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#39 砂漠ワームの時空斬り



ダンジョンギルア前の広場に冒険者向けの獣人の子供たちの搬送人が群がっている。


その中からドワーフの女の子を2人2泊3日30銅貨でポーターを雇った。


女性5人のパーティーだからそんなに裕福じゃないし、テントを運んで貰うだけで助かるからね。

あとはみんなで地下洞窟入口に移動した。


洞窟ダンジョン“ギルア”の広い入口を入ると、すぐに地下に降りる階段になり扉を開けると5人は田舎に帰ってきた思いがした。

そこは一面の草原だった。


上には光魔石が輝き、両側は林が岩肌を隠しているが、奥は果てしなく丘陵と草原が続いていた。

懐かしい風の匂いだ、野営しやすい林の中には小さな小川が流れている。


見渡すだけで一角狼の群れや極彩色の鳥、そしてコボルトの影が林の中に見えた。

とりあえず”暁の紅い光”が直面するのは、走り寄る一角狼の群れの脅威だ。


80匹ほどの群れか、近づくにつれて一角狼の身体が大きく見える。

大型犬よりやや大きい。獰猛で初心者向けとはとても思えない!

5人目がけて一角狼の群れが200mほどに近ずいてきたので、弓手のダークエル少女タマル・ヌリが声を出した。


「3本射ちます!」


タマルは矢に風魔法をかけて3本早打ちした。矢は一角狼が身を翻しても曲がって3本共に別々の狼の頭部に突き刺さった。

一角狼は持ち帰れば1匹1銀貨だ。


「次は私ね!」と言うと詠唱に入った。群れは100mほどに近ずいていた。


“フレイムパレット”と聞こえた。

杖から紅い光が走り一角狼の群れの中央で高温の白い火球が炸裂した。

“ズン”と腹に響く炸裂音がすると火球の外縁は広がり始めた。


火球に触れた一角狼は瞬時に燃え上がり炭化した。さらに広がり続ける。

全員の顔面が硬直した。やばい、ここにまで輻射熱が半端なく顔が焙られる。


「てか、火球の外縁が未だ広がり続けて迫ってくる、ウェ~ッ 逃げなきゃ!」


「「「「「逃げろ~!」」」」」


5人全員とポーター2人が向きを変えて必死でバラバラに駆けだした。


「多分ここまではこないわ」


「高温すぎて魔石も溶けているよ、ミロの魔法は怖すぎ」


「「「「「激しく同感!」」」」」


「このフレイムパレット が唯一まともに使える魔法なの」


「あれ、タマルの姿がないわよ、また誘拐されたのかな」

「驚いてきっと、おトイレよ」


他の女性メンバーは微妙な顔をした。


(モアボのアジトで)


入り口に近い丘下の小部屋の中で革鎧を着た男女の揉める影があった。

中年男は少女にえらく執着している。


「追われている状況でも言いたいんだ。俺はタマルが好きなんだよ」

「あんたは母さんに酷い仕打ちしたのに、バカじゃないの無神経男よ」


「地の果てでも一緒に行こう。俺はタマルと結婚したいんだ」

「あんただけは無理、もう触らないで!二度と近よらないでね」


「・・・・・」


これから砂漠の追跡劇になる第二回目のタマル誘拐劇が幕を開く!



◇◆◇



 出合ったダークエルフの美少女に、燃え上がる恋心(邪心)を抑えることは出来なかった!


迷宮都市ゴンゾーの色町にあるとある娼館の地下室で、猿轡と両手両足を縛られたタマル・ヌリの下着姿が床にグッタリと横たえられていた。

そばにはモアボ・フォン・モンテスの姿と雇った2人の手下AとBがいた。


「ご苦労さん、ではもう一仕事を頼む」

「下に運ぶのですね、でも仕事が終われば約束の金貨を下さい」


「ああ、ここに金貨はたっぷりとあるぜ」

(ああ、遣るとも鉄の延べ板をたっぷりと)


床の揚げ板を引き上げると、そこにはポッカリと地下水路への階段入り口が暗く空いていた。


モアボは肩掛け鞄で3㎥と有限だが魔法袋の中に市場で買い込んだ2人用テント・毛布・パン・水樽・干し肉・果実を確認した、2人で14日分はある。


「ライトは俺が灯すぜ」

モアボが器用に”ライト”を灯す。


「Bは足を持ってくれ」

「あいよ、それ」


「ウゥゥゥゥゥ~~~~!」


悪党3人と拉致された少女1人の姿は地下の階段の中に消えていった。

やがて4人の姿は地下水路に浮かぶボートの傍まで降りてきた。


「よし、この娘をこのボートに乗せてくれ」

「その前に旦那、金を先に願いしやす」


「いいとも、受け取れ!」

素早くモアボの左手の短剣が手下Aの胸に深々と刺っていた。


“ウッ”

「お前はこちらだ!」


モアボの右手で抜かれた片手剣クレイモアが手下Bの胸に刺さる。

「グッ、汚ねえ~!」


死体になった二人をモアボは足で地下水路に蹴り込んだ。

モアボは舌打ちしてからタマルの身体をボートの前に乗せた。


食料は500㎞先のオアシスコロンバで再度14日分入手しょう!

