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ロリニナールとは生命体をロリに、つまり幼女に変えることができる、リバー・シューティング・ゲームの超絶発明品らしい。
今更過ぎることだが、彼女の名前はどこからどう見ても偽名である。
ファーストネームはまだあるとしても、ミドルネームとラストネームに関して言えば、なかなかに見慣れなさ過ぎて、偽名感満載である。
閑話休題。
すなわち僕は、ロリニナールを投与され、こうして憩と同じ十歳の体になったわけだ。
そう考えるとこの目の前のリバーさんは本当に天才である。
「いえ、別に私一人で作ったわけじゃあありませんよ。ネットの友達とアイデアを出し合って、ついでに資金も出し合って、みんなで一緒に作り上げた私たちの最高傑作です」
こんな犯罪級の薬品について軽々しくインターネットを介してやりとりするんじゃねえ。
僕が心配することではないかもしれないが、警察に見つかったらどうするつもりなのだろうか?
「そこに関しては安全ですよ。なんせ警察のサイバー対策課の課長もこのプロジェクトの出資者の一人ですから」
「お兄ちゃん、もしかして、世の中って腐ってるの?」
「違うと思う。この人の周りの人が狂ってるだけだよ」
妹の純粋でピュアピュアな成長に障害を与えないでほしいものだ。
「心配しないでください彼は決して犯罪目的で警察に入ったわけではありませんので」
まるで犯罪目的で警察に入った人が他にいるみたいな言いかたをしないでほしい。
「なら安心ですね」
なんて清いんだ、憩。
「さてと、ここまで一通り説明したことで、ようやく本題に入れますね」
リバーさん、話の転換がとてつもなく唐突である。
「本題ですか?」
これからする話が本題なのであれば、今までしていた話は一体なんだったのだろうか?
「つまり、今までの説明とかカミングアウト等々は、ただ事前に知っておいてほしかっただけってわけね」
「そういうことです、さすがですねお母様」
母さんとリバーさんが、ここ数十分ですっかり仲良くなっていた。
もしかしたら、この生活がまるでなっていないようなリバーさんに対して、俗に言う母性本能がくすぐられているのかもしれない。
ちなみに、母さんの好きなタイプはダメ人間である。
昔は父さんもダメ人間だったらしいのだが、僕たちが生まれて強度の高い人間に生まれ変わったそうだ。
「それならそれで、その本題ってのはなんなのかしら?」
それは僕も気になるところである。
「本題っていうのは別にそこまで重要なことではないんですよ。言うなればただの提案です」
「提案?」
リバーさんはこくりと頷いたあと、今まで以上にキラキラさせた声を出しました。
「木本蛍さん、小学校に通ってみる気はありませんか?」