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#46 ジェン・フォックス誘拐未遂事件



帝都ベルブルグの外周環状道路とハル川に挟まれたダン侯爵の支城は城郭であった。深堀があり石壁の高壁と見張り塔と跳ね橋が外観である。


城内には兵舎、厩舎と司令部建物、倉庫とが営庭を取り囲んでいた。

ここは都市計画で住宅地域を守護する帝都警備隊の基地でもある。


先月元老院での査問会が成功してオッタル大公を摂政解任に追い込めた日から中間派貴族達のダン侯爵詣でが始まり連日馬車が訪れている。


宮廷の勢力は完全に皇帝派が主導権を握り、中間派貴族達はアーサー皇帝支持派へと素早く鞍替えしていた。

ノルデア帝国貴族の大部分はアーサー皇帝支持に結集した。


叙爵されたネロ公爵でさえ皇居に早々と参内しては2皇子の婚約祝いを持参してアーサー皇帝のフェン公国への行幸を嘆願している有様であった。


皇帝行幸の宿泊の為にヘル城の改装工事まで施工していると説明していた。

霧のヌールイ湖の絶景を力説しており、引退したオッタル翁もガイドとして現地案内をするそうだ。


ダン支城内司令部建物の大会議室では大勢の貴族達が談話しており、ネロ公爵の皇帝への阿諛追従を話題にしては笑いに興じていた。


ダン侯爵も疲れて執事セバスと応接間に引き揚げてきたら、ミーナに連れられてアイラ王女が待っていた。


「本日はダン侯爵様の査問会でのご活躍が魔王島にまで聞こえてきましたのでお祝い言上に参りました」


「流石に早耳ですな、実はこちらもアイラ姫にはお話がありまして丁度良かったです」

「どの様なお話でしょうか?」


「実は魔王島の”妖精と流れるスパ”の噂が皇室にまで届きましてな、三男のカール皇子様がえらく興味を持たれたご様子で是非とも入浴体験をとご希望しております!」


「まあ、それでは島の鉄道に同乗してご案内いたします 」


「その案内はアイラ姫ご自身がすると伝えますがよろしいですか? 」


「と言いますと? 」


「アイラ姫は私の養女として皇子様を案内して欲しいのです 」


「なるほどお見合いですね、喜んでお受けいたします 」


「アイラ姫は潔いですな 」

「貴族としてクマリの血筋を残すのはこれしかありますまい 」


「その際には、ミーナ殿が皇子様の馬車の送迎をしていただけますでしょうか? 」


「承知いたしましたにゃ 」



◇◆◇



 このたびヨハン皇帝の次男ルイ皇子18歳とトリッシュ女伯爵長女アナ15歳との婚約が決まり、慶事は重なり3男カール皇子17歳と元クマリ王女アイラ15歳とのダブル婚約披露宴となり調理人や侍女たちは大忙しだった。


白猫人ミーナもアイラ王女の侍女としてベルブルグ島の皇居内宮殿の婚約披露宴に参加していたが、小間使い代わりにあれこれとこき使われていた。


会場横の別館はオッタル大公の時から皇居内での公国宿舎となっている。


「にゃ、にゃ、にゃ~忙しいにゃ~猫人族長もここでは小間使いにゃ~」


ん?敷地内にある別館そばを多量の食器を持って走っていたら半地下の鉄格子の窓から見覚えのある狐色の耳がぴくぴくと動くのが見えたにゃ?


あの形と匂いは今朝まで一緒だった警護役のジェンではないかにゃ?

なに遊んでいるかにゃ~


「ジェン~見つけたにゃ、隠れてても無駄にゃ!」

「助けて~うぇ~ん、ここは地下牢みたいです~」


「にゃんと!もっと詳しく、どうしたにゃ?」


「皇居の大広間で披露宴設営のお手伝いをしていたら会場でいやらしい中年男が私の手首を掴んで家来みたいな人達に渡してこの地下牢に入れたんですぅ~うぇ~ん」


(3時間前に遡る)


「ほう、狐人の少女とはめずらしい!是非とも味わってみよう」


恐怖に立ち竦む狐人の少女従女の胸や腰にネロ公爵の好色の視線が注がれて素早く少女の手首を掴むと家臣に地下牢に入れて置けと命令した。


ネロの女漁りの癖で考えて、今夜にでも狐女をじっくりと賞味してみるつもりだ。


先ほどの皇帝への公国招待の言動に自己嫌悪を感じての口直しの意味で狐人少女ジェンが選ばれたのだ。


次の瞬間にはネロの頭の中ではどの様にして招待した皇帝を謀殺するかの問題で一杯になっていた。



◇◆◇



(別館の地下牢の中では)


「ジェン、助けに来たにゃ~!」


「ミーナさんは二度目で有り難うです、ここに時々番人が見廻りに来ます」


「分かった、この建物にいる人間は眠らせて来るにゃ」


ミーナは腰バックの中の眠り薬分包を選び姿が消えた。


皇帝の離宮なので天井材は上質の材料を使用しており、石壁との斫り工事もしっかりと施工してあった。

移転能力持ちの忍び猫人ミーナには室内を確認していくことは簡単だった。


1階から3階まで室内を偵察して、在室ならば化粧天井板をずらして眠り薬を散布して次の部屋の天井空間に移転していった。


最後に3階の奥の部屋に見たのはオッタル翁とネロ公爵とエリツィン将軍の謀議中の姿であった。


もう1人黒魔術師も同席していて室内の会話が漏れないように魔術で防音壁を天井と壁に張り巡らしていた。

諦めてミーナは地下牢内に移転した。


「眠らせてきましたか」


「いや、3階の奥の部屋で謀議中の魔法使いがいてダメだった」


「葛の葉を使いましょうか?」


「なにそれ、初めて聞くにゃ」


「葛の葉は狐族だけの呪術ですから、正確な場所を教えて?」


ミーナは額をジェンの額に着けて思念伝達をした。


「葛の葉を始めます」


ジェンは葛の根茎を傍の水壺に入れると、九尾を動かして呪語を呟いた。

水面が輝き水中から茎が伸び出してきて鉄格子の間から外壁をつたいグングン上に伸びて行った。


「魔術で周囲を防音しても聞こえるのかにゃ」


「無駄です、敷石を打ち砕いてもこの地下茎たちは下から侵入します」


「呪術は恐ろしいにゃ」


いつの間にか地下室の水壺の周囲は葛の葉で覆われていた。

しばらくすると4人の会話を葛の葉が喋り出した。

4枚の葛の葉に口が開き互いに会話をしている。


オッタル葉「ヘル城の吊り天井は完成したのか?」


ネロ葉「完成しました、即死級の毒薬も入手済です。」


オッタル葉「そうか儂の5000の兵たちの配置は終わった、蓋つきの人が隠れる穴まで堀って見ただけでは無人の森林じゃ。」


エリツィン葉「埋設陣地が完成しましたか、ヌールイ湖畔に!」


オッタル葉「これ天網恢恢疎にして漏らさずじゃ、誰かに聞かれると水泡に帰す。」


黒魔術師葉「壁や天井は魔術で防音しており、漏れるわけがありません。」


そのあとは4葉の高笑いの声が地下牢に響きわたった。



◇◆◇



4葉経由で謀議を聞いて。


「これはすぐにアイラ様に報告だにゃ。」

「ですです。」


「ミーの手を取って!」


「はいです。」


白猫と子狐二人の姿は別館地下牢から消えた。





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


PV9,080アクセスに達しました、本メイドゴーレム物語を読んで頂き感謝いたしますm(-_-)m! 

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