結び目を
結び目を数える。
遠い記憶で婆さまが数珠の粒を数えるように。
一つ二つを摘んでいく。
私の婆さまは目が見えず、歩く前に手を伸ばす。
明後日の方を見て、私の名前を呼ぶ。
返事一つに対して、一つ、向きをかえてを繰り返す。
婆さまを思い出す。
気付けば指も動かさずに。
一つ、二つ、三つ、経も唱えることもせず。
ひたすら婆さまを思い出す。
そういえば編み目も数えていたわ、器用な指であったと思う。
生温い風が吹く。
最期に触れた婆さまのように。
思い出深くに隠してあったのに、数えたくなる夜――
結び目を数える。
婆さまの数珠のかわりに。