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#32 アイラ王女の孤軍奮闘記



アイラ王女は商館の前庭から飛行船空飛ぶクジラ号の離陸を見送った。


ウルク大陸に乗り込んだのはアベル偽王と侍女夜刀姫そして帰省のスー魔導師と指名手配されている逃亡者ヴェル最後に空間移転者ミーナの5名となかなかに味わい深いメンバーである。


これはアケニア騎士団領の何か所かに爆炎が立つ予感しかないな!


でも大公一味の注意がウルク大陸の西端に向くのは、アイラにとっては好都合であった。


エビノ荘園内隠し砦でのダンカの武器生産や、ナドウ城下での1000人規模のクマリ家臣団のジェドによる連絡網と再結集には時間が必要だ。

アベルには大いにウルク大陸のアケニア騎士団領で暴れて欲しい。

とアイラが商館執務室の椅子で紅茶を飲みながらぼんやりと考えていると。


扉にノックしてテラ・パール神官とナタリア・ウーゴ治癒師が部屋に入ってきた。

ジェン・フォックス護衛官も顔を後ろから覗かしている。


魔王島にいるメンバーはジェドとテラとナタリアとジェンの4人しかいないわ。

私をいれて5人でこの島を変えて半島を変える、つもり。


「今から造船所と子供村に行くわ、一緒に行きますか?」


「はい、ご一緒します」

「アイラ様、連れていってくださいませ!」

「勿論、ご一緒します」


設計図の束を抱えた私が技術工ゴーレムたちを指導して新世界への変革の道を切り開く!私はできる、できそうな気がしてきた!

でないと私まで斬首されて広場で晒し首よ、今は働く時なの。


最初にまず私はスタイルから入るわ、働く女性のイメージとしてドレスはだめよ!

帝都の服屋に特注して届いたデニムのワークキャップにデニムのオーバーオールで黒革靴に履き替えてこのイメージで現場に行こう。


でもコーデネイトでグレーのシャツね、胸元には赤いバンダナで決まりね!

さあ、働く姿は決ったわ!


ナタリアは可愛いわ、遊んであげたいけど造船所に仕事でいくのよ!

同じ湾内だし600mぐらいしか離れてないわ、高台からだと下り坂よ。


磯風が強いわね、造船所の石造りの建物が近づいてきた。

出迎えの技術工ゴーレムが外にたっているわ。


アベルは魔導脳“M”兎さんに規格書と三面図だけ渡してウルク大陸に飛び出して行ってしまったが、勝手な人よね!


私みたいに地味に働く人間も必要なのよ。


「造船所の技術工ゴーレムAです、アベル様から依頼のありましたスクーナー型帆船につきまして起工前の最終確認なのですが、中で設計図を確認して欲しいのですが?」


「分かりました!」


技術工ゴーレムAが中で広げた図面には、2本マストの木造帆船で通称トップスルスクーナーと呼ばれるものであった。


全長22.7m、幅6.1m、喫水2.6mの排水量75t前帆1枚縦帆2枚で前部マスト上部に横帆が描いてある。砲門8所で27人定員だ。

船底銅板被覆で船体白色塗装だ。ボート2隻搭載の予定だ。


「どこか不審な点がありましたか?」

「いいえありませんが、起工前の最終確認なので見てもらいました」


「確かに小型ですが小人数で操船はしやすい帆船と聞いております」


「分かりました、では建造を開始します」


「後、船板間に松脂を詰めるとか言ってたわ、ねえ、設計できる方は貴方だけですの?」


(テラは、姫様のいじめかとドッキとした)


「いいえ、技術工ゴーレムで待機中の者はおります」

「では、島内の移動に便利な自転車を作って欲しいのよね」


「絵で描いて頂けますか?」


アイラは製図台にあった白紙に前世で使用した自転車を描いた。


「ここのペダルを踏むと全体が前に進むのよね、あと車輪のここは硬質ゴムね、ハンドルで方向転換です」

「なるほど、ここの回転チェーンの部品難度が高いですが作れそうです」


「島内の循環道路は平坦だからメリットはあるはずです、荷台を着ければ軽荷物も搬送できます」

「資源の問題もあり、“M”と相談してみます」



「コンクリート道路が出来たのに利用しないのは資源の無駄です」


「夜間の急患でも、移動に便利な自転車があればいいね」


「今から子供村に行くのだけれど移動はどうしよう?」

「船材搬送用の荷馬車がありますが?」


「あ、その荷馬車を今日中お借りしますわ」

「はい、皆様でお使いください」



◇◆◇



アイラ・クマリ王女がテラ神官とナタリア治癒師やジェン護衛官の4人連れで子供の村を訪問すると、

新しいドーム・ハウスの中から、マルシュ・ドランケン(13歳)、ミランダ・オハラ(10歳)、キティ・ホークス(13歳)、ロゼ・マルレーン(9歳)、ハイジ・グリム(4歳)たちが外に出てきて王女を取り囲んだ、皆笑っている。


パール・ザクセン(13歳)、ピオ・ゲーブル(12歳)、カディス・ボガート(11歳)、ミミィー・モーリィ(8歳)、マリー・ユバーン(7歳)も走り寄ってきた。

ベス・メープル(11歳)アン・セントーレア(12歳)のエルフ二人組も来た。


服装も新中古だが綺麗に洗濯してある、食事も足りているようだ。


養鶏小屋も作ってるみたいで、みんな元気で何よりです!


