への干渉は魔導国への宣戦布告と認める。


アベルは女王クレアのアーサー皇帝への挨拶文(写)と共に7ケ条回答文を取り出したが、この瞬間応接間の帝国側要人の空気は固まった。





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


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