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#30 星に願いを(2)



 シバ族アムル人からの宣戦布告を受けて、領都キュルン在住のオットー騎士団長は激怒していた。


 オットー・アケニア・ノルマンはオッタル・フェン・ノルマン大公の次男でウルク大陸侵攻の尖兵だった。


 即日、ウルク大陸派遣軍20000人の内ダンジョン部隊5000人を除いたアケニア騎士団軍15000人に動員命令を出した。

 当然、オットー騎士団長は戦闘部隊でシバ族の居住地山城攻撃を指揮するつもりだ。


 前回は温情で山岳地帯に生存を許してやったのになんだ。

 絶対に許さんぞ、シバ族1000人全員を皆殺しにしたうえで、塩を撒き全ての生き物をあの土地から絶やしてやると決意を固めた。

 父親のオッタル大公にもこれで晴れて殲滅報告をしたいものだ。


 「今回は騎兵2000騎と弓隊2000人、重装歩兵8000人、短槍荷駄隊3000人の完全編成で進撃するぞ!」


 「はっ、軍の移動には時間が掛かりますので先行しての魔術師投入はいかがいたしますか?」


 「そうだなゴーレム召喚師の力も見たいし、先行して敵城塞を破壊した頃に軍が到着と合わせよう、桃色召喚師3人を馬に乗せて先行させろ!」


 「はっ、しかし魔術師のうちオカマ3連星が最強戦力とは問題があるかと?」


 「かまわん、力があればどんな奴でも派遣しろ」

 「はっ、派遣します」


 「それと万一に備えて迷宮都市ヤーセンの防衛のために雇いいれたスライム魔術師たちも迎撃罠を張らせろ。スパイ情報では敵も異能者ぞろいみたいだ、油断するな!」


「はっ、配置につかせます」



 ◇◆◇



 「軍の移動は時間が掛かるので、俺は始まる前にミーナを迷宮都市ヤーセンに連れて行くよ、攻撃目標も下見しておきたいし」

 「はい、了解しました」


 「同行者はどうするにゃ?」


 「今回は俺と夜刀姫とミーナね、スー魔導師とヴェル隊長はこの砦を防衛してくれ、二枚で守れば心配ないはずだ」


 「ヤーセン土産を期待しています」

 「遊びじゃないのだが。ヴェルにはこれ渡しておくよ」


 アベルは時空間収納庫から黒魔鉄鋼製のショートソードとダガーと剣帯を手渡した。


 「仕掛け人が来ると予測してますね」

 「宣戦布告した以上、常在戦場でね」


 「そうでした」


 練兵場に係留中の飛行船に、アベル、夜刀姫、ミーナが搭乗した。

 柱の係留綱をほどき、飛行船はゆっくりと上昇していった。



 ◇◆◇



 領都キュルン在住の“桃色三連星”はアケニア騎士団副団長ゴーゴンからシバ族砦への攻撃命令を受けていた。


 「既に戦闘状態に入っていると認識しているから諸君は自由に攻撃を開始してかまわない」


 「了解です」


 「いい男いたら食べちゃうわよ!」

 「勝手にしろ」


 「割り増し料金は?」


 「現地で略奪しろ」


 「「「バックアタックで奪うよね~!」」」



 ◇◆◇



 シバ族居住地から迷宮都市ヤーセンまで翌朝に到着した。


 「上から見るとヤーセンもエデンと同じくらいの大きさにゃ」

 「都市横の兵舎が並ぶ土地がオッタル軍ヤーセン駐屯地だね」

 「ボルボ山脈が連担しているし、見はらしが良すぎるにゃ」


 「船も無機物だから俺の時空間収納庫に入れてみようか?」

 「それだ」



 やがて飛行船は唯一街のそばにある林の陰に着陸した。


 「なんだかこの林はジメジメしていて通りたくないにゃ」

 「気のせいだよ」


 アベルが飛行船を収納して三人は歩き出した。


 「林の中の小道が濡れているにゃ」


 「本当に?」


 「アベル様、私が先導しますので」

 「頼む」



 右手に鉛弾を握り、左手にトマホークを握る夜刀姫が先頭に立った。

 先頭を歩く夜刀姫が縮み出した、いや地面に沈下していく様だ。

 周囲の地面がウネウネと動き出した。


 「にゃにゃにゃ、林の地面は全部スライムの群れだにゃ」


 「ミーナ、俺をあの樹の枝に飛ばせるか?飛ばしたら逃げろ!」