着いた子供村のドームハウス群は完成して子供たちは住んでいた。

むろん上下水道配管敷設に済み共用道路も敷設済だ。

イシ河原での10人も入り50人規模にまで島の子供の村が増えました。

コンクリート製のドームハウス建設も子供の村が完成している。


クマリからの難民893人は身一つでしかも家族持ちだ。

大急ぎで元の用水路跡のある耕作可能地に畑農村で100棟をより水量豊富な水田農村で50棟建設した。


次に商館裏の湧き水のある養鶏村で子供村25棟を建設した。

他に造船所10棟を、石灰工場で10棟を、製材所10棟を建設して最後に温泉地域に保養所20棟を建設した!


アベルが設計図と仕様書を書き、技術工ゴーレムが詳細設計に落として計算して建築工ゴーレムが伐採採掘等を実施して建築資材を確保した。

完成した半製品を都市計画の詳細計画の配置図に基づいて基礎を掘り打ち固めて設置して組み上げた。


旧住民アムル人のヘテ魚村民274人と新住民のクマリからの難民893人の合計1167人がこの島の新住民だ!


「有名な姫だけど実物は、ポンコツだな」


振り返りアイラは「ポンコツって言うな!」


失礼な、アイラが一番気にしているところだった。


現在、5つの住宅群と魚村の間には環状コンクリ道路と鉄道網は完成で既に物流の流れは確保してある。


ただし、環状コンクリ道路は完成してるが道路利用者は建築資材を運ぶ荷馬車ぐらいだ。

鉄道は鉄路も鉄橋も敷設完了しているが、本体の機関車と貨車は未完成であった。


現在は400年前の地図に記載されている農業用水路の復元工事と水田と畑造りが主力である。


アベルの空間収納庫に入れてあったテンサイやゴムノキ・カカオの木はすでに畑農村に畑を作り、適正な土壌環境で栽培されており、病害虫対策もされて、それぞれに株数を増やしている。


テンサイの根は砂糖に抽出され、ゴムノキからは長靴や車輪のタイヤ原料として、カカオの実からはチョコレート原料としてこの異世界では価値を見いだす予定だ。


農業責任者のソフィは常に持ち歩く霊樹で作られた移植ごてにより見つけた薬草等貴重な樹木・植物の苗・種はすべて採取してある。移植ごては木の精霊ドライアドに与えられてものだ。


新たに見つけたサツマイモは痩せた土地で栽培できて飢饉対策にもよく、甘味にも使える品種である。

これらの苗・種は将来の飢饉に備えて貴重な産品になると予想される。


テラ神官はナデシュ半島でも馬車で訪問診療をしていたので御者は出来るのです。



◇◆◇



アイラ・クマリ王女がテラ神官とナタリア治癒師やジェン護衛官の3人に行きたい場所の希望を聞いたら“飛行場”との答えだった。


当然、飛行場に荷馬車で向かったがいやな予感をアイラは感じていた。


飛行場は子供村から4㎞程度の魔王城のある北高原からの草原スロープの麓に1500m級のコンクリート滑走路と山腹に開けた格納庫から出来ています。

草原スロープの上下には魔導巻き取り機と牽引用ロープが据え付けられています。


アイラ一行が飛行場に近づくと待ちかねたように操縦手Bがヒヨロヒヨロと歩いて来ました。

操縦手ゴーレムは超軽量に製作されてあるためです。


「アイラ様には偵察用グライダーが完成したので招待状を出した所お出で頂いて感激です。これは是非ご試乗して頂きたいです」


(アイラはなにを言ってるのだ、こいつはと冷たい視線を送った)


荷馬車が格納庫の中に入ると、白色灯の下に銀色の機体の1人乗りのジラルミン機体が置かれていました。


「この機体は翼幅9.1m翼面積18.1㎡でアスペクト比5.6で機体重量24㎏です、体重45~65㎏の方なら操縦できます」


「初操縦は君に任せるから、ぜひ第1号の名誉飛行士になり給え」


上級者になると、滞空時間5時間、高度1000m、距離50㎞は出るみたいだ、晴れた日には沿岸哨戒に使えるな。


でもいいのかな中世時代のこの時間にグライダーなんて、飛行船があるからいまさら感だな。


やがて操縦手Bを乗せたグライダーはスロープの上方まで引き上げられて、今度は下のウインチのワイヤーで思い切り引かれて、フックでワイヤーを外してふわりと魔王島上空に舞い上がりました。


蒼い空の中に銀色の小さな機体が滑空しています。これはこの星にとって歴史的快挙に間違いない!





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


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