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#34 アイラ王女の孤軍奮闘記(2)



 アイラ王女は商館の裏に広がる子供村に今日も来ている。


日常風景だ。

 子供村は林の中の湧き水の泉を取り囲むようにドームハウスが25棟配置されている。


アイラは子供村に行って感じたのだ、私を必要としてくれる子供たちがいる。


この子たちが自立するまでは働く王女はアピールするべきだわ!アイラは細い掌を硬く握りしめた。


 ドームハウスの定員は4人まで居住可能で2段寝台が2台設置済みだ。


 共同施設の建物も中央広場にある、炊事場や食堂そして共同浴場とトイレ洗面所が立ち並び、井戸もあり地下浄化槽も設置されている。

 奥の広場に鶏小屋群と餌箱水飲み場付運動場となっている。

食堂はテーブルと長椅子・掲示板があり子供教室も兼ねている。


 クマリ難民の中で子育ても終わり手の空いた女性で子供村に料理や洗濯で働く希望のある方が3人いたので子供村寮母として採用しました。


 養鶏場の裏側には広く畑のスペースが取られており、子供たちの食卓に上げる野菜畑として開墾されている。農業用水の水路も畑に整備されている。


 畑の周囲には長期計画で果実のなる樹木も植えられている。

 農業の技術指導はヘテ村のアリス村長とスフィ巫女が指導してくれる。

 最近では農器具入れの倉庫も建ててもらった。リヤカーもある。

 テラ神官もナタリア治癒師と定期健診に来てくれて安心です。


 土壌改良の腐葉土造りも手作りだからなかなか大変だ。

 雑穀類や野菜の切れ端とか小魚貝殻の粉末とか鶏の餌にしている。


 必要な栄養と場所と環境を用意すれば卵を産んでくれるはずだ。

 鶏卵が日産できれば魚村や農村でも物々交換できます。



 ◇◆◇



 アイラが製造依頼していた、島内の移動に便利な自転車はどうなったのかを確認に造船所技術工ゴーレムAの所に行くつもり。


 「今からですか?」


 「ペダルを踏むと回転するチェーンが製作困難な箇所だと言っていたので心配なのよね、それに後で思いついたのだけど幼児を乗せる補助椅子を注文するの忘れていたわ」


「ああ、それは母親にとっては大切なポイントです」


 「今度、ミーナがきたらアベルにゴーレム輓馬とフレーム軽馬車を診療用に寄越せと伝言してもらうわ」


 「ええ、アベルならどうせ飛行船で飛び回ってるでしょうから、いい考えと思いますよ」


 「ナタリアとジェンは今何してるのかしら、置いて行くと後で泣かれるから、まだまだ子供だものね。フフ」


 「二人とも今はお昼寝の時間ですよ、あと1時間は夢の中です」


 「ならすぐに帰ってくればいいわね、では行きましょう」


 アイラとテラの二人は高台の商館から坂下の造船所に歩いて行った。

 造船所に技術工ゴーレムAはいました。


 「前回依頼しました自転車の件はどうなりましたか聞きに来ました」


 「“M“もよい提案だと至急取り組ように指示が出ました。現在、特別チームを作り自転車の基本フレームは完成して、部品の詳細設計に入っているところです」


 「使用するのは生活移動が多くなり、母親が幼児を後部荷台に乗せる場合が想定されます、ので今から幼児用補助椅子も併せて製造されればよろしいかと」


 「再度、図面で教示願います」


 アイラは再び製図台上の白紙に後部座席用の“幼児用補助椅子“を描いた。


 特に後部車輪に幼児の足が巻き込まれない様に網で車輪上部覆いを設置する旨を特記した。


 あと余白に別件で買い物用の網籠も描いておいた。

テラもこれなら診察鞄が乗るでしょう。

主婦にとっては購入商品入れに便利な物だわ。


 「なるほど、この着想は使用者にしか出ませんね!ではこちらの自転車設計図を確認して下さい」


ママチャリ、え!なんですって?