 「了解、アベル行くにゃ」


 アベルの身体がファと浮く感じがすると傍の樹の大枝に乗っていた。

 アベルは時空間収納庫に入れていたセメント原料の生石灰を湿って見える大地の全部に大量に乗せてあげた。


 ミーナも俺のやる作業を近くの枝から見てて、俺の大枝に移転してきた。


 「この後、何が起こるにゃ?」

 「猛烈な発熱と有毒ガスが出る、この林から脱出しないと」


 「夜刀姫が出てきたら、飛行船出して上空に逃げた方がいいにゃ」


 「そうだな、あ、夜刀姫が前方に出てきたからあそこに頼む」


 二人は雪の様に積もった生石灰の下から出てきた夜刀姫を浄化して、アベルが出した飛行船に乗り込み上空に舞い上がった。

 林の木々が発火している。体の大部分が水分のスライムではここまで相手が罠を仕組んだ以上、こちらからもお礼だ。


 「都市横のヤーセン駐屯地上空に行くよ」

 「ひょとして爆撃するにゃ?」


 飛行船はヤーセン駐屯地上空2000mまで急上昇した。

 はるか下の大地にモザイク模様で四角い敷地に兵舎がたくさん見える。


 飛行船の操縦は渦をまくように飛行して大岩を落下させよう。


 アベルは操縦者Aに飛行コースを指示した。

 下を見ると現在位置が目標上空だった。

 アベルは席に座り、収納された大岩の位置指定をした。


 相対位置指定[(-10m・+10m),(“岩石”,“99 ”)]

 =「設定」 ,連続実行

 アベルは“実行”を念じた。


 なんだろう大岩が点々と連担して流れ落ちていく、非現実的だな。

 やがて地表から100mほどの土煙が連続して立ち上がってくる。

 遅れて“ヅ~ン”と腹に響く音がする。反響する轟音だ。


 ヅ~ン・ヅ~ン・ヅ~ン・ヅ~ン・ヅ~ン・ヅ~ン・ヅ~ン・ヅ~ン

 ヅ~ン・ヅ~ン・ヅ~ン・ヅ~ン・ヅ~ン・ヅ~ン・ヅ~ン・ヅ~ン

 ヅ~ン・ヅ~ン・ヅ~ン・ヅ~ン・ヅ~ン・ヅ~ン・ヅ~ン・ヅ~ン

 ヅ~ン・ヅ~ン・ヅ~ン・ヅ~ン・ヅ~ン・ヅ~ン・ヅ~ン・ヅ~ン

 ヅ~ン・ヅ~ン・ヅ~ン・ヅ~ン・ヅ~ン・ヅ~ン・ヅ~ン・ヅ~ン


 風で土煙が流されると地表は巨大クレーターで覆われていた。

 兵舎なんてどこにも見えない・・・


 スライム林も跡形もなく大穴になっていた。

 駐屯地に面している迷宮都市ヤーセンの城壁まで崩壊している。


 兵舎にいたオッタル大公軍兵5000人は土煙とともにこの世から消えた。


 アベルは操縦者Aに手信号で500m上空まで降下と送った。

 やがて飛行船は下降を始めたが、地表の惨状が俯瞰して見えた。


 やがて飛行船の下には広大なクレーター群が見えてきた。

 アベルとミーナも無言だった。

 夜刀姫には表情は元々ない。


 風で土煙が完全に流されると地表には動く物は見えなかった。

 地表には耕された様な新鮮な大穴が蜂巣状に広がるだけだった。

 地下の迷宮構造に影響が出なければいいが。



 ◇◆◇



 アベルたちが飛行船で迷宮都市ヤーセンに出発してから、スーとヴェルは前方警戒をしていたが当日はなにもなかった。


 2人が異常を探知したのはやはり翌朝であった。

 出城前方の河川敷に異様に強い魔力を3体感知した。

 ヴェルはスーと話した。


 「ヤーセン大川の河川敷に迎撃に行きましょうか、ここでは兵士が巻き込まれます」


 「そうだな、移動速度が速すぎるから攻撃タイプの可能性がある」


 2人が河原に出て行くと、大川を挟んで向かい岸に5m級ゴーレムが3体並んで立っていた。

 何故、3体のゴーレムが桃色なのか気になる。


 「「「私たち、桃色三連星がお相手よ~♪!」」」


 待てよ、今の声は男性で言葉は女言葉というのはオカマかな?


 「顔を見せろ!」

 「「「殿方が希望するなら喜んで~♪!」」」


 胸の蓋が下に開くと上半身小麦色の裸の男が立ち上がった。


 下半身はぴったりした黒革のパンツであった。頭は剃り上げてあり、バッチリと化粧済だ、アイシャドーにマスカラで濃い目の真っ赤な口紅、顎は剃り跡も青々しい、誉め言葉もない。

 胸毛になんでピンクのリボンをつけるのだ?

