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#49 ジェド・バーデンの冒険(3)



ルビー鉱山の赤茶けた岩肌に、水蒸気の湯気が流れ雲みたいに漂っている。


ジェドは早朝の露天風呂に入り、アルナカ峠の盗賊たちの事を思い出しながら波紋の広がる茶色のお湯と風景を見ていた。


到着日は昼過ぎにルビーの街の入り口に着き、警備の兵士に緑風5人の身柄を預けてアルナカ峠の盗賊たちの事を報告してからが大騒ぎになった。

報告者がゴールデン商会長と判明してから取り調べは柔らかくなった。


ギルドからも職員が来て冒険者絡みの件で説明を求められた、結局代官所とギルド双方に盗賊から押収した品物全部と緑風の5人を預けて夜まで経過説明をしてから指定された宿屋に商隊一同は泊まって一夜が明けた。


当然その日だけで済むわけではなく、代官所とギルドの合同調査団が現場検証したり、連日の聴取が続いてもう5日間足止めになっている。


ジェドはのんびりと朝風呂に入っている、ここの泉質は塩味で色が茶色のお湯だが暖かい疲れの取れる温泉だった。

多くの盗賊を殺した澱みたいな心の疲労が自然に溶けていく。


ヒカルたちは買い物で先に街に出かけている、ジェドも午後にギルドに呼ばれているのだ。


盗賊村の道具は藥研4台と2口の吸い口の付いている煙草の水パイプ10個かな、下にアルコールランプがあり火皿に何かの焦げたカスがこびりついていたのが各家に必ずあった。


燃やしたあの草原にはケシの枯れ草がやたらと多かった、”もったいない”という賊の言葉の意味がその場では解らなかった。


思い出していた前世の記憶で九龍城アヘン窟で痩せこけた人が同じようなパイプで阿片を吸っている写真を見たな。

人間から尊厳も誇りも奪い取っていく麻薬で財をなす悪魔たち!


水パイプの道具やケシの種の栽培や精製もあるから、背後には大きな組織が絡んでいるかも知れなかった。

今日は午後からギルドに呼ばれているから、判決というか今回の処分と報酬の受け渡しや調査結果も聞かせてもらえるだろうと期待する!


ジェドは宿の岩風呂から上がり服を着て受付に声を掛けてからルビー鉱山の街に歩み出た。

午前中なのに鉱夫らしい朝帰りのドワーフたちが大勢料理店にいる。

ダン侯爵領ではドワーフ族と融和政策のせいか良好な関係を保っている。


ドワーフたちが欲しがるのは火酒と呼ばれる蒸留酒だ!

地下深くの危険な仕事の反動か地上ではひたすら飲んで食べて騒ぐ彼らの姿や、精練所の黒煙を吐き出す高い煙突を見て、ここは鉱山と精練の街にいることを強く意識した。


ギルドへの途中で武器屋に寄り消耗した短矢を買い、薬屋で在庫の無くなった毒草類を買い込んだ。

帝都ベルブルグへの旅はまだ始まったばかりだ、お嬢の護衛はまだ続いている。


ジェドは川魚料理のある小さな料理店を横丁で見つけて昼飯を済ませた。

食事も終わり店を出て石畳の通りを歩くと冒険者ギルドの建物が見えた。

階段を上りドアを開けて中に入るとホールにある酒場で食事しているヒカルたちからジェドに声が掛かった。


「ジェド一緒に行こう、2階の会議室で話があるそうよ」


「分かった、一緒に行こう」



◇◆◇



食事の終わった紅光メンバーと6人で二階の会議室に入って行った。

既に商会長代理で執事フランツさんが席に座っており、冒険者ギルド側ではギルドマスタージャックとサブマスターベティも正面席についていた。


その隣には侯爵家ルビー街代官のフィル・フォン・ホフマン男爵本人が座っていた。

”緑風”の犯罪奴隷落ちもあり専属鉱夫が欲しい代官所のフイル男爵も出張ってきたのか?

女性のサブマスターベティが司会者らしい


「本日司会を務めるベティです、では顔ぶれも揃いましたので早速Bクラス緑風のギルド規約違反についての処分と、アルナカ峠盗賊村の押収品の売却報告との2件を報告いたします」


「峠道での襲撃に伴う盗賊の押収品についてはいいのですか?」


「盗賊の現行犯押収品は慣習法が適用されますので、商会・紅光・ジェド氏の3者均等割でよろしいかと」


「同意します!」

「承知した!」

「了解した!」


「先ずは簡単な案件から、盗賊に内応していた緑風パーティー員は犯罪行為禁止のギルド規約違反ですので規定通り犯罪奴隷への降格処分となります」


「緑風5人全員をルビー鉱山で買い取ろう」

代官所監視の鉱夫にして暗殺されないように地下で保護したのか。


「犯罪奴隷の買取代金も慣習法が適用されますので、商会・紅光・ジェド氏の3者均等割になります」


「「「承知した!」」」


「本件の問題点は、アルナカ峠盗賊村から発見された阿片栽培の証拠品の数々です。アヘンを誰が栽培させていたのか、何処に持ち込んでいたのかが不明です!」


「代官所ではなにも情報は掴んでないのですか?」

「盗賊村の押収品から帝都薬店の関与が疑える程度だ!」


「帝都薬店はベルブルグ商業地域に本店があり、モアボ組とのつながりもありいい噂を聞いた事がない」


帝都に着いたら俺が秘かにモアボ組を家探ししてやる!


「代官所は帝都薬店に強制捜査をしないのですか?」


瞬間、男爵の片眉がピクリと動き、苦しそうな表情になり。


「帝都薬店はフェン公国の指定商人で我々は関与出来ないのだ」


混乱の元凶フェン公国の罪業はもはや許蓉できるものではないな!


「本件の唯一の生証人の緑風5人からはフェン公国のエリツィン将軍から地位を餌に犯罪加担させられたと供述が取れています」


全ての証拠・証言はフェン公国が黒幕だと指し示している!

今回の盗賊村からの押収品は、発見したおびただしい樽や箱の中に大金貨36枚、金貨570枚、銀貨990枚、銅貨1434枚があった。


あとは生活物質で麦などの穀物126t、ワイン43樽、干し肉69t、古着寝具類多数、武器防具多数、水樽多数、薪多数、飼葉多数と輓馬10頭と荷馬車5台が押収したすべてだった。


ギルド裁定で商会・紅光・ジェドの3者均等割で貨幣は1者当たりの支払は大金貨12枚金貨190枚銀貨330枚銅貨478枚となり1億4234万ギルの数個の革袋が渡された。


盗賊村のアヘンや馬・武器防具・奴隷などの売却代金で1人当たりの支払は1億1021万ギルの革袋が渡された。


渡された革袋はそのままでジェド達はその場でギルドに預金手続きをして身軽になった。

押収した食料品や古着等は代官の勧めで孤児院経営の教会に寄付した。


翌6日目の早朝、水、食料品の在庫を確認してからゴールデン商隊馬車10台19人(商会3人、御者10人、護衛6人)は朝霧のなか帝都に向けて出発した。





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


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