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#18 アベル海賊王になるのか



 正面に座るダン侯爵は誰かに似ているよな?気になるアベルは記憶のかなたを掘り起こして侯爵の話を聞いてなかった。

 閃いた帝国情報機関統括者で皇太子派貴族の重鎮が英国MI5(防牒)のショーン・〇ネリーの顔がダンさんの顔に似ていたのです。


(国内なのでMI6ではなくあえてMI5表記にしました。)


 すると白猫を抱いている巨悪組織のボスがオッタル大公になるぞ!


 エビノ伯爵やナドウ宰相は途中で殺される敵役の殺し屋かな?


 アイラは(ツルペタ?)だからヒロイン役じゃねーし、

 モシモシ・・・う、うるさいな。


 「アッ・・・・・・アベ?・・・・・・アベルさん聞いてますか~?」


 「ハッ!・・・もちろんですよ、いい作戦ですね!」


 《いけね!ダン侯爵に注意されてしまった、本当は聞いてなかったよ》


 「それで、説明したようにですね、前半ミーナさん後半アベルさんの役割が大切です!」


 え~なんでいきなり俺の名前が出てくるのかな?

 ・・・これはまずいぞ、なんも聞いてなかったよ。


 「それで作戦名は“俺も海賊王になれる”ですかね!では、アベルさんには決意表明をどうぞよろしくお願い致します!」


 うっ、振りやがった・・・

 全員が期待の目で俺を見て拍手している、なにを言えばいいんだろう?

 アジトの食堂で野生児アベルは勢いだけで立ち上がりました。


 「え~皆さん頑張りましょう!・・・なに?」

 ・・・ダン侯爵も他の人たちも、眼が点になっている。


 「毒茸を混ぜるだけの簡単なお仕事でいいのかにゃ?」

 《海賊館のトイレは使いたくない、翌日早朝に館襲撃かな》


 「アベルは話し聞いてなかったでしょう、ダン閣下もう一度お願いします!」


 「それでは、もう一度、だけ説明しますぞ!」

 《ダン閣下の額に青筋の怒りのマークが浮かんでいるよ。ダメじゃんアベル!》


 「オッタル大公は2大陸で資金源となる4大ダンジョン利権を掌握しています。だがしかし、1箇所だけ戦略的弱点が放置されています」


 「世界中から集まる裏情報を分析して、敵の無防備な弱点が大海原に放置されているのが確認された!」


 《その確認をするために何人の情報部員が犠牲になったのか?》


 「そこは立ち入り禁止の神聖な島なの」


 「千年に一度魔王が復活すると約束された島ですからね」


 「“千年王国”を誰が約束したにゃ?」


 「語り部の伝える“勇者の伝説”に出てきます」


 「前代の魔王様が生誕百年目で討伐されてから今は四百年目のはず」

 「そう、あと五百年後には新魔王が完全復活する」


 「魔王島は入足禁止の土地のはず、人族は理解出来ないの」


 「だがしかし、その島は現在は海賊島と呼ばれている」


 「オッタル大公の手下の海賊たちがいるにゃ?」

 「正解、メラリ港から島に渡れる」


 「海賊島と呼ばれているヘテ島にはアムル人の魚民の村もある」

 