砂漠の向こうドラゴニアに金さえ出せば人を運ぶ竜籠があると聞いた。


モアボはボートの後部に座り再度”ライト”灯してから漕ぎ出した。


モアボのボートは暗闇の地下水路カナートの流れの中に消えていった。



◇◆◇



 迷宮都市ゴンゾーの冒険者ギルドにある二階会議室で、強制参集させられた10人メンバーが座っている。


顔ぶれはガツンドワーフ市長、マッシュエルフギルドマスター、アベル偽王、夜刀姫、ミーナ猫人代表、スフィ巫女、ギルドサブマスターマリン1人、熟練冒険者ジョン、ベティ、メアリーであった。


司会者としてギルドサブマスターマリンが事件の経過説明をした。


「前市長モアボ・フォン・モンテス子爵は2件の殺人事件と1件の誘拐事件を起こして逃走中です」


「本件概要はツェペン前ギルマスとダークエルフのイーダ姫の娘タマル・ヌリに執着した恋心を抱き二度目の誘拐と手下二人の殺人を犯したうえ、現在モアボはタマル・ヌリを人質に地下水路カナートを使用してオアシスコロンバに向けて逃走中と思われます」


「当然、追手を向けないといけないが、希望者はいるかい?」


「「「・・・」」」


「オアシスコロンバまでは500㎞程ですから地下水路に小舟でいけば14日程度で到着すると思われます」


「誰も希望者が居なければ強制指名をします。アベルさん追跡・救助・逮捕までお願いします」


「地下水路に小舟ならば俺と夜刀姫で行きます」

「ミーも行くにゃ」


「アイラ王女からミーナを帰して欲しいと連絡がきたので一度島に帰って欲しい」

「う、了解にゃ」


「私は?」


「聖樹様からスフィ巫女を本殿巫女見習いにするので俺に協力を求められている」


「アベルの本音はどうなの?」

「俺もウルク大陸の片隅に終の棲家を求めるつもりだ」

                

「500年後のために?」


「そうなるな」


「オアシスコロンバにはギルドの用事で行ったから、アベルと夜刀姫をミーが送ってから島に帰るにゃ」


「おお、有り難う助かるよ」



◇◆◇



 真夏の日差しは遠慮なく大砂漠で遭難している小さな人影に照り付けている。

ボロな上着で水筒も1個あるだけで、パンは尽きている様子だ。


髭面で半裸の中年男が砂漠の中で倒れている。とてもゴミ砂漠を渡り切れる装備はしていない。


[くそ暑いな・・・!]


なんで俺がこんな砂漠を彷徨っているのかって、聞いてくれる?


オアシスコロンバの食料品の屋台でアベルと鉢合わせして、アベルだけだったのが幸いしたな、アベルを殴り倒したら後ろにいたタマルがアベルの味方して俺を突き飛ばして俺がこけたらそこにアベルが跳びかかってきて殴り合いの大喧嘩になった。


その状態でタマルは俺の左足首引っ張り片方の靴は脱げるしで、俺は人だかりになったので噂のゴーレムが来る前にタマルを置いて全身ズダボロでスタコラ逃げ出したよオアシスコロンバからね。


倒れている中年男は51歳ぐらいで醜男であるが日に焼けた頑健な体つきである。

脱水で唇はひび割れて頭に乗せた日よけのボロな白布が風にゆれている。


死へのいざないか、禿鷹が俺を狙ってやがる、もうすこし頑張るか。


これでも迷宮都市ゴンゾーの市長だったんだけどね、なんか追われている気がしてきたね、しっこいなアベル、顎への一撃は自分でもうまく入ったと思うぜ。


イーダ姫に岡惚れしてから人生が狂いだしたんだ。大公に愚痴ったのがよくなかったね、ギルアに飛ばされて、嫌いなツェペン・ハーベストがギルマスで着任したときは自分の運命を呪ったね。


でもそれももうすぐケリはつきそうだ、さっきから砂の下でワームが俺を食べたがっているよ、俺にはわかる。


アベルと夜刀姫は水・食料などの準備をして、タマル嬢をオアシスコロンバの旅籠に宿泊させてラクダという乗り物を雇いあげてから、砂漠のモアボ追跡を開始していた。



◇◆◇



 モアボ追跡を開始して3日後にモアボの足跡を捕捉できた。夜刀姫がいなければ俺は無能力者だね。


モアボの独りの足跡が砂丘の向こうまで点々と付いているんだ、それを見た時に俺はモアボの孤独な気持ちが少しわかった気がした。


まだ、顎は痛むが少しは許してやれそうな気がしてるよ。

夜刀姫を見ると何かを魔力探知したみたいで、


「アベル様ここから砂漠に立ち入るのは危険を伴います」


「砂の中になにか魔力のある物が居るのが分かるのだね?」


「そうです、それもミーナ様に感じるような時空魔力です」

「モアボの最後だけは見届けてやるか?」


「了解しました、自分がアベル様を担いで逃げられる限度までは近づきます」


そのままラクダで追跡してお昼頃になった時にモアボの後ろ姿をはるか遠くに捕えることが出来た。


「なにか砂丘の下にいるのか?」

「います、それもこちらのほうにも気ずいていますね」


「こちらに来るのか?」

「いいえ、モアボのほうに動いてます」


「いま、モアボの真下にいます」


アベルが400mは離れて観察していると。

モアボの立っている砂丘がいきなり直径100mの漏斗状に消失した。

サクッと砂丘に大穴が開いた、もちろんモアボは消えたよこの世界から。

異次元に飛ばされた感じだ、生死なんて不明だった。


確認の方法がない、モアボの存在自体が消えてしまった。

あえていえばモアボは時空斬りで消失したと報告するしかない。

とりあえず、ここは危険地帯だ、相手を刺激せずに撤退しょう。

初めて、ここにミーナを連れてこなかったことを後悔した。





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


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