 「なにこれ、前方ライトが付いてないしタイヤブレーキも無いわよ」


 「え、本当だ、車輪をどうやって止めるの」



 「ライトはここで発電して、ブレーキはこのゴム板で車輪を挟むのよ」

 「ライトの形は利用して、中に発光石を入れた方が簡単かと」



 「魔法ね、そう、でも流石にブレーキがないと危険だわよ」

 「ワイヤーコントロールですね、簡単です」



 「あと、座席は上下に調節可能の方が便利ですよ」

 「なるほど、製造側で気づかぬ箇所のご指摘ありがとうございます」



 ◇◆◇



 アイラ王女が島内道路と併設されたコンクリート床と枕木の上の軌間1067㎜の敷設済み56㎞鉄道路線を眺めるたびにため息が出ます。

 このままでは壮大な資源の無駄使いになります。


 アイラ王女は最近坂下の造船所で技術工Aの監督の元、前世で見た弁慶号の立面図・正面図・平面図を描き始めています。

 え?絵は少女漫画などが好きだったので得意分野よ、なにか!


 あの西部開拓史に出てくる機関車と炭水車付きの前端に牛よけを取り付けた大きな煙突と前照灯や胴体上の鐘、運転室などが特徴的なでも立派な機関車です。


 天蓋無しの貨車も描きます。線路横の信号機も給水塔も描きました。


 実際の動力形式は問いません、動輪が回転すればよいのです。煙が出なくともいい前に進めば!

 客車は短く座席数は少なくけれどもいいのです、定期運行している列車で経済は回転していきますわ!


 島の5ケ所の停車所と引き込み操車所も描きましょう。

 描いている時間のアイラ王女は楽しそうだった。隠れた才能か?

 図面を描いて技術工Aに渡したらもう商館に戻り忘れています。


 これらの交通機関は将来の島内経済にとって貴重な搬送手段になると予想される。

 石材や木材や穀物・魚類そして通いの人々で大量輸送が出来きるのです。


 しかし、長い製図作業が終わりアイラ王女とテラ神官がこっそりと商館に戻ったら、ナタリア治癒師とジェン護衛官の大きな瞳には涙が溢れていましたが筆者はその後どうしたかは存じません。コホン



 ◇◆◇



 アイラ王女が提案した自転車も弁慶号も島民には好評でした。むしろ懇願された方でした。

 島内各村の女性たちや子供たちにも熱く支持されました。


 コンクリート道路と鉄道路線が物流の動線として動き始めたのです。


 人や物が行きかい始めました。情報が飛び交います。

 生産も商業も活性化始めました。

 人口1000人のちいさな経済圏が成立したのです。


 魔導脳“M“もその効果を経済数値として把握しました。


 さらになにか島経済を刺激する手段をアイラ王女は求められました。

 アイラ王女は最近移動の不自由を感じています、ミーナが帰島せずにゴーレム軽馬車が手に入らないのです。


 “M“に問われてアイラは“2人乗り熱気球”と即答しました。


 「よし、直ぐに製造に入るから図面を起こせ」


 の即答です、“M“は入れ食い状態になりました。


 いいんかい!資源の無駄使いで再生魔王に“M”が解体されない?


 アイラ王女はバーナー操作で円気球を上下させる超ド派手な柄の2人乗り熱気球の図面を描きました。

 熱い空気を入れる球本体材質は既に飛行船で技術工Aは経験済で容易に製造できます。

バーナー操作と砂袋方向変更の操縦士と乗客の2人乗りです。


 熱気球の下にワイヤーで小さな籠を着ける簡単な構造の乗り物です。

 技術工Aの監督の元、仕様書も出来て前世で見た熱気球の立面図・正面図・平面図は完成しました。


 利用飛行場は子供村から4㎞程度の北高原からの草原スロープの麓に1500m級のコンクリート滑走路と山腹に開けた格納庫から出来ています。


 この魔王島の飛行場で多くの熱気球が飛行するのをアイラ王女は今から想像出来ます。

 アイラ王女には、村間の急ぎの移動に便利だし、日常的に海岸線の哨戒も出来るし、山や海で誰かが遭難すれば空から救助に行けるメリットが考えられた。


 この島の生活も一段と便利になるに違いないと確信できた。

 操縦手のニーズも多くなるね!え・・・

 アイラ王女はあの操縦手Bの喜ぶ姿が浮かんで慌てて脳内で打ち消した。





 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



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