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#24 隠し砦でドワーフ工房本日開店



 日差しのなかそよ風が吹く草原の上で


「みんなこちらにおいで!」


 ミランダ(10歳)、キティ(8歳)、マリア(6歳)、ハイジ(4歳)


 ここでは子供たちの笑顔がまぶしい・・・


 ここではみんながいるし、助け合える場所だ。草原の風が気持ちいい。

 ジェドは孤児出身から家々の焼け跡や路上で泣きじゃくる子供たちに救いの手を差し伸べて子供村の建設をきめた。


 本当ならば国が孤児院で対応するべきなのだが、ナドウの場合は親の仇と狙う孤児たちを援助することは考えられない。

 まずジェドは追手のこないこの場所で、子供たちの生活と教育が一番大切だと心に誓っている。


 ジェドが草原で無心に草花を摘むハイジを見ていると、心が洗われる思いがする。

 ジェドを見て満面の笑顔を見せてくれるハイジに眼がしらが熱くなる。


 こんな暗殺稼業で育った俺だが、この子の役に立っていると思うとうれしさがこみ上げてくる。


 この子たちは俺が守ってみせると心に誓った。

 しばらくは帝国兵に食料提供をやらせよう。

(この発想がダメなのよね)


 感動にジェドが黙考していると、フッと左の隅でエルフのフード付きマントを着た少女が座り込んで地面を掘り返しているのが眼に入った。


 え、誰れ、見たことのない子供だなどこから来たんだ?

 小柄で手に移植こてを持ち地面を掘り返している。


 「ね、君だれ?」

 その子供は顔を上げ緑の髪と水色の瞳を覗かして、


 「この草原は素晴らしいわ、元は馬場なのかしら馬糞も混じって養分も十分で枯草も混じり土の成分もいいし、虫さんもいるの、この土で必ず元気な野菜は育つわ」


 「は・・・?」


 眼を見ると大人の叡智が感じられる、この子はミーナが島から土壌調査で連れてきたエルフかな?



 ◇◆◇



 ナドウ王国シラノ山脈の裾野に広がるナバリ大森林の中で、後背地は山に続く中腹の台地に建つ石積の砦がある。

 石積の砦の石壁は10m程の高さだが、周囲の高さ20m程の樹木群に覆われて街道からはまったく見えない。


 旧王国の廃砦で人々の記憶からも消えて久しい。

 一応、2階建14部屋の石造りであり苔むしている。

 旧王国の領内で、今はエビノ荘園内に所在する。

 1階は7部屋で事務室・炊事場・食堂があり、2階は全室寝室みたいだ。



 地下室があり牢屋だったが、今は未使用部屋だ。

 建物の外観は古色蒼然としているが、内部は手入れして清潔にしてある。

 ジェドは丁重に窓も鎧戸を造り付けしてあり、ドアも新しく作った。

 無断借用した伯爵軍補給隊の荷物は1階倉庫に集積整頓してある。


 中庭の馬舎の基礎石も取り去り、畑にしてある。

 麓の練兵場跡地は大部分樹林になっているが、跡地に1㎢ぐらいの草地が残っている。

 お花畑で大人も子供たちも皆の人気の場所だ。

 子供達を育てる環境は王都のスラム街より何倍もいい、しかし、問題はある。

 食料や日用品などの生活必需品が慢性的に不足している。


 2階の部屋に4人用テントを5張り組立ててある。

 砦にいる皆は全員部屋の中のテントで安全に暮らせている。


 1階の部屋は排水があり食堂や浴室として使っている。

 読み書き教室は空いている部屋で手造り椅子に座り学ぶ。


 晴れていれば麓の花畑で青空教室を開催する。

 子供達の狩りや罠などの実技講習はもちろん樹林の中しかない。


 中庭の井戸については、井戸の中に溜まった落ち葉や枯枝を掬い上げて底を浚い水質を浄化した。

 井戸の屋根も造り、滑車のついた縄付き桶も井戸の傍にある。

 鍛冶職がいれば汲み上げポンプを作成して欲しい所だ。


 砦の堅い中庭の土も、森の腐葉土を入れて耕して畑にした。

 中庭は300㎡程に広いからこれからイモ類や野菜が採れるだろう。


 ジェドにより野営中の補給部隊から消えた軍事物資は、砦の中1階倉庫で種類別にキチンと一時保管されている。


 搬入された軍用荷包みの中には、4人用野営テント10張や毛布40枚、雨衣40、石窯2、鍋4、塩、調理板・包丁3・食料品・水袋40・弓矢10貼、槍10本、石投紐10、短剣10本、盾10、革鎧40、サンダル40、薬草、縄、解体ナイフ10本、止血帯、篝火具4、松明10、土瓶5などがあった。


