021
「あなたに小学校に通ってほしい理由は主に二つあります」
僕たちがみんなそろって頭の上にクエスチョンマークを浮かべている間にもリバーさんは構わず言葉を発していく。
人差し指。
「一つ、あなたという特異な存在が実際のロリに対して与える影響を調査するという理由ですね」
「影響、ですか?」
「どんなふうに影響が出るかどうかすら未検証なのでわかりませんが、一度は成人年齢を超えている男性がロリとしてロリと接するわけですから、少なくともなにかしらの影響はあると思われます」
初めてリバーさんがちゃんとした研究者だということを認識できた。
ただのロリコンお姉さんではないのだ。
「もしかしてお兄ちゃんと一緒に学校に行けたりするの?」
「あなたのようなかわいいお嬢さんの希望であれば、そのように」
リバーさん、憩にはちょっかいをかけないでね。
かわいいのはすごくわかるけど。
「やったよ、お兄ちゃん」
憩が幸せそうでなによりだ。
「それで二つ目っていうのはなんなのかしら?」
「そうですね、二つ目の理由ももう話してしまいましょう」
というわけで中指。
「二つ目、これは理由というよりほぼ私個人の意見ですが……せっかくロリになったのに、ロリに近づかないのはもったいないと思いますよ」
思いっきりロリコンお姉さん的な発言だった。
むしろここまで己の性癖に素直だと、元男としては尊敬の念すら覚えてしまう。
「本心では今から私がロリになって、ロリ百合ハーレムを形成したいところですが、残念ながら私にはロリニナールを完成させるという崇高な目標がありますので、今回はあなたにお譲りいたします」
そんなに譲られても、僕としてはあまり乗り気はしていない。
いくら外見は憩似の美少女だとしても、所詮中身は二十歳の男である。
一歩間違えれば男だと露呈しかねないリスクは冒さないほうが得策だ。
「ねえお兄ちゃん、一緒に学校、行こ?」
まあ、でも。
「リバーさん、謹んで引き受けさせていただきましょう」
憩に上目遣いでおねだりされちゃあ、お兄ちゃんとして応えないわけにはいかない。
「そう言ってくれると思っていましたよ」
と。
ピピピピピ。
アラームが鳴り響いた、リバーさんの手提げバックからである。
なにかの時間だろうか?
「あ、すみません。今日はこれから友人たちとゲームをする約束をしていました。諸々の手続きは全部私が済ませておくので気長に百合百合して、待っててくださいね」