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#22 偽王への道



 武技もない、軍隊もない、資金も国を造るほどにはない、このままではナデシュ半島の難民のクマリ人住民と孤児たちを救えない。


 魔王城の白兎“M”さんとの契約で10体の技術者ゴーレムと100体の作業用ゴーレムを2年間貸りられるのだ。


 島のインフラと半島の武器工廠立ち上げが出来ればナスル大陸の勢力が変化する。


 アベルにとっては住むところもなく泣いている子供たちを放置するなど論外だ。

 この身がどうなろうと最後まで孤児たちの生涯を守る覚悟は決めた。


 でも独りで一から作るのでなく、既にある勢力の力も利用しよう!

 魔王の力でもこの混乱を乗り切るには十分だ、掴んで利用しよう、皆が自立できるまでは俺が防波堤になり皆を守るんだ!


 魔王島に場所があり、孤児院を作り難民の人に生活できる環境がある。

 半島にある資源を使い反攻の砦を作る、時間を掛ければ局面は反転攻勢にできる。

 時間に余裕ができればウルク大陸のダンジョンにも介入したい。


 悩む俺の傍には夜刀姫だけがひっそりと見守ってくれている。



 ◇◆◇



 久しぶりに商館からヘテ村の野菜畑にアベルは歩いて行ってみた。

 そこで村の主婦たちに混じりアリスは普通に農作業をやっていた。

 日当たりもよく水路も近くで風通しもいい、麦がメインで葉野菜たちも栽培している。


 今日は島のインフラ工事が始まるので事前に全体計画を説明するために訪れた。

 この村の野菜畑の水路も島全体の灌漑用水網に組み込まれる計画だ。

 麦わら帽子を被ったスフィも付いてきて座って畑の土をいじっている。


 「こんにちは、アリスさんお話いいですか」


 「あ、はい今そちらに行きますね」


 やがてアリスはエプロンについた土を払いながらアベルのところまでやってきた。


 「今日はどんな御用ですか?」

 「いい畑ですね、丹精こめて育てているのが野菜を見てわかりますよ」


 「ありがとうございます。でも本当にどんな話しですか?」

 「はい実は今後の話があり、商館の会議室で図面見て話したいのです、アリスさん商館に来てもらえますか?」

 

「はい、大事な話ですね、行きます」


 「いい畑ですね、野菜たちも喜んでいますよ」

 「ふふ、ありがとう」



 ◇◆◇



 会議室でアリスに建設する街や道路の計画線の入った魔王島地図で、アベルはこれから始める灌漑用水網を含めた島開発の全体計画を説明した。


 1つ目は、北高地から流れる渓流に近い湧き水もあり用水跡のある開拓しやすい子供村予定地だ。新しい作物の種や苗は持ち込んである。


 2つ目は、南左岸で複数の温泉の湧く場所だ、保養地に最適場所だ。


 人間は癒しの場所が必要で温泉サナトリウム病院の予定地だ。


 3つ目は、新イシ湾に面したヘテ魚村と反対側の造船所にいい場所だ。

 新造の魚船は常に需要はある、より多くの帆船は必要になる。


 4つ目は、南の林業に適した森林地帯のいい場所だ。

 家具や船材に適したマホガニー材チーク材があり規格化の製材所となる。


 5つ目は、北の石灰の山に近いコンクリート生産工場にいい場所だ。

 石灰の山に近くコンクリートが生産しやすく将来性がある。用水路や堤防工事に不可欠だ。


 これらの5つの所に250棟のドームハウスと駅を造り環状コンクリ道路と鉄道路とで街を連結して物流を確保する。

コンクリート道路を造り鉄道路を敷設する。


 クマリ人難民1000人が入植すれば数年後には職人集団となる。

 生活の場さえ与えれば人は才能を開花させるのだ。

 アリスはアベルの説明を聞き新しい時代の幕開きを感じた。


 「あとこの話は相談なのですが、湾にある400t帆船が乗り手さえいれば活用できるのでヘテ村の男衆で大型魚船として商館と共同利用をしませんか?」


 「え、嘘みたいないい話を村民に話していいんですか?」


 「漁獲高の1割でも館に物納してくれればいいですから」


 「ただ半島難民を迎えに行くときはお借りしますね」

 

「当然のことです、船については皆感謝します」



 ◇◆◇



 ヘテ魚村全員の賛同が全島開発計画と帆船共同利用について得られた。


 これでアベルのゴーサインのもと各種ゴーレムの設計・建設が動き出した。

 ナデシュ半島のイシ港に難民が大勢いるのなら、帆船と飛行船は早目に派遣しなければなりません


 早速遺跡の見える北高地の山裾にアベルは奥行200mで横幅50m縦50mの洞窟を建築工ゴーレムの堀削で造り出した。(飛行船もグライダーも格納できる広さ)


 内側の土壁は硬化のうえコンクリートで固めれば格納庫で使える。

 あとは天井に換気ダクトと発光体ボードを付けて、入り口に大型シャッターを設置すれば暴風雨対策になる。

 床コンではグレーチンで採水構を両側に入口までつけた。

 排土は格納庫前の草地を整形して、コンクリート滑走路の基礎資材として使う。



 ◇◆◇



 アベルが要求性能と立面図と平面図と断面図を技術者ゴーレムに渡して詳細設計をやらせた。


 飛行船はヘリウムガス使用の古典的なツェッペリン号の形式にした。

 荷重計算がしやすく製造工程に時間がかからないメリットがある。


 船体全長75.1m、船体最大直径19.7m、船体総体積8425㎥、ゴンドラ全長10.7m、ゴンドラ全幅5m、魔導エンジン3基の飛行船だ。


ジョイスティック操縦方式

 構造材:モノコック構造・腐食防止チタン塗装済ジェラルミン材で上昇限度2,500m、最大速度125㎞、巡航速度50㎞ 船体と気嚢分離式の硬式飛行船 定員12席(操縦手2名・乗客10名)の飛行船建造が開始された。


 海空から救いの手を半島の子供達に差し伸べて島の新しい村に迎え入れるのだ。





 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


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