 量的には黒パンや乾燥肉、小麦粉が多く積まれていた。

 やはり14台の荷馬車には40人分の食料が積まれていた。

 荷馬車の上に四角形の木箱に入れられて、馬車1台に箱2個を縄で落ちないように梱包されていた。


 帝国のエビノ伯爵軍がナドウに支援している荷馬車隊みたいだ。

(荷馬隊長の怒鳴り声の内容で判明した)

 最初に隊長が飛び起きて、まだ眠ている兵士の頭や尻を足蹴にしていた。


 兵士が眠りから覚めて荷物だけが消えてるのを発見した騒ぎは見てて

笑いを堪えるのが大変だった。


 何回か繰り返された捜索隊は荷物を発見できず終了した。


 地上の足跡だけ探していても荷物の動いた方向は見えない。


 それからは大森林の中での野営中の警戒は全ての兵隊が寝ずの番になったみたいだ。


 しかし眠りの霧の前では無力だから、食料品だけ狙い時々やっている。

 庭の作物が育つまでは仕方がないのだ。きちんと借用書でも書こうかな。

 最近の荷馬車隊では食料品消失事件のことは森の神様の取り分などと言ってあまり騒がなくなった。



 ◇◆◇



 しかし考えるとこの隠し砦でいつまでも子供達を育てるのは危険だ。

 ジェドとミーナの忍術が優れていても、相手は人殺しの専門集団なのだ。


 天正の伊賀攻めで盆地で動く人影は絶えたと伝承が残る。

 軍隊が本気を出して数千人で包囲網を敷かれれば、ジェドとミーナだけでは子供たちを守り切れない。


 ここは盗品で育てるのでなく周囲に認められた安全な施設と環境で、畑の開墾も含めた計画で育成した方が子供の成長にいい影響があるはず。


 建築工ゴーレムが魔王島の子供村のドームハウス建設を終えそうだ、そろそろドワーフのダンカさん達と交代してもらおう。

 ダンカさん達は鍛冶希望の弟子と共に隠し砦で火縄銃1000丁と短剣やナポレオン砲20門をここの資源で生産する予定だ。


 しかもこの砦は人里はかなり離れており、硝石畑を大規模に作っても文句は出ない。

 ミーナも少人数の食料なら運べる、ここの岩山の地質は良質の鉄鉱石の地層であり大規模の地下工場を設置しても苦情は出ない。


 工場では新クマリ連隊1000人分の鉄帽・軍服・弾帯・背嚢・水筒・半長靴・毛布と実戦即応で量産して貯蔵したい。


 支援砲兵隊はナポレオン砲隊で20門の牽引大砲を持つ。

 砲兵隊は測量班、観測班、弾薬班、砲兵班に分かれる。

 軍馬本体は金属ゴーレム製だが、革製牽引具馬装具は付ける。

 なお、軍需品もエビノ軍のを参照して1000人分製造していく。


 各小隊長は双眼鏡と地図を携帯する。全員半長靴装備です。


新クマリ連隊の軍馬は黒毛馬800㎏頭高2.45m体高1.80m長さ2.64mで時速40㎞/hを規格軍馬とする。


 せっかく救えた子供たちの命だから、安全な環境に移そうよ!

 あの島ならあと499年間は条件付きでも居住が認められている。

 ここは敵性地域だから生存は保障されていない地域なのだ。

 エビノ軍兵に出会った子供たちの命が危険にさらされる。


 思いついたが吉日で島の子供村完成の報を受けて、ダンカさん達と砦の子供達との入れ替え引っ越しをミーナ頼みで速攻しました。

 未だ、工房の引っ越し梱包もそのままですが。


 強引ですが本日、森の中の隠し砦でドワーフ工房が開店しました!

販売商品はまだ何もできていません。


 というわけで秘密工房なのでお客様が来られても販売予定はありません。

 なお島との連絡調整は従前どおりミーナさんにお願いをしました。



 ◇◆◇



 前日の作戦会議の際のアベルの提案で、飛び兎の魔法袋が9点ほど帝都の秘密オークションに販売依頼された。

 収納容量は10㎥×白3点、10㎥×茶3点、10㎥×黒3点となり、オークション責任者に手渡しされた。


 正式にオークションに国宝級が出品されたので、応札は帝室をも巻き込む大騒動となり、落札総金額は48億ギルとなった。

(内訳は白24億円+茶9億円+黒15億円=48億円)


 後日、アベルに白金貨48枚は渡されて家具・寝具・衣類・什器・農具・石工道具・木工道具・医療器具等の購入資金となった。

先立つものは異世界でも資金力に変わりはない!


 「子供の村や新規開拓村で、必要な器具や日用品リストを作成させよう」


 「買い出しに行く前に、みんなに諮って漏れがないか確認しよう」


 後日の作戦会議で新規購入品目は確認後購入された。





 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


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