012
かといって、一緒にお風呂に入るなんてことはするはずもなく──。
「はあ、災難だったな」
僕の心情的には、自分の身体が少女になっていたこと以上のストレスを感じた気がする。
僕はそんな独り言を呟きながら、服に手をかける。
僕の手は緊張で震えていた。
いくら自分が少女になったとは言え、中身が二十歳の成人男性であることに変わりはない。
僕はこれから、少女の服を脱がせようとしているのだ。
もちろん、これは解釈の問題だ。
でも、脱いでしまえば、視線が恥部に向かうことは避けられない。
元が男なのだ、どんな紳士的な人間だったとしても避けられないだろう。
下着を着るときとは、状況が違う。
トイレに行くときとも、状況が違う。
見ないようにするという話では済まされないことくらいはわかる。
洗わなければならないのだ。
僕の身体なのだから、これから共に過ごす、大事な身体なのだから。
僕は深呼吸をする。
そして、一息に脱いだ。
こんなところで緊張していてはこれから先の人生が思いやられる。
そんな思いとともに、僕は自分が身に付けている最後の布──憩の下着を脱いだ。
そして脱衣所のオレンジ色のライトに照らされ、僕の白い肢体が空気に晒される。
季節は夏のため、冷えて風邪になる心配はまったくないが、それでも裸のままで留まる脱衣所はいつもと雰囲気が違って見える。
そして自然と僕の視線は恥部に集まってしまう。
二十年、僕と共に生きてきた相棒はどこにもいなかった。
そしてその代わりにあったのは──。
まだ成長の兆しが見えない青い身体。
その恥部も同様に、十歳の──いや、それよりも幼いかもしれない──ものだった。
僕はなんだか見ているのが恥ずかしくなって、顔を背けた。
顔が赤くなっているのが自分でもわかる。
無意識の内に、僕の手は恥部を覆い隠していた。
この状況下において、無意識にその反応をしているということがどんなことなのか、それに僕は気づかない。
パシャ。
その機械的な音声に、僕は音のするほうへ振り向いた。亜音速のような速さは出ていたのではないかと思う速度だった。
「………………」
絶句。
僕の目には、頬を上気させながらカメラを片手に、こちらを覗き見る母さんの姿が映っていた。