「土着してなければ海賊の数も船員の規模しかいないにゃ?」


 「正解、島に海賊の商館と船がある」


 「いまならアベルが海賊王になれるにゃ?」


 「海賊退治して俺たちにどんなメリットが得られる?」


 「そのヘテ島には地下大迷宮スーンに通じる5本目のダンジョン

入口があることが判明した」


 「でも8000㎞の地下大迷宮スーンって海竜の巣でしょう?」

 「いや踏破する必要はない、ダンジョン主の部屋に移転石があるから」


 「俺が迷宮の指輪で移転石に触れさえすれば」

 「全てのダンジョンはアベル君の前に開かれる」


 「オッタル大公の秘密を俺が握ることが可能になる」

 「そのヘテ島をナデシュ半島反攻の足場に出来れば」


 「こんな少人数でどうやって反攻を?」

 「反攻しなくてもアイラ姫健在を住民に示せば半島は内乱に入る」


 「魔族にとっても海賊たちを追い払えるメリットはある」


 「オッタル大公の非道の生き証人たちを確保できる」


 「海賊島こそ私たちがすぐにも抑えるべき戦略拠点よ」


 「アイラ姫の健在を半島の人たちにどうやって示せるにゃ?」


 「ヘテ島には火山がありますか?」

 「あるぞ、今は噴火してないけど天然ガスは噴出している」


 「ヘリウムガスがあれば俺が飛行船作って上空から挨拶できる」

 「その手があったか」


 「ナドウ新王は強圧政治ばかりで半島民に不満が渦巻いている」


 「そこの火縄銃は少人数の反乱軍こそ装備すべきものだ、エビノ軍3000とナドウ新王軍1000を壊滅させるために」


 「元クマリ近衛兵1000人に火縄銃を装備できれば反撃できる」


 「来年はアーサー皇太子の即位式が予定であり、皇帝譲位が表面化する年となる」


 「来年までに1000丁の火縄銃を量産する」


 「まあ、材料があれば銃身造りぐらいは協力しますよ」


 「輸送には海賊船を使えば良いにゃ」



 ◇◆◇



 「でも戦いだけではこの反乱劇は終結しない」

 「よく気が付いたね、流石だ!」


 「そうか、戦争の落とし所ね」

 「戦争は始めるより、終わらせ方が難しい」

 「そうだね」


 「新ナドウ王軍や偽装したエビノ軍を粉砕しても、宮廷内の派閥力学によってはノルデア帝国Vs新クマリ王国の争いになる」


 「分かっているね」


 「宮廷内の皇太子派を増やせば話は変わる?」


 「そういうことだね、利益でもって釣らないと貴族は増えないね」


 「オッタル大公の財源を削り、帝室の権威を高めて、貴族も富ませれば講和も見えてくる」


 「分からないわ、どうしたらいいのか」


 「ギルアとシバダンジョンは俺が跳んで反乱を起こす、アイラは3男カール皇子と婚姻してもらう、撒き餌には10㎥の魔法袋が30個は提供できる!」


 「よし、それでいけるだろう」


 「話が見えないにゃ!」


 「オッタル大公の財源の大半がウルク大陸で消滅する、アイラは皇族の一員となる、中間貴族には国宝級の魔法袋を贈呈して取り込むとアベル君が言っている」


 「ウルク大陸のダンジョンギルアは迷宮都市を支える巨大ダンジョンでありここを独立させるだけでオッタル大公の財源は半減する」


 「もっと理解できるように話して!」


 「ウルク大陸でのオッタル大公の騎士団領と迷宮都市利権を潰す、アイラを皇族にすることで半島は帝国の一部となる、中間派貴族取り込み工作はトリッシュ女伯爵に一任する」


 「ようやくわかったにゃ!」


 「そこでトリッシュ女伯爵が出てきた理由は?」


 「俺が知り合いのトリッシュ女伯爵にアイラの敵討ちの正当性を根回ししておけば、クマリ王国再興話にアーサー新皇帝も動くかもしれません」


 「アベルにそんな人脈あるの?」 

 

