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#45 帝都ベルブルグのダブル婚約披露宴



このたびヨハン皇帝の次男ルイ皇子18歳とトリッシュ女伯爵長女アナ15歳との婚約が決まり、慶事は重なり3男カール皇子17歳と元クマリ王女アイラ15歳とのダブル婚約披露宴となり宮廷雀は盛り上がった。


アーサー皇帝19歳には既にザクセン公爵家出身の美貌のジェーン皇妃16歳がおられる。


むろんアイラはダン侯爵の養女として嫁ぐものだ。

ナデシュ半島に新たにカール公爵のクマリ公国が創設されることとなり帝国の正式版図に入った。


歓喜するトリッシュ女伯爵の周囲に祝福する皇帝派貴族たちの姿が目立った。



オッタル大公68歳は摂政を解任されて公爵も譲位され隠居となり、カルマ市別邸でエデン軍団に護衛されて引き籠り不満を抱えて鬱々としている。


時々、オッタル翁は私兵と化した護衛の5000の兵を動かしてヌールイ湖畔の森林地帯で軍事訓練をしているそうだ、なにを夢見ているのか。


フェン公爵となつた長男ネロ・フェン・ノルマン43歳は今回のダブル婚約披露宴にも皇居に招待されて会場で美女漁りをしているみたいだ、問題を起こさなければいいが。



◇◆◇



 帝都ベルブルグでのダブル婚約披露宴を終えて、4月上旬に新しく創設されるクマリ公国クマル城でクマリ人向けの地元婚約披露宴を開催中だ。

魔王島にいたチームの面々も運営スタッフ側で参加していた。


白い優美な白鳥のような美しいクマル城は前と同様に再建されている。

この城は白鳥城と呼ばれる白い小さな尖塔付きの城だ。

城主の生活は傍に居住館があり、形式上の謁見の間ぐらいしか城には置かない。


居住館の石材や資材にはナドウ館を解体して有効利用もしている。

城内敷地のあらゆる場所に桜の木を植えた、芝生庭園や噴水は領民にも解放している。

樹木や草花などの庭園設計には、スフィの知識は活用されている。


今晩、アベルは出席したがダン侯爵家やトリッシュ女伯爵家の重臣たちと旧クマリ家臣たちなどの長い会話に疲れて、しばし庭園の桜をみていた。

5色ガラスの魔法ランプに照らされた古い桜の大樹から舞い散る夜桜に魅了された。


明日は夜刀姫とスフィとミーナ4人で旅立つよウルク大陸にね、もうナスル大陸ではやることはない!


クマル城の夜桜が強風に吹かれて舞い散っているのを礼服姿のアベルは会場ホールの中から見ていた。

アベルの横を通った侍女姿のスフィの耳にすばやく「櫻の大木の下で待ってて!」と囁いた。


帝国貴族たちと会話して曲も終わり、抜け出せる休憩に入ったので給仕をするスフィと踊りたくなり誘ったのだ。


庭に新設されたガス灯の青い光で照らされた櫻の大木の下に一人佇む紺色のメイド服を着たスフィに、黒のタキシード姿のアベルが近ずき、囁いた・・・


「スフィ・・俺と一曲、踊りませんか?」


スフィと二人で見つめ合った。


「はい喜んで、私はいつでもお相手します!」


夜は更けており庭園の灯の赤い色のぼんやりとした光の中で、桃色の花びらが儚く舞い落ちている。


桜の大樹のところまでかすかに会場のワルツの演奏が聞こえていた・・・・

二人の手は組み合って、二人の心臓は聞こえるほどに動悸している。


「ご主人様のそばが私のいる場所なんです。私を置いて行くんでしゅか?」


おい・・・また舌を噛んでないか?


〈早く、小さい手を俺の背中に回してくれ!〉

〈ワルツのステップを俺に合わせてくれ・・下が芝生でいい感じで弾むな。〉


「ここでの俺の役割は終わったんだ!アイラと別れの時さ、ここからは俺が夢みた地下ダンジョン制覇を悔いなくやりたいんだ。冒険への旅路を歩くが、スフィも一緒に来てくれるかい?」


黙ってうなずくスフィの水色の瞳は潤んでいた。

「ご主人様の行くところに私はついて行きましゅ。」


舌噛むなよ・・

会場から聞こえてくるワルツで、二人は静かに踊り始めた。


ただ桜吹雪の舞い散る中で、二人の世界があった・・・


黙ってアベルの動きに合わせてステップ踏むスフィの水色の瞳は潤んでいた。


優雅にターンを踏むたびに芝生のうえの桜の花びらが舞い上がり二人の周囲で踊っていた。


(この時を私は決して忘れないわ、この至福の時間を・・・)

黒いタキシードと紫色のメイド服の二つの影は抱き合いいつまでも離れなかった。



◇◆◇



 ノルデア帝国第3王子カールとアイラ女王の地元婚約披露宴が正式に開催された翌日、アベルはクマル城に元仲間として参内してアイラ王女とカール皇子との前で婚約を心から祝して祝辞を笑顔で申し上げた。


アイラ王女の瞳に迷いの色はなく、しっかりと自分の意思で頷き返した。


カールとアイラが互いの素肌を見たのは"妖精と流れるスパ"の露天風呂だったみたいだ。

二人とも真っ赤な顔になるけど、おめでとう自分の幸福を掴み取ったんだね!


隠し砦のダンカが魔王島飛行場にウラン家族共に引っ越した、機械修理は彼らがいれば安心だ。

商館には執事のカインがいるから子供村運営は大丈夫だ。

魔王城地下の魔導脳”M”が半島も含めて機械鳥で監視しているだろう。


カール・クマリ・ノルマン公爵がクマリ公国を統治して、アイラ夫人がしっかりと補佐して領内統治するはずだ。

これでようやくアベル自身の冒険旅行に専念できる。


4月某日早朝、少し雨模様の中アベルは、人影のないイシ河原から夜刀姫とスフィとミーナと4人で飛行船の席に乗り子供の時からの夢の続きの冒険旅行に出発した。


明けない闇夜はないという・・・





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


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