 本気で狂気に走るとここまですごいのか。


「いい男、私はアルファよ、よろしく~ん~ン!」

「私はベータよ、よろしく~ん~ン!」

「私はガンマよ、よろしく~ん~ン!」


 厚化粧のアルファは真っ赤な口を開いた。


「貴方は死んでも可愛がってあげるわ~ん!」


「歩兵橋を架けるから待っててね~ん!」


 左端のゴーレムが大川をジャブジャブ渡ってきてこちら岸に鉄棒を2本打ち込んでロープを結び手編みみたいに網ながら向こう岸まで行き、向こう岸にも鉄棒を2本打ち込んでロープを結び底に木の板を敷くと1人用の立派なつり橋が完成した。

 器用な奴だ。


「橋を渡って来てね、こちらで殺し愛いよ、待ってる~ん!」


 ヴェルとスーは歩兵橋を渡らなかった。

 スーはすでに範囲指定を終えており、詠唱に入っていた。

 上級魔法の詠唱は1語誤るだけで自爆する難度なのだ。


「あら!そちらの魔族の女の子は上級者ね、楽しみ~ん~ン!」


 「エクスプロージョン!」


 “ピカーツ”


 瞬間、白い閃光が走り大爆発が向う岸で炸裂した。

 周囲の人々の網膜を焼き尽くす光線が走った!


 ゴゴゴゴゴゴ~~~~~~ッ 大気が膨張する!!!


 爆発範囲は精密に指定されており、向こう岸400㎥の限定空間内だけだった。

 その中心温度は数千度に達したであろうナパーム弾並みだった。

 爆発圧力は戦車砲並みの強烈な衝撃波であった。


 煌めく小型太陽が7彩に輝きやがて地上から消えると、

 向こう岸には黒く炭化したグランド大の土地が残されていた。

 三人が立っていた場所を中心にして溶けている。


(歩兵橋を架ける時間が命取りになったなとヴェルは考えた)

 それからヴェルとスーは忍耐強く待っていたが、黒い砂漠の下から片手を挙げたボロボロのゴーレムが1台這い出してきて蓋を下した。

 衝撃波で額を切り血だらけ骨折だらけの半壊人間だ。


 「ヴェルお願い、止めをしてあげて!」

 「了解!」


 ヴェルは加速して川石を伝い渡り、座席まで跳んで上がり素早くアルファの首に黒いダガーを当てて曳いた。

 黒い血潮がピュ~と噴き出し、アルファの首が抱き首になった。

 他の2体のゴーレムは溶けたみたいだ!

 溶けた黒い金属の塊が2つ見える。


(アベルさんたちも順調かな?)



 ◇◆◇



 領都キュルンの城門が大きく開かれて、次々と煌びやかな

 フルプレート騎士達の軍馬と兵列が延々と行進する。

 門脇の軍楽隊が進撃のドラムを打つ。


 ドン・ドン・ドン・ドン・ドン・ドン・ドン・ドン・ドン・ドン・ドン・ドン・ドン!


 アケニア騎士団の白銀色の騎兵2000騎と緑色の弓隊2000人、鉄色の重装歩兵8000人、短槍荷駄隊3000人の完全編成の行列が各種の軍旗と共に延々と何㎞も続く。


 オットー騎士団長も先頭集団の騎馬隊の中程にいた。

 得意の様子だった、この大軍勢だ、このまま西エルフ聖樹国に攻め込みたい気持ちが見て取れる。


 重装備の軍団だと一週間もすればシバ族の山城麓に流れるヤーセン大川に到着するだろう。

 それから陣地を設営してから合戦となる手順だ。


 途中のシバ族の集落や畑は壊されるだろう!

 軍楽隊やピエロたち曲芸師一座も同道させられる。

 日程道順と侵攻状況は逐一シバ族に物見の報告は届く。

 なぜか、アベルたちの飛行船は4日後にはヴェル出城の柱に係留されていた。


 《一週間後》


 アケニア騎士団の各集団の布陣は完結した。


 ヤーセン大川の川向うに、両翼に騎兵1000騎ずつ控えて、最前線に緑色の弓隊2000人の陣があり、二陣目に主力の鉄色の重装歩兵8000人の陣がある。後詰めに短槍荷駄隊

 3000人の支援部隊がある。本陣は最後部の小高い丘の上に天幕を張って陣取る。


 本陣を囲むように各種の軍旗がたなびいている。

 弓隊から本陣まで延々と何㎞も陣幕が続く。

 (これが中世の戦争なのか、のんびりしている感は否めない)