 「トリッシュ女伯爵にはだいぶ貸しがあるので、お土産さえタップリ撒けば意外とうまく宮廷工作ができるかも知れません」



 ◇◆◇



 翌日、検問所の検査を済ませてアベル、夜刀姫、ミーナの3人編成の先遣隊がゴーレム輓馬と新箱馬車でメラリ港目指して出発した。

 アイラ組は海賊討伐の目途がつけばミーナが迎えに行くし、ソフィーはメイドとして帝都アジトに残留のほうが安全だ。


 ダン侯爵からは侯爵家所有軍艦のドレーク船長への紹介状を持たされた。

 メラリ港に停泊中の305tの木造ガレオン船らしい。

 アムル人魚村もあるし、海賊商館の反対側に降ろして貰えれば充分だ。


 「まさかこのまま馬車で行くつもりではないよね?」


 「もうそろそろ人目もなくなりいい所にゃ」

 「では馬車からみんな降りよう」


 3人が馬車から降りて、アベルは馬と馬車とを時空間収納庫に収納した。


 「2人は私の両手を握って、でも夜刀姫はそっとにゃ」

 「メラリ港までは行ったことあるから跳ぶにゃ」


 次の瞬間には周囲の風景は一瞬で切り変わった。


 「メラリ港にようこそにゃ!」


 風景は魚港に近い丘の上に変わっていた。複数の帆船が停泊している。

 アベルはゴーレム馬と箱馬車を時空間収納庫から出してドアを開いた。


 「ありがとうミーナ、これで20日分の時間節約になったよ」


 「何回見ても、アベルの時空間収納庫は反則技だにゃ」


 アベルと夜刀姫は並んで御者席に座り馬車の座席はミーナだけ座る。

 メラリ港は大きな岬の突き出した湾だった。

 広い天然の湾のなかには様々な帆船が桟橋に停泊していた。


 湾に沿って環状道路が走っており、そのカーブした道路に沿って市場が広がり、樽が山積みであり周囲に宿屋が多数建っている。活気はある。


 中には原色に塗った建物も見える。けだるそうな女の姿が二階窓に見える。


 街路樹も蘇鉄みたいな南国風で、船乗り風衣装の人が多く開放的で全体的にくつろいだ雰囲気のある街だ。


 とりあえずはメラリ港の冒険者ギルドの酒場を訪ねてみよう。


 ドレーク船長に会えるかもしれない。


 石造りの建物で冒険者ギルドはすぐに見つかり建物横の馬車置き場にゴーレム馬と箱馬車を入れた。


 アベルたち3人は1階奥の酒場を訪ねようと建物のドアに手を掛けたら中から人間が跳んできた。


 “ド~ン”


 も~驚いた。

 堅く厚手のドアに激突した大柄な船員風の男は気絶している。

 アベルたちは大きく開いたドアから受付の見えるホールに入った。

 中には仁王立ちした中年の船長風の男がいた。


 潮焼けしたしぶい声で叫んだ。


「なにが海賊だ、堅気の商船からかすめ取る盗人じゃねーか。今度海の上で見つけたら帆柱に吊るしてやるから覚悟しやがれ!」


 気が付いた男は立ち上がり外に逃げ出して行った。

 パチパチパチとギルドの職員たちが拍手をしていた。

 アベルたちも共鳴するところがあるので拍手した。


 船長風の男は自分で照れたのかニヤリと笑ってアベル達の方に向き直った。


 「俺は海賊だぞと受付の女の子たちを脅かしやがって、ぶっ飛ばしてやったんだよ、で俺に用事かい?」


 海の男らしく率直な人だった。


 「すみません、ドレークさんですか?俺はアベルといいます。ダン閣下からこの紹介状を頼まれました」


 「大将からか、フムフムなるほど事情は分かった、協力させてもらうよ」


 アベルは後ろにいたミーヤと夜刀姫を紹介した。

 ゴーレムの夜刀姫にはちょと驚いて眉をピクリと動かした。


 「いや~人間らしくて驚いた!」


 「仕事を割り込ませてすみません」


 「あの海賊島については日頃から殲滅したいと上申してたんだ。丁度いい機会だ、今回は是非とも協力させてくれ」


 「先ほどの啖呵を聞いて気が張れました。盗人にろくな奴はいません。」

 「そうだよな、いや~気があうじゃねえか。」


 「この書面だとアベルたちを運ぶだけでいいそうだが、海賊団を捕えて関係人とか被害品も押収したいのだよ、無理か?」


 「海賊の引き渡しと関係人調査と被害品の引き渡しには協力しますよ!」


 「そうか有難い、では早速手下を集めて船出しよう。」


 アベルは背後のミーナと夜刀姫を見たが同意の目をしていた。


 「では海賊島に船出しましょう。」





 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


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