 軍議を開催しろとゼノン族長から矢の催促だ、飛行船で行こう。

 飛行船でアベル、夜刀姫、スー、ミーナ、ヴェルと飛んでいくとシバ族長ゼノンが自ら迎えに出ていた。

 飛行船の係留綱は武者揃いの間にある旗柱に結び付けた。


 やはり軍議は本丸の応接間で開催された。


 ゼノン族長、アベル、夜刀姫、スー、ミーナ、ヴェルと続いて入って行く。

 すでに各集落の長たちは応接間に座っていた。


 「さて、皆の衆お待たせした、これよりアケニア騎士団戦の軍議に入る」


 「議題に入る前にアベル偽王から、迷宮都市ヤーセン郊外での戦いについて、ヴェル次期族長から出城まえ河川敷で展開された戦いについての経過報告を受けたい」


 「迷宮都市ヤーセン郊外でのスライム戦からの駐屯地爆撃ですでにオッタル駐屯軍5000人は存在しておりません」

 「出城前河川敷での桃色三連星との戦いは勝利しました」


 二人の報告を聞いて各長たちは口を開けて黙り込みゼノン族長を見つめた。


 「二人の報告は信じられんが事実なのだろう、ならば今後どの様な手段があるか討議したい!」


 「一言だけ申し上げれば相手がヤーセン大川を渡る前に一括してスー魔導師の流星召喚で吹き飛ばせば問題解決します」


 「なんと数㎞に及ぶ敵軍を一瞬で消し去るというのか?」

 「機は敏です、今の時を逃さずにお落せば一撃で終わります」


 「そんな大技を使い後遺症はあるのか?」

 「私には有りませんが、ヤーセン大川がヤーセン湖になります」


 「衝突地点と方向を決められますから、リクエストは有りますか?」

 「数㎞に及ぶのならば、川向うに衝突させてから領都キュルンの方向に爆風を飛ばしてもらえるかの?」


 「お安い御用です、1発の流星で決めましょう」



 ◇◆◇



 スーは本丸の物見櫓に立ち手を差し伸ばし着地点と範囲指定を決めて、長い詠唱に入った。

 やがてかすかにスーの唇が動いた。


 ・・・「流星召喚」(メテオストライク)


 最初は、天空に砂粒のようにしか見えなかったが徐々に異様な轟音が天空から轟いてきた。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ~

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ~

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ~


 地面が共振をしている・・・

 やがて、それは見えてきた赤黒く回転して白く炎の尾を引く流星だった・・


 異様な存在感のある禁忌に触れる赤黒い固体だった。

 細長く空間が裂けて泣き声を上げている・・・

 どす黒い煙の尾をひきずりながら、その流星は天空を一筋に切り裂いて眼前に光り輝く姿を現した。


 不思議なことに天空の圧倒的な存在が軍団の布陣する直径数km程度の長円形エリアに正確に着地した。

 範囲指定のエリア内にどれだけの軍馬兵がいるのか・・・

 衝突の瞬間は無音でスローモーションだった!


 ヤーセン大川向うのオットー騎士団長本陣前に黒い炎を纏う真っ赤な炎の塊はぶつかり大きく地を抉りゆっくりと地面にめり込み土を巻き上げて土の中にめり込んでから逆に大きく数キロメートルの噴火の様に土砂を吹き上げて来た。


 土砂が激しく天にまで吹き上がる方向は領都キュルンの所在する方向だった。


 土煙が天に届くほど立ち上がり吹き込む風に流され長円形に地面が数キロメートルに深く抉れて土石が天に吹き上がった!

 やがてしばらくしてから音響が響いてきた。

 重低音で・・・


 “ズドォ~~~~~~~~~~ン・


 ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ


 バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ


 ドドド~~~~~~~~~~~~~ンンンン


 ひたすら地砂がはるか上空まで噴火の様に立ち成層圏にまで達した。

 大石たちは周囲に落下音を響かせて降ってくる。

 シバ族山城も砂煙に覆われて視界が悪くなった。土砂石は力学の法則に従い放物線で従順に落ちていく・・・

 大地に立ち昇る土煙の雲は反撃の狼煙なのか?


 領都は数メートルの厚さの土砂に覆われた、人間の住める環境ではないでしょう。

 空に轟音と閃光と、土埃と落石が舞う。

 吹き上がった兵員はなにを思い死んでいくのか・・・

 聞こえるのは大気の悲鳴と天上に届く土石の崩れ落ちる音、光る閃光と響く衝撃音の時間が終わり、軍馬も兵員も消えた。


 流星を人間が使うには狂暴すぎる力じゃないのか・・・

 衝撃の土埃の波が周囲に波紋を広げている。

 上空には黒い雲が残り、雨が降り、止み虹がかかる。

 まだ生贄を求めて土埃は舞い大気は熱気で揺らいでいる。


 15000人の兵士たちの家族を想う死に際の時間。

 誰も二度とこんな心的障害の残る風景は見たくない。

 これ以上“流星召喚”の決断をさせないで欲しいとスーは願う!

 風に乗り誰か泣いている声が、かすかに聞こえてくる・・・

 

この日ヤーセン湖が誕生した。